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#21テイラー・スウィフト『ミッドナイツ』

鈴木さんへ
 一日以上も原稿アップが遅くなりました。言い訳すると、日帰り大阪出張と原稿の締め切りでヘトヘトになっていました。世の中旅気分なのでしょう。東京駅の混雑ぶりに大きく動き始めていることを実感しました。
 レッチリがそんなに好きだったとは知りませんでした。彼らが80年代にデビューした頃、ステージをはちゃめちゃに走り回るパフォーマンスを見て、若いなぁ~、いつまでその元気が保てるの?って本当に思ったことがありました。それほどロック好きではないので、そんな冷静というか、皮肉な目で見ていたんですよね。そういうバンドが今もこうして活動していることに感動があります。しかも4月のアルバム『アンリミテッド・ラヴ』がUKチャートで1位、今回の新作が2位ということにも感動があります。
 鈴木さんが言うようにメロディアスになっているし、『エディ』という曲、イントロから絶対にいい曲というのが出ていますよね。
 

テイラー・スウィフト『ミッドナイツ』

 新作の舞台は、真夜中。それがテーマになり、タイトルにもなった。プロデューサーのジャック・アントノフとふたりきりで、毎晩ニューヨークでレコーディングしたという。ご本人のSNSによると、「好きなことをいくつか書いていたけれど、それぞれのパートナーがパナマで一緒に映画を撮ったことで、(音楽が)本当にまとまって私たちから生まれてきた」と。それが聴きながら得られるナチュラルな心地よさが感じられる理由であり、たくさんの曲が生まれた背景でもあるだろう。オリジナル盤は13曲だけれど、「3am edition」には20曲も収録されている。


 親密感ではなく、寄り添うような親しみと、温かみのある楽曲。ポップな歌もあるけれど、真夜中にベッドの上でピョンピョン飛び跳ねるような弾けたものではなく、どの曲もストーリーテリング。これは、デビュー以来一貫している彼女の音楽性だけれど、今回は、その物語を表現するための声、低音域から高音域のファルセットまでの使い方が巧みになっているし、多重録音から広がる美しさも際立っている。
 真夜中に押し寄せるさまざまな感情を歌っているという。まだ、歌詞対訳を入手出来ていないので、そのさまざまをまだ理解できていないが、時のマジックが存在する時間帯がテイラーとジャックのクリエイティヴィティを刺激したのだろう。これは彼女が10代の頃から感じてきたことだけれど、自分の創作アイディアに対して正直であり、直感も大切にしてきた。流行とか、時代性に左右されないことが彼女のすごさであり、強さだ。『ミッドナイツ』は、そこへのリスペクトをまた新たにする作品だ。
 囁くような歌声を聴きながら、星空のもと、ランタンの灯だけのステージで歌うテイラーの姿が浮かんできた。実現したら、どんなに幸せな気持ちになるだろうか。想像だけでもうれしくなった。
                             服部のり子

アルバムの日本盤は4形態のリリース。上記の『ブルー』のほかに『グリーン』、『ブラッド・ムーン』、『マホガニー』があり、海外では他にLP、カセットがリリースされている。また、CD、LPのそれぞれ4形態を揃えて、裏面を合わせると時計になるデザインになっているそうだ。配信の時代にこういうアイディアを実現させるところも素晴らしい。

 

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