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バッハを聴く オルガンの巨匠ロレンツォ・ギエルミ

オルガンの巨匠ロレンツォ・ギエルミが奏でるオール・バッハ・プログラムのリサイタルに行ってきました。
会場は池袋にある東京芸術劇場です。

世界で唯一の回るパイプオルガン

こちらのパイプオルガンは世界で唯一2面式の回るパイプオルガンで、クラシックデザインのバロック様式・ルネサンス様式のオルガン(415hz・467hz))とフランス古典やロマン派以降の音を奏でるオルガン(442hz)が背中合わせになっていて、演奏曲の時代に合わせてオルガンを選べるようになっているのです。

どんなオルガンなのかは、ぜひ、動画をご覧ください。
両方のオルガンを楽しむというオルガンコンサートに行った時は、休憩時間にくるっと回って別のオルガンが出た時には驚きでした!


さて、今回の演奏はバッハということで、クラシックデザインのバロック様式のオルガンが使用されました。デザインも落ち着いた木製とゴールドの装飾がかっこいいです。

オルガンは音色で決まる!

まずはギエルミの演奏で発見したのは、オルガンの音色でずいぶん印象が変わるということです。
パイプオルガンは奏者自らが音色を作る楽器で、そこにセンスと技量が表れると言ってよいです。演奏の前日、音色を決める作業があるそうですが、そういう下準備が必要なすごい楽器です。

今回のプログラムで最も知名度の高い作品《トッカータとフーガ ニ短調BWV565》の演奏は、それがよくわかるものでした。

最初の超有名なチャララーン🎶のメロディラインは、イメージ通りの音色でしたが、途中からの美しい構成のフーガが、まるで泉が湧き出るような水のイメージを感じさせる透明感あふれる音色に感じたのです。

あー、なんて気持ちがいいんだろう、ここってこんな感じだったかなあ?と、改めてこの曲全体の流れを感じることができました。

楽器を熟知していること、卓越した技術があること、そしてこの曲をどう歌い上げるかという歌心がしっかり噛み合った時、こういう気持ちの良い音色になるのかなと思います。彼の演奏は、クールというか、やりすぎ感がありません。この曲は奏者が曲にズッポリとハマって弾いてしまうと、やはりちょっと興醒めな感じがしてしまうものです。

また、今回のオルガンが415hzということで、よりバッハの時代を感じさせてくれたと思います。今までのギラギラしたBWV565の曲のイメージが変わりました。

トン・コープマンの意表をつく圧倒的な個性とはまた違った味わいのバッハが聴けてすごくよかったです。イタリア生まれの知的で色彩豊かな演奏は、とても魅力的でした。

↓こちらは2016年の東京芸術劇場での演奏です。演奏の様子がよくわかる映像です。今回の東京芸術劇場には8年ぶりの来日です。


ヴィヴァルディの曲を編曲したBWV596

もう一つの収穫としては、BWV596(原曲=A.ヴィヴァルディop.3-11)でした。
バッハがヴァイマール公ヴィルヘルム・エルンストの「宮廷オルガニスト」兼「宮廷作曲家」として務めていた28歳の頃のことです。
音楽好きだった主君の甥ヨハン・エルンスト公子(1696-1715)が留学先からA.ヴィヴァルディの協奏曲《調和の霊感》をはじめとした多くの楽譜を持ち帰ってきました。公子は、これらの曲を鍵盤楽器に編曲するようバッハに依頼します。バッハは初めてイタリア・バロック音楽に触れ、その後の創作活動にも大きな影響を及ぼす「イタリア体験」でした。

ちょうど、これらの内容は「バッハのエピソード16 イタリア音楽体験」に書いていたので、曲にたいする理解度が高まりました。作曲の背景がわかっていると、音楽体験に深みが増してきますね。


<曲目・演目>

J.S.バッハ名曲集

プレリュード ハ短調 BWV546/1

「いと高き所にいます神にのみ栄光あれ」BWV662
「いと高き所にいます神にのみ栄光あれ」BWV663
「いと高き所にいます神にのみ栄光あれ」BWV664
  (以上3曲、ライプツィヒ・コラール集より)

協奏曲 ニ短調 BWV596 (原曲=A.ヴィヴァルディ op.3-11)

プレリュードとフーガ ニ長調 BWV532

「最愛のイエスよ、われらここに集いて」BWV731
 (27のコラールより)

「心よりわれこがれ望む」BWV727

「われいずこに逃れゆくべき」BWV694
 (キルンベルガー・コラールより)

トッカータとフーガ ニ短調 BWV565

<ロレンツォ・ギエルミ プロフィール>

イタリアを代表するオルガニスト、チェンバリスト、指揮者で、ルネサンスとバロック音楽の研究家。現在、ミラノの聖シンプリチアーノ教会オルガニスト。ミラノ国際音楽アカデミー古楽研究所で教鞭を執っているほか、世界中の著名なオルガン・コンクールの審査員、またマスタークラスの講師を務める。バーゼル・スコラ・カントールム元教授。
 イタリアの古楽アンサンブル、イル・ジャルディーノ・アルモニコの初期メンバー。2005年に、自身の古楽アンサンブル“ラ・ディヴィナ・アルモニコ”を結成。ヘンデルのオルガン協奏曲第1集、第2集(両方ともディアパゾン賞受賞)などの録音のほか、数多くのCDをリリース。東京カテドラル聖マリア大聖堂のオルガンの芸術コンサルタントを務めた様子は、04年NHKハイビジョン特集「パイプオルガン誕生」で紹介されました。

1999名収容ホール。前半終了時、ギエルミがガッツポーズして去っていく姿がかっこよかったです!
なかなか味わい深い字ですね。






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