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20220831 雑記

家で食べるはずだった夕食は、突然の空腹によりリスケとなった。

今日は少しソワソワした日だった。普段なら取らない、ほぼインテリアとして置かれているであろう本を取ってなんとなく読んでみるなどした。イノベーションの原理についての本だったので、今後に役立つよう頭に叩き込みながら10分で読んだ。

最近スマホアプリで、有名キャラクターが昼飯を食べるだけの漫画を読んだせいで、外でランチをする時には何か身構えるようになってしまった。先日牛丼を食べたときは紅生姜の量が気になったし、今日はうどん屋の鶏天に醤油を掛けるかソースを掛けるかで3秒手が止まった。後ろが支えているのに。

そういえばうどん屋でも牛丼屋でも、あんなにみんな1分1秒を切り詰めているのに、レジで絶対「ポイントカードはお持ちですか」をされるのは何なのだろう。あの時間は日本全体で見ればかなりの生産性を削っているのではないか。もう購買履歴ぐらいの個人情報ならいくらでもあげるので、一生その質問をスキップできるようなオプションはないのだろうか。

そんなことを考えながら仕事をしていたらいつの間にか夜になったので、帰りがけにイノベーションの本だけ読んで、帰路に着いた。冷蔵庫にトマトが三つ残っていた気がしたので、今日は自炊しないとなと思いつつ、普段のようにコーヒーを3杯飲めば夜までお腹が空かないところ、今日は1杯しか飲まなかったので、電車の中でどうにも空腹なような気がしてきた。ここ最近は毎日コーヒーを3杯飲んでいたので、この感覚が空腹なのかどうか自信をもつまでに時間がかかったが、自炊するビジョンが見えなかったところで確信を得た。

こういう時はいつも駅前の回転寿司に行く。20時半がラストオーダーだが、終わり際にはネタがほとんどなくなっているのでマグロくらいしか頼めなくなる寿司屋だ。少年が一人前の寿司職人になる漫画を読んで以来、何を食べようかなと思った時にすぐに寿司に行く頻度が増えた。

店内に入ると、一人の男性客が、「もう少しで空きますのでこちらでお待ちください」と説明を受けていた。この店で並ぶことは初めてだなと思っていると、その新入りの店員が入口の看板を「Closed」にひっくり返した。ホールはこの男性店員と、慣れているらしい女性店員の二人だった。前回きた時もこの二人で、ネタが残り少ないのに大口の電話注文を受けた新入りがわたわたしているよこで、お姉さんは着々とものすごい数の皿を運んでいた。

「ごめんなさいね、シャリがもう残り少なくて」と、小さな「Closed」を見ずに入ってきた二人組に大将が声をかける。今日は僕でちょうど終わりだったらしい。最後の一人というのは実は光栄なことのような気がして、またソワソワしながら席に着いた。

隣には若い女性二人が座っていた。パーティションで顔は見えなかったが、「でも、アミがどう思うかっていうところだよね」というセリフだけ聞き取れた。ジョッキのレモンサワーはもうほとんど残っていなかった。

ほとんど全てのおすすめの札はひっくり返されていたのだが、キスの昆布締めだけは残っていたので、それとマグロ5種を頼んだ。「おすすめはもうほぼ終わっちゃったんですけど、グランドメニューならほぼ全部ありますからね」ともう一人の大将が顔を出した。ツケ場から聞こえてくる声はいつもその二種類だったが、初めて顔を見た。声のトーンからサイコパスだと思っていたので、優しそうな顔に衝撃を受けた。

「だから新婚旅行が、両家にとっての相性を測るための機会だったっていうわけ」つぶマヨを頼もうとするともう品切れで、エビマヨならあるらしかったので、それと、えんがわを頼んだ。普段なら寿司に紛れて回っているワサビがないことに途中で気づいたのでそれも頼んだ。「ヅケマグロ、シャリ小で」「シャリ小助かります」という声が反対側で聞こえた。やはり今日はネタよりもシャリが先に尽きたらしい。エビマヨが最後だったので大盛にしといたよ、ともう一人の大将が顔を出した。こっちがボスで、さっきのが二番手なんだろうな、という顔と髪型をしていた。

大学時代によく通っていたラーメン屋のことを思い出していた。塾で個別指導のアルバイトをしていたが、自称ADHDなのでよく遅刻していた。そこでやらかす度にそのラーメン屋に行って、一番普通のラーメンを頼み、自分と向き合う時間を作っていた。友達には「対話できるラーメンがある」と宣伝もしていた。ちなみにその塾は新しい生徒との初回授業をブッチしたせいでクビになった。
女性店員は自分の頭より高く積まれた皿を運んでる横で、「終わった後話があるから残って」と、新入りは大将に小さな声で言われていた。

そこそこお腹が満ちてきたところで、隣の二人が寿司を頼みたそうにしていたが声を掛けあぐねていたので、上アナゴと、少し健康を気にして海苔汁を頼んだ。アナゴのタレは毎日火を入れないといけない、と寿司漫画には書いてあった。その注文を引き継ぐように、二人はウナギを注文した。
「行動してリスクを取るよりも、穏便に過ごしたい。何かして不幸になるよりも、何もしない不幸の方を選ぶようになったってことよ」多分この人たちは自分よりも年上なんだろうなと思った。というか、この人たちの会話は指示語が多くて、聞こうと思っても途中からでは何の話なのか全くわからなかった。今一度、結論から話すことの重要性を認識した。

おあいそお願いします、と言うと「すみませんね」と言われた。「ネタがある時にまた来てくださいね」と言われて、向こうもこちらの顔を初めて見たのだと言うことを再認識した。前回と同じように女性店員に会計をしてもらう頃には、隣の二人組以外の客は全員いなかった。

店内ではミックスナッツが流れていた。

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