2章第15話 夢を見ることすらできない
「力をつけたいならまずはタマニーカップで優勝してみな!」
突然の無茶振りに唖然とするポルチーノくん一行だったが、タマニータは構わず畳み掛けます。
「特に今年の賞品は滅多に出回らない激レアカードの1枚だぞ。強くなりたいならゲットしておくべきだ」
激レアと聞いて、色めき立つ一行。
なんていうかこう、基本は欲にまみれてるよね君たち。
「お前たちも一度くらい聞いたことがあるだろう?この世界に散らばるレアカードのことを。ショップで買えることもあるが、ほとんどは強者から強者へと渡っていくため表に出てくることは稀だ」
「しかしタマニーカップの賞品レアカードは文句なしのAランクカードだ!誰でもゲットできる機会のあるAランクカードなんてそうそうないぜ」
「強くなりたいなら、まずはそのカードをゲットすることだな!」
と、話を締めくくるタマニータ。
しかし、朗報ではあるもののポルチーノくんたちの顔色はぱっとしません。
それもそのはず、彼らはそもそもにして弱いのです。優勝なんて夢のまた夢。とてもいいカードなのはわかるけども、ゲットできる未来なんて見えやしません。
ごにょごにょ……。
「うーん……ボクじゃ勝てそうにないから……ここはムッシュの出番ッポルね?」
「ムムッ……私も勝てそうにないのであります……」
ごにょごにょ……。
ごにょごにょ……。
「さっきまで村人たちの仇をとると張り切ってたのは誰ッポルか?ムッシュっぽるよね?」
「ムムッ……!しかしそれは……それは諸君らもではありませんか?」
ごにょごにょ……。
モニョモニョと意気地なく押し付けあう様子を見て、タマニータの中でなにかがぷつんと切れました。
「オマエラ……本当は心底強くなりたいなんて思ってねぇだろ?」
「オレは本当に強くなりたいやつは真剣にアドバイスするが、その気がねぇヤツらとは話すつもりはない。さっさとここを出ていけ!」
こうしてポルチーノくんたちは、タマニータに蹴り飛ばされ店から追い出されてしまったのでした。