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"よい音色"は知識と情熱だけでは生まれてくれない

楽器との出会い

バロックヴィオラという楽器を学んでいることについて書きます。

まずは簡単に私がどんな遍歴で楽器にふれてきたかを紹介させてください。

小学校で「合奏部」に入り、そこで初めてバイオリンと出会いました。
(余談ですが、本当は「万代太鼓部」という部に入りたかったところ、定員オーバーだと言われ、不人気だった合奏部に回されたという経緯です。笑)でも、いざやってみたらバイオリンを弾くのはおもしろかったです。

中学校には吹奏楽部しかなかったので、音楽系の部活には入らず、楽器とは無縁の生活でした。(ちなみにソフトテニス部に入りました。弱小でした。)

高校には総勢80名近い部員がいるフルオケの「管弦楽部」があったので、そこで練習漬けの3年間を送ることになります。
音大を目指すような子たちが入る音楽科があったので、ホールや練習室などの設備が非常に充実していました。(あいにく、わたしは普通科でしたが。)

この高校時代が、わたしが楽器を続けたいと思った原点になっています。
今思えば基礎もまるでなっていないヒドい演奏だったので、振り返ると恥ずかしくなりますが、たくさんの仲間と泣いて笑ってひたすら練習した日々はとっても楽しい思い出として残っています。

大学にもオケがありましたが、ちょっと遊んで過ごしたいと思っていた私は(憧れのキャンパスライフというやつですね)ヒヨって入部を見送り。
色んなサークルを掛け持ちしつつ、部員が3人とかしかいない軽音楽部で、ベースをかじったりしてました。

この4年間でもオケやってればよかったなぁとたまに思いますが、そんなことを今考えても仕方ないのでやめましょう。

そして時は流れ、30歳をすぎて、基礎からしっかり習いたいなと思い立って個人レッスンをつけてもらうことにしました。

5年くらい続けたものの、小さいころから継続してこなかったせいか、小学校や高校の頃より指が思うように動いてくれません。また、仕事との両立で練習時間も充分に取れず、当時は焦ってばかりいました(一介のアマチュアなのになぜ…って感じですね)。

こうして頭打ちを感じていた頃、先生に「ヴィオラやってみたら?」と言われて転科しました。2019年の10月だったと思います。

結論、バイオリンよりヴィオラの方が自分には合ってたんだなーと思う日々です。ゆっくりではありますが確実に技術が伸びているのを自分でも感じられるし、何より弾いていて楽しいです。当たり前だけどこれ大事。

なぜ楽器を弾くのか

いったい何が楽しくて楽器を弾くのでしょうか。

私にとって楽器を弾くことの1番の魅力は
「自分の声では歌えないようなメロディを、楽器をつかって歌えること」です。

歌うこと自体は嫌いではないですが、自分の歌声ってどうも好きになれない(なんなら、自分がしゃべる声も気持ち悪すぎてまともに聞けません)。

歌う仕事をしている人のように、自由自在に音程を操れて、美しい声で歌えたら楽しいだろうなぁ。
でも残念ながら私はMISIAさんでも西川貴教さんでもありません。

ヴィオラは弦が4本あり、「ド」から始まり3オクターブの音を出すことができます。
自分では出せない高音も、歌いきれないメロディーも、きれいな声で楽器が歌ってくれる。
そんなの最高やん。

ですが、自分の思うような音色を奏でられるようになるまでは長い道のりであります。そして、まだまだわたしは道の途中です。もしかしたら、一生終着点には行き着くことがないのかもしれません。

「楽器が弾ける」とはどういう状態?

ところで、具体的にどうなったら「楽器を演奏できる」と言えると思いますか?

・楽譜を読んでソルフェージュをし、
・作曲家について学び、
・演奏フォームを覚え、
・正確に音階練習をし、
・楽譜通りに音を出し、
・できれば暗譜で弾けるようになる

わたしはざっくりこんな感じに思っていたのですが、

実際は上記を習得していくために、もっと根本的な「フィジカル」と「メンタル」の地道な鍛錬だったんです。

なんとなく、アスリートと共通してそうな雰囲気だと思いませんか?
わたしも意外だったので、以下にすこし詳しくご紹介していきたいと思います。

フィジカルについて

他の弦楽器にも共通しますが、ちょっと変わった筋肉の使いかたをするので(例えばヴィオラなら手の小指を素早く開いたり閉じたりするとか、手首と腕の力を抜いてひじだけ上げた状態をキープするとか)、楽器を「正しく」構えて「正しく」動かさなければ、あたりまえですが美しい音は出ません。

