#60 ジャック・リー&ネイザン・イースト『ハート・アンド・ソウル』
ジャック・リー&ネイザン・イースト『ハート・アンド・ソウル』
久しぶりのジャケ買い。黄昏時に歩く男性2人の後ろ姿、とても素敵だなぁと思って。どの街なんだろう、と想像で遊べるのもいい。さらにベーシストのネイザン・イーストの作品じゃないですか!!
もう何十年の前にLAのスタジオで、彼に会ったことがあるんだけれど、温和な人柄がにじみ出た笑顔がとても印象的で、それ以来、彼のプロジェクトは気になっているので……。
今回組んだのはギタリストのジャック・リー。アルバム1曲目にいきなりバッハの『主よ、人の望みの喜びよ』が奏でられてちょっと驚くけれど、収録曲はとても多彩になっている。希望、愛、回復力をテーマにしているということで、『アメイジング・グレイス』、『明日に架ける橋』といった有名な曲から、クラシックの『リベラ・メ』もあるし、それぞれ2人のオリジナル楽曲もある。そのなかでバックコーラスというカタチでヴォーカルは、時おり入るけれど、それもあくまでも楽器のひとつという立ち位置のよう。唯一の例外は、『イッツ・ユー』という曲に平原綾香が参加している。
もともと実力派としての評価が高いシンガーだけれど、ミュージカルに出演するようになってから、すごく表現力が増したというか、コロナ前のステージだったけれど、彼女の生歌を聴いて、ゾクゾクしたことがあった。この『イッツ・ユー』でも「ゴスペルを歌ってきました?」と思うほどソウフルな歌唱で、その存在感が際立っている。さすがです!
また、スティーヴィー・ワンダーの『ハヴ・ア・トーク・ウィズ・ゴッド』で聴こえるハモンド・オルガンがあったかくて、いい演奏と思ったら、なんとネイザンの息子のノア・イーストだという。どの曲からもいい会話が聴こえてくるような演奏で、スタジオでの雰囲気が見えてくるようなのもいい。
音楽にもネットにもなんにでも大量の情報がぶちこまれているような時代に、こんな大人のインストだと心穏やかに、ふと肩の力が抜けるというか、そんな時間が生まれて、なんかホッとする。想像力が動き出すことにも自分自身が癒されるようで、そこもいいのかな。
服部のり子
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