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「KAPE」~管理職や人事労務が産業医に相談すべき基準~

 こんにちは、産業医の堤です。今回は、人事・労務はもちろん管理職の方にも是非見ていただきたいnoteです。「部下の健康管理も管理職の仕事」とか「部下の不調時には産業医に相談を」とか聞いたことはないでしょうか?
そして、こんな疑問を抱いたことはないでしょうか?「じゃあ、どこまでが俺の仕事でどんな時に相談すればいいのよ?」
 今回はそんな悩みにこたえるべく、産業医につなぐべきケース(事例性)を語呂合わせにまとめました。早期発見をして適切な対応をすることは不調で悩む本人を守ることにもなります。通称「KAPE(“ケープ”でも“かぺ”でも良いです)」をぜひ覚えてください。

相談すべき事例性=KAPE


 産業医活用TIPs~メンタル対応編~では、事例性と疾病性の切り分けについて触れました。簡単に説明すると、「事例性があり、その原因が疾病性≒体調不良である or 体調不良と思われる時」に産業医に相談するようにお話ししました。今回は、この相談すべき事例性を語呂合わせ「KAPE」を使って解説します。

「KAPE」とは?


「KAPE」はそれぞれ下記の頭文字から取ったごろあわせです。
K:勤怠=欠勤、突発休み、遅刻、早退など勤怠の乱れ
A:安全=現在、未来において安全に自他ともに通勤・勤務が出来るか
P:パフォーマンス=パフォーマンスが低下していないか
E:影響=周囲への悪影響を及ぼしていないか

それぞれ詳しく説明していきます。

K:勤怠


 メンタルの不調が進行してしまうと勤怠に影響が出てきてしまいます。そのため勤怠の乱れは専門家に相談すべき事例性の一つです。メンタルの不調時には非常に多彩な症状が出ます。

・眠れない
・朝どうしてもおきられない
・電車にのると具合が悪くなる
・風邪をしょっちゅうひく
・週明けがつらい etc….

 このような症状から徐々に勤怠が乱れていくことが多いです。しかし症状が多彩なために、本人や周囲の人もなかなか相談をしていいのかわからないという状況に陥ってしまい対応が遅れることがしばしばあります。こういった多彩な症状から診断を導くことは専門家に任せた方がいいので、勤怠が乱れた時点で一度相談しておくのが良いでしょう。
 また、時々問題になるパターンは、突発休みや遅刻・早退などで勤怠が乱れていても、有給消化やフレックスで処理して現場で抱えてしまい結果として対応が遅れてしまう時です。もちろん、ルールにのっとった運用であれば、それ自体には問題ないのですが、こういった処理が体調不良の隠れ蓑になってしまい発見と対応が遅れてしまうような事態は避けた方がいいでしょう。

A:安全


 Aは健康面の問題から、現在もしくは未来において、安全に通勤・就労ができない場合です。具体的には下記のような例がわかりやすいでしょう。
・意識を失う病気にかかっている人が運転業務をしている
・足腰が不自由な人が段差の多い高所作業をしている etc
このような例は、事故が起きてしまうことが想像できます。(これを予見可能性といいます)
 メンタル面では、メンタルの不調によって注意力や集中力が低下していて事故につながる場合や死にたい気持ちが強い場合などが該当します。

P:パフォーマンス


 こちらはなかなか判別が難しいものでもあるのですが、現在のパフォーマンスが期待値に到達しない場合が該当します。
 メンタル不調の時は集中力・注意力・思考力などの低下が起きうるため、ミスが増えていたり、業務が遅くなったりします。また不必要な残業が増えている場合や夜中にメールなどをやり取りしているときも要注意です。仕事の効率が下がっている場合があります。

E:影響


 こちらは周囲に許容範囲以上の影響を与えてしまっている場合です。業務量がこなせなくなり周囲がフォローのために疲弊しているとき、いらいらして周囲と衝突するようになる、コミュニケーションがうまく取れないなどがサインです。

不調の人がいるときは周囲が一時的に配慮することもあると思いますが、これが過度になり影響が大きい時なども一度産業医に相談してもよいでしょう。

まとめ

 今回は産業医に相談すべき事例性=「KAPE」についてお話ししました。なんとなく対応に悩むケースに遭遇した時は、「KAPE」を使って整理してみると良いでしょう。また、「KAPE」のなかでもAに関することは急を要します。抱え込まずにぜひ相談してみてください。
 このような内容を詳しく知りたい方は、下記のようなセミナーも開催しているので、ぜひご参加ください。URL: https://appdate-event.peatix.com/

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