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↑こんな奇妙な姿勢、日常生活でしませんよね。。

まず、この基本のフォームを自分の体に叩き込む。
小手先の技術よりはるかに大事なのは、どんな緊張状態にあってもこの原理原則に則って音を出すことができるかどうか、です。

でも、私たちの体とは日によってコンディションも変わるし、いつでも不安定なもの。
よい音が出るフォームを体に定着させるのは、以外にも大変です。
地道に続けていくしかないのかなと思います。

なので、私のように30歳を過ぎてからの手習いはそれだけでかなりハンデなのです。
3歳とか、ちいちゃい頃から体に染み込ませておいた方が圧倒的に有利。
弦楽器に限らずですが、有名な演奏家が子供の頃から楽器を始めているのも納得なんですね。

そのフォームを覚えたら、体の余計な力を抜いてリラックスして弾くことがもっとも重要です。

例えば、右のこぶしを握り締めて肩から指先までをガチガチに力が入った状態にして、左の肩から指先までは完全に脱力した状態にしてみてください。

すぐにできましたか?
たぶん、右に引っ張られて左も少なからず緊張状態になってしまうと思います。
できたとしても、その状態で何時間も過ごせとなったらたぶん疲れるはず。

体のどこかに余計な力が入っていると、それが雑音になって必ず音にも表れます。

思ったような音が出てないな…という時は、体が力んでいないか、腕や指の位置が正しいフォームになっているか、自分をメタ視点で点検してみるといいですね。

メンタルについて

「本番」、いわゆる「ステージには魔物がいる」というやつです。
これが本当なんです。

舞台に上がってもまったく緊張しないという人もいますよね。
そういう人、まじで羨ましい。。

わたしは内輪の発表会ですら、緊張で弓を持つ右手が震えすぎて勝手にスタッカート状態になっていたことがあります。いや普通に弾きたいのに。あの時は頭が真っ白でなにもコントロールできなかった。
というか、なんならリハーサルでさえも、毎回手汗・足汗が大量で困ったもんです。

わたしはよく先生に「もっと自信を持て」と言われます。

自信がない箇所で急に音が小さくなるよね。まあ、みんなそうなんだけど。自信がないところほど、得意そうに弾きなさい。

なるほど確かに。
自信が持てなくて体も縮こまってしまっては、よい音なんて出せません。

そこで、メンタルを鍛えたろと思って本を読んでみました。

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雑に言うと、セルフトークという「心の中のひとりごと」を認識し、コントロールしてみるといいんじゃないの?という本です。

わたしは出来る!さんざん練習してきた!
ていうか、間違えてもいいじゃん。死にやしないし、誰も気にしてない。
楽しく演奏できたもん勝ちだよね。

と思い込む。

無意識にでも「失敗するんじゃないか」「間違えちゃったらどうしよう」と思ってしまったらその時点でアウトらしいので「わたし最強、絶対大丈夫。」と思ってあげればいいみたい。

あ、もちろん、そうやって自分に自信を持って言えるくらいには練習をしている前提ですよ。

メンタルが安定してステージの上で肝が据わると、「どんな緊張状態にあっても原理原則に則って、いつも通りのパフォーマンスを出せる状態」に体がなってくれます。

体がリラックスした状態になれば、よい音が出せて、よい演奏ができる。

よい音が出ると、さらにメンタルが安定して「もっとこの音楽を響かせよう」という方向に向かってくれる。

そうすれば体はずっとリラックスして、好循環が生まれます。
「勝ちパターン」の出来上がりですね。

つまり、よい音色とは

よい音で楽器を鳴らすには、メンタルを強く持ち安定させて、フィジカル(体)がリラックスした状態で演奏することが不可欠で、日々の練習はそのためのトレーニングです。

この学びと鍛錬には、たぶん完成形(=終わり)はありません。
どんなに有名で技術の高い演奏家でも、練習を怠ることはありませんからね。

で、これ楽器を弾くとき以外にも、人生の中で役立つ場面がたくさんあるんじゃないかなと思うのです。

仕事をしていても、上司に対してとかお客さんの前ですごく緊張していたら、ベストなパフォーマンスは出せませんね。

逆に、自分に対してネガティブになりすぎず、自信を持っていれば、どこかでよい結果につながったりします。

わたしの仕事は頭脳労働なので、特にメンタルの話はヴィオラを持っている時だけではなくて、仕事にも日常生活にも活かせるなと思います。
そんなことを考えながら、今日も苦手な楽譜とにらめっこですが。。

楽器を弾けると、世界が広がって良いですよ!

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