見出し画像

#4アーケイド・ファイア『ウィ』

服部さんへ                               
 エラ・メイ、何というか、久し振りに王道のR&Bを聴いた気がしています。ロック好きだからかどうかわかりませんが、今だとたとえばザ・ウィークエンドやポスト・マローン、ケンドリック・ラマーといった、キャッチーだったりエッジーだったりするR&B/ヒップホップには馴染めるし、けっこう好きで聴いているんですね。それもあって、非常に新鮮に響きました。エド・シーランとの共演歴もあるようですが、メインストリームのチャートで名前を見たことがない気が……。あ、これが2枚目の新作だから、今から上がっていくのか。
 声がいいです。やわらかで、かつ艶っぽくて。その声を活かした、控え目なトラックメイクも、いい仕事していますねという感じです。ゴスペル風味の壮大な曲で聴かせると思えば、感情をダイレクトに伝える、ロックにも通じる曲があったりして、若いのにといったら失礼だけど、表現力もかなりのものですね。勝手に容姿端麗な育ちの良い女性を想像していたら、「Don't Fu●k Me」なんて連呼したりして、そのギャップにも惹かれました。アルバム・タイトルも興味深いです。ジャケット写真で、ノースリーブ(ですよね?)を着ていることも。ぜひ今度、意味を聞いてみてください。


アーケイド・ファイア『ウィ』 

 とにもかくにも「ウェイク・アップ」という曲が大好きで、来日時に生で体感できた時の感動と言ったら……。そのアーケイド・ファイアから、久々のニュー・アルバムが届いた。5年ぶり、通算6作目。プロデューサーに起用されたのは、レディオヘッドでお馴染みのナイジェル・ゴドリッチだ。
 というわけで、あくまで個人的な話をすると、期待半分、不安半分だった。なぜなら、レディオヘッドは素晴らしいバンドだとは思うけど、好きなバンドではないから。が、しかし、これがフタを開けてみたら、サイズこそコンパクト(トータル40分)ながら、いやコンパクトだからこそ、手放しで絶賛したい大作だった。個々の楽曲のクオリティもさることながら、この時代にアルバムとは何かを再定義してくれるような1枚に仕上がっている。
 タイトルの『ウィ』も示唆的だが、今作は「I」と「WE」の2部構成。これで想像がつく通り、前半の「I」パートでは孤独が、後半の「WE」パートでは連帯が表現されている。分断されてしまった私(I)の心が、私たち(WE)として繋がっていく過程が描かれていくのだ。そして、その作風がなんとも秀逸。曲を追うごとに暗闇に光が射し、最後は眩い陽光に包まれているような高揚感が、たまらない。
 百聞は一聴にしかず。ロック・ファンならずとも、すべての音楽ファンに聴いてほしい。次の来日時には、1部を『ウィ』完全再現ライヴ、2部をヒット・セレクションというのは、いかがでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?