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超有名クラシックピアノ曲の難易度

 特にクラシックピアノに詳しくなくても、誰もが聞いたことがあるような音楽。耳馴染むメロディ、特徴的なリズム、繰り返されるフレーズなど、有名になるものにはそれなりの要素があると思うのだが、そうした超有名曲の難易度を、個人的意見と共に紹介。独学で挑戦する場合の覚悟具合なども、参考になれば幸いだ。

ベートーヴェン「エリーゼのために」・・・初級者でも弾き易く、しかもそれなりに弾き映えするお得な曲。ぎりぎりオクターブが届けば演奏可能なため、小学生や手の小さな人にも無理がない。繰り返しが多いので、譜読みの分量も少なくて済む。聴いていると難しそうに聞こえる部分も、非常に弾き易く作られているため、練習すれば絶対弾ける曲と言っても良い。独学者が完全なゼロから始めたとしても、根気よく練習すれば習得可能。ただし表現の面で、独学だけでは得られないものがあるかもしれない。

モーツァルト「トルコ行進曲」・・・初級者でも練習すれば弾ける曲。オクターブ届く手があれば、無理なく演奏できる。16分音符の連続部分は、多少忍耐力が要求されるかもしれないが、充分独学対応できる曲だ。また、それほど表現について考えなくても、テクニックさえ習得すれば上手く聞こえてしまう曲なので、独学向きと言ってもいいかもしれない。上達する秘訣は、譜読みする時に運指をしっかり決めること。速い連続パッセージの指使いは、後になって変更するのが大変だし、ミスを誘発する元になる。

リスト「愛の夢第3番」・・・少なくとも中級者以上向けの作品。聴いていると甘いメロディが心地よいが、実際弾いてみると、かなりの音楽性が要求されることに気付く。機械的に全ての音を同じように弾いても、曲として聞こえないからだ。表現に合わせたフィンガリングの工夫と、テクニックをさりげなく聞かせるための、隠されたテクニックが要求される。そして明確な表現力が問われる。手の大きさも、理想は10度届く大きな手だ。(9度までしか届かない場合、10度の和音はずらして弾く) この曲は、完全なゼロからの独学は難しい。左右の音の配分や、フィンガリングなどを熟慮する必要があり、音楽性の面からもアドバイスしてくれる先生がいると、飛躍的に速く習得できる。

ショパン「英雄ポロネーズ」・・・上級者向けの作品。テクニック云々よりも、まず手の大きさと体力が必要である。最低9度届く手でないと、演奏は難しい。また跳躍を伴うオクターブ以上の和音が、ほぼ全曲に渡り続くため、小柄な人には過酷な曲だ。音量も要求されるため、体格的に厳しい場合は無理しない方が良い。この曲は、テクニック的に完璧に弾ければ、表現力が乏しくてもそれなりに素晴らしく聞こえるので、繊細な表現は苦手だけれどガンガン弾きたい、という人には向いている。完全なゼロからの独学は難しいとは思うが、ピアノ向きの手と運動神経を持っていれば、不可能ではないように思う。繰り返しが多く、譜読み自体はそこまで大変ではないし、暗譜もし易い曲だが、演奏時間は7分ほど。習得までに相当な時間がかかることは確実である。

ドビュッシー「月の光」・・・ベルガマスク組曲3曲目。この曲はさらっとしていて、簡単そうに聞こえるかもしれないが、聴かせるレベルで弾きこなすには、中級〜上級者向けだ。ドビュッシーの作品の中では、ロマン派的な曲想だが、近代以降の作品は、シンプルそうで複雑なものが多々あり、読譜も一筋縄ではいかなくなる。上段は右手、下段は左手と拘らず、弾きやすさや音楽性を考慮して、左右の配分を考え直した方が良い場合もある。この曲は計画性のある表現力と、そのためのテクニックが必要であり、ゼロからの独学は不可能ではないが、ドビュッシーの音楽について学ぶ必要がある。運指を決める時だけでもレッスンで見てもらうと、後々スムーズに上達する。手の大きさはオクターブが届けば弾ける。

ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」・・・前奏曲集の中の一曲。ドビュッシー独特の表現力は必要だが、曲の短さと、鋭いテクニックの不要さから、譜読みさえできれば、ゼロからの独学も可能だと思われる。ただし上手く聴かせるにはそれなりの工夫と、地味なテクニックが要求されるので、その辺りは研究する必要がある。手に負担が少なく、オクターブが届けば演奏可能。また曲想も柔らかく、騒音になりにくい音楽のため、練習していても隣近所から苦情が来ることはないと思われる。

