新・オーディオ入門33 重いアンプは高音質?
『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎について初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。
嘗て重いアンプ程高音質と言われていた時代がありました。昔は小出力のパワーアンプではドライブ能力が低く、ダイナミックな低音は出せませんでした。大出力のパワーアンプを実現するためには大容量のトランスが必要です。トランスはパワーアンプの電源部に使用されるパーツです。パワーアンプの増幅回路は100vで動作しているわけでなく、40~90vで動作しています。そのため電源電圧を変圧しなければなりません。この動作をするパーツがトランスで日本語では変圧器と言います。パワーアンプの出力はすべてトランスによって変圧された電源をエネルギー源にしていますので『トランスが大きい=大出力のアンプ』が常識でした。ところで、トランスには面白い特性があります。ある大きさのトランスを50Hzで使用し100wの電力を取り出すことができたならば、同じ大きさのトランスを500Hzで使用すると1000wの電力を取り出すことができるのです。100wを取り出すのなら1/10の大きさのトランスでOK。この特性を利用したのがスイッチング電源です。スイッチング電源ではまず、50または60Hzの電源周波数を10000倍程に上昇させます。その後親指の先程ののトランスで変圧しますが、このトランスからは1000wもの電力を取り出すことが可能です。2000年以降、オーディオアンプには進化した電源回路であるスイッチング電源が使われることが多くなります。当初スイッチング電源はノイズが多いと言われていましたが、EUが厳しい規格を制定したためノイズは減少し、今では通常の電源と変わらないレベルになりました。スイッチング電源をその後益々進化し、定電圧機能や瞬時の電源供給能力を大幅に高めることに成功し、今ではトランス式の電源とは比べ物にならない高性能になっています。
また、スマホやノートパソコンの普及により他のパーツも当時の半分以下の大きさでしかも高性能になりました。そのためアンプの筐体も小さくすることができます。筐体は小さくなると相対的に強度が増し、外部からの振動に強くなります。これも高音質化の秘密のひとつです。このように現代のパワーアンプは小型軽量であるにも関わらずダイナミックな低音を再生します。
次回に続きます。