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楽器を始めるのに年齢は重要か?その2

 自身の経験から考えると、年齢云々より個人差の方が大きいと思う。子供はみんなすぐに上達すると思われるかもしれないけれど、決してそんなことはない。特に本人の希望を無視して親が強制的にやらせる場合、長続きしないばかりか、一生ピアノ嫌いになることだってある。

 どんな年齢であろうと、「好き」のレベルに比例して上手くなる。好きだとのめり込む、練習が負担に感じるどころか、一つずつクリアしていくのが楽しくて仕方なくなる。「好き」という感情は最強だ。コンクールで成績を残すため、自慢するため、情操教育のため、認知機能を高めるため等々、あらゆる外的動機を通り越し、「好き」という内的動機が最も長続きするのだ。

 大人になって楽器を始める場合、どちらかと言うとその人の性質が習得に関係してくるように思う。最も上達が遅いのは、プライドが高くて柔軟性に欠ける場合だ。初心者であれば、最初は95%くらい間違う(上手くいかない)のが普通で、これを90%、80%、70%と、ちょっとずつ減らしていけば良いのだ。間違えるのを嫌がって音を出すのを躊躇していたら、ちっとも上達はしない。レッスン料を支払っているのだから、その元を取るつもりで、片っ端から間違えて、先生に直してもらえばいい。これは外国語を学ぶとき、とにかく使い、間違いまくって、どんどん修正してもらうことが、結果的に一番流暢に使えるようになるのと同じ。生徒は間違うことが仕事で、先生に仕事をあげるくらいのつもりで、堂々とやればいい。

 人間それぞれ特技が異なるし、行動も異なる。この多様性が世界を面白くし、社会を上手く機能させている。災害が発生した時、もしあらゆる人がボランティアとして被災地に押し寄せたら、生活が破綻してしまう。献身的なボランティアがいて、淡々と普段の業務をこなす仕事人がいて、気楽に散財する遊び人がいて、そうしてバランスが保たれる。

 色んな生徒がいて良いのだ。クセの強い生徒は、先生を育てる。何でもすぐ100%できてしまう生徒ばかりでは、先生もやり甲斐がなくなるはず。

 話が逸れてしまったけれど、楽器を始めるのに特に構える必要はないし、まして、初心者だからといって引け目を感じたり、遠慮したりする必要は一切ないということ。最初は初心者でも、「好き」という動機だけで十分上手くなるし、上手くなったかどうかは自分で実感すればいいのだ。楽器をやったこともない人に、腕前を批評される筋合いはないし、他人が自分の「好き」に対して横やりを入れる資格もない。

 

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