リスト「ラ・カンパネラ」・・・高度なテクニックが要求される超絶技巧曲。手の大きさは10度届けばベスト。譜読みはさほど大変ではなく、暗譜もし易いが、最初から最後まで跳躍ばかりなので、手の運動神経が重要となる。表現力がなくても、テクニックが上手ければ素晴らしく聞こえ、指使いもそこまで複雑ではないので、テンポを落として弾くならば、意外にも独学可能かもしれないと思う。ただしゼロから始めた場合、習得に年単位かかるのは確実だ。この曲は暗譜してから練習した方が上達が速い。また、一度弾けるようになったとしても、その状態を維持するには、頻繁かつ几帳面に、弾き続ける必要がある。

ショパン「革命」・・・左手の柔軟で機敏な動きが要求される、ショパンの代表的なエチュード。個人的意見だけれど、この曲は独学であろうとレッスンで習おうと、弾ける人は弾けるし、弾けない人は弾けないのではないかと思う。このエチュードを弾きこなすには、根気よく左手を訓練することが不可欠であり、それが面倒くさく、一気に速く弾いてしまうような場合、雑になって修復が難しくなるからだ。几帳面さがないと、大体弾けたかなのレベルで終了することになってしまう。手の大きさは9度届けば問題ない。一度譜読みしてしまえば暗譜し易く、暗譜してから練習した方が効率的。左右の役割がきっちり分かれているため、独学し易い曲と言って良いと思う。しかし左手テクニックは必須なので、ゼロから始めるには無理があるように思う。

ショパン「別れの曲」・・・エチュード作品の一曲。短く、譜読みも楽だが、メロディと内声の弾き分けのため、運指の熟考が必要。中間部の技巧的な部分以外も、意外と隠れたテクニックが必要。右手は4、5の指中心でメロディを弾くことになるため、綺麗に演奏するには繊細な耳と指のコントロールが要求されるからだ。そこまで完成度に拘らなければ、地道に練習することによって独学も可能ではないかと思う。ただ、ショパンは手の使い方に柔軟さが要求される作品が多く、レッスンを受けることによって、独学1年分位の分量を学ぶことが出来る場合がある。手の大きさは9度くらい届くと楽に弾ける。

バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1番プレリュード」・・・曲集自体の難易度は高いが、この曲に限っては、練習すれば誰でも弾ける。左右同時に弾く部分がなく、同じリズムで同様の手の使い方を繰り返すため、非常に弾き易い。一度もピアノを弾いた経験がないとしても、練習すれば必ず習得できると思う。派手さはないが、音が邪魔にならず、不快感を与えない音楽なので、弾いていても隣近所から苦情が来ることはないだろう。手はオクターブがぎりぎり届けば大丈夫。譜読みも簡単なので、まさに独学ピアノに打ってつけだ。

パダジェフスカ「乙女の祈り」・・・オルゴールなどによく使われる音楽。煌びやかに聞こえるが難易度は高くなく、暗譜も簡単。右手の装飾音は派手に聴かせられるので、お得感がある。テクニックは右手にしか要求されず、指なりに弾き易く作られているので、練習すれば必ず習得できる曲。左右分業されており、譜読みも楽なので、独学向きの曲だ。ただ、この曲は同じメロディの変奏だけで作られているため、飽きが早いかもしれない。オクターブ届けば演奏可能。

ベートーヴェン「悲愴ソナタ第2楽章」・・・もちろん1、3楽章もあるが、メロディとして有名なのは2楽章かと思われる。要求されるテクニックは、右手でメロディと内声を弾き分けること。独学でやる場合は特に、よく聴いて全体のバランスを考える必要がある。オクターブ届けば演奏可能であり、技巧的な部分も登場しないので、練習すればゼロからでも独学できると思われる。しかし、ゆったりした曲にはそれなりの音楽性が求められるため、様々な演奏を聴いて研究する必要はある。また、このソナタの1、3楽章は難易度が高く、技術も必要なので、ソナタ作品として仕上げたい場合、相当な練習が必要。

ベートーヴェン「月光ソナタ第1楽章」・・・ゆったりしたテンポで、テクニックもさほど要求されず、ゼロからの独学も可能な曲だと思われる。譜読みも、同じリズムの連続なので楽だ。単調になりがちなので、表現の面で研究すると良い。手はオクターブ届けば演奏可能。このソナタの3楽章は、難易度がずっと高いので、ソナタ作品として弾く場合、相当な練習が必要。



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