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ブリッジ・スクール・コンサート・ライヴ 1997 / THE BRIDGE SCHOOL CONCERTS VOL.ONE

ブリッジ・スクール・コンサート・ライヴ 1997

ニール・ヤングが主催したアコースティック主体のライブで、豪華な参加アーティストが普段には無いセッティング、選曲で楽しめる。1997年までで抜粋されたライブ。
自身の子供が障害児であるという経緯から、障害者の支援にも積極的に関わっており、妻のペギーとともにチャリティー・コンサート「ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート」を毎年開催している。

収録曲感想

I Am a Child / Neil Young
冒頭は主催者ニール・ヤングのハーモニカとミキサーを通したアコースティック・ギターでの弾き語り。ヒット曲を取り上げないのは色々推測はできるが、主催者が冒頭から一番目立っては興覚めするし、ホストの立場もあるので淡々とした演奏。

Shadow of a Doubt (A Complex Kid) / Tom Petty
トム・ペティ(&ハートブレイカーズ)のヒット曲をミキサー、若しくはエレアコ1本でマイクに向かい原曲以上に熱唱している。緩急つけた隙間の無く少し激し目のストローク・プレイだ。
この収録作品の中では一番大きなアコースティック・ギターの音だ。

All That You Have Is Your Soul / Tracy Chapman
女性黒人フォークシンガーのトレイシー・チャップマンのラインを通したアコギの弾き語り。
一級の黒人ソウルシンガーの歌唱力を備わっていて訥々とした歌声が心から伝わってくる。ギターのタイム感が良く、アルペジオも安心して聴ける。

Sense of Purpose / The Pretenders
この録音がいつの時期か分からないが、1990年の「Packed!」アルバム収録曲なので、新曲を披露した可能性もある。
アコースティックギターとのバンド編成だが、元のアレンジもフォークロック的なのでここでの演奏も違和感が無い。歌唱法が敬愛するボブ・ディランに少し巻いて歌っていくところなど似せている。

It's All in Your Mind / Beck
アコースティックギターの聴こえ方から推測すると、マイクから音を拾ってるのか生音に近い。
けだるいストロークで変化の無いダウナーワールドは正統ベック的サウンドか。ベネフィット・コンサートで爪痕を残すというよりは、ひっそり出て、汗もかかずちょっと演奏して舞台から下がるというのも粋かもしれない。

The Road's My Middle Name / Bonnie Raitt
ボニー・レイットの3コードのブルース。2回目の復活ブレイクを果たし、歌唱にも自信が増し声量も大きくて会場の隅まで届かせるかのような勢いだ。
ギターはミキサーを通してる。オブリガード入れる際のギターの音の粒立ちもブルージーでしっかりしている。

Don Henley / Yes It Is
イーグルスのドン・ヘンリーがビートルズの「Yes It Is」をカバー。
さらに同じイーグルスのティモシーB.シュミットがコーラスとアコースティック・ベース、アコースティック・ギターにダニー・コーチマー、ジョン D サウザー、ウエストコースト・ミュージックに関連するプロディーサーのジェイ・ウィンディングのバック・コーラス。
ビートルズだけど控え目な選曲をカバーが秀逸。重鎮達から放たれるコーラスから純粋な音楽愛が滲み出ていてとても美しい。

Friend of the Devil / Ministry
老舗メタルバンドのミニストリーがアコースティック・バンド編成でグレイトフル・デッドのナンバーを忠実にカバーしている。貴重でユニーク場面に遭遇した。

America / Simon & Garfunkel
とうとう滅多に共演しないサイモン&ガーファンクルの登場。「アメリカ」を聴けるという貴重さとありがたみからイントロのハーモニーから会場が当然ざわつく。
そしてポール・サイモンが歌うと微かな声援、アート・ガーファンクルと2人のハーモニーに突入し、しばらくは2人の歌をじっと味わい、そしてやはり堪え切れない2人の歌唱の感動を会場を包むも、その余韻も早々にフェイドアウトで終わってしまう。そこが惜しい。。

Heroes / David Bowie
デビッド・ボウイを呼べるニール・ヤングのブッキング力の凄さ。
さりげなくMCから静寂気味に「ヒーローズ」がアコースティックギターで噛みしめるように歌われる。デビッド・ボウイも特に初期はアコースティック・ギターを取り入れる曲も頻繁にあったが、デビッド・ボウイはアコースティック・ギターの鳴らし方や残響の加減、アタックの気持ち良さを熟知しているアーティストでもある。

Nothingman / Pearl Jam
当時旬なロック・バンドであったパールジャムが出演しているが、ニール・ヤングとはアーティストとして迎合しない一貫した孤高の精神性や生き方にかなりシンパシーを感じて出演している気がする。
全体に言えるがドラマティックでない平坦な曲を選んでいく傾向があるようだ。

Battle of Evermore / Lovemongers
ハートのアンとナンシー・ウィルソンのユニット名で、敬愛し過ぎてやまない、レッド・ツェッペリンの「限りなき戦い」をカバー。
恐らくずっと以前から人前でこの曲をカバーしたくてうずうずしてたんではないだろうか。
演奏パフォーマンスは「愛しすぎるツェッペリン完全コピー」だ。
歌詞も完全に頭に入っており、自分の曲のように歌っているので2人ロバート・プラント状態が聴ける。アコースティック・ギターとマンドリンの曲だ。あまりに好き過ぎてカバーするっていうのは非常に聴いてて心地良い。

Believe / Nils Lofgren
ニルス・ロフグレンのキャリア初期のグリンというバンドの収録曲を披露。
ギタリストであるがここではピアノも弾いてる美しいスロー・バラード。
中盤のピアノのトリルを畳みかけるが、ソロアルバムでも聴ける得意なプレイ。直後の観衆の反応も素晴らしい。

Alison / Elvis Costello
ミキサーを通したアコースティック・ギター1本で、多少音数控え目。
エルヴィス・コステロの生まれ持っているものだが声に「ロック」を感じる。ロックを意識してるのではなくただ歌うだけでロックを感じさせてくれる。こういう素のアコースティックのステージでより一層感じる。

People Have The Power / Patti Smith
アコースティック・ギター2本、アコースティック・ベース、ドラムはブラシの完全バンドスタイル。
1988年のスタジオ盤の作品より少しだけテンポを落としている。彼女のボーカルも一言一句噛みしめて歌っている。それに無機質に粛々とリズムを刻むバンドが却って説得力を倍増させている。

「People Have The Power」と全員で歌うサビがゾクッとして理屈抜きでカッコいい。
チャリティ・コンサートという普段と違う機会で「民衆の力の可能性」というテーマを披露することでこの曲が数段違うステージに上がっている。
この瞬間実質彼女の代表曲に昇華したのは間違い無い。

最後の好反応の聴衆に上機嫌に「God Bless You、Thnak You」とパティ・スミス応え同時にこの作品も終了する。この作品の最後として一番相応しい。

総論

ニール・ヤングにしか出来ない最高度のブッキングに主催の趣旨を重々理解して演奏するアーティスト達。この贅沢な空間を受け入れる観衆の反応が素晴らしく他で聴けないライブ盤

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