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火災報知器と無職 ♯42

 昨日の夜中23時30分ごろ。突然、マンションの火災報知器がなり始めた。かなりの爆音に、猫がとても驚いていた。

 部屋の外に出てみると、廊下でも報知器がけたたましく、マンションに急遽訪れた危機を告げている。その報知器によれば、1階で火災が発生しているらしい。続々と他の部屋から出てきた住人たちは、エレベーターが止まっているので、階段で下へと降りていく。

 火災が1階で起こっているのであれば、1階に下りていくことは、火元に近づいていることでもあるので、それでいいのかなとも思いつつ、他方で、この階にとどまり続けていたら、それはそれで脱出の機会を逃してしまうのではないか、と一人で少し悩んだが、他の住人に倣って下りてみることにした。

 一方で、うちには猫がいる。猫を置いて自分だけが逃げるわけにはいかない。鳴りやむ様子のない火災報知機の音に、驚いて部屋の奥で縮こまっている猫を抱えて、猫用のキャリーバッグに急いで詰め込む。その表情から、なんらかの異変は感じている様子が伝わってくる。

 その他は、スマホだけ持って、部屋を飛び出て、1階に降りていった。

 マンションの外には、すでに数十人の住民が逃げてきていた。1階を抜けて外に出てきたが、火も煙も見えなかった。

 元々から知り合いなのか、住民相互で仲睦まじく話している人々もちらほらいた。誤報だろうとな、こんな夜にやめてくれとか、お風呂入っていたところだったのにとか、思い思いのことを話していた。僕は人見知りなので、バックの網目上の部分から心配そうにこちらを眺める猫を見ながら、報知器が鳴り止むのを待っていた。

 30分ほど経っても火災報知器が鳴りやむ様子はない。誤報だと確信し、部屋へ戻っていく人も現れ始めた。半分くらいの人が戻ったタイミングで、僕も部屋へ帰った。そして程なくして、先ほどのは誤報ですとのアナウンスが流れた。

 今回は誤報でよかったけど、本当に火災が起こっていたら、自分がとった行動で良かったのだろうか、部屋に戻って少し反省した。自分のものについては、燃えて困るものはほとんどないのだけれど、仮に火災で今のマンションに住めなくなれば、当面は猫とどこかで避難することになるのだろうから、携帯用のトイレやトイレ砂、最低限の餌とかを、避難用として確保しておいた方がいいのかなとか考えた。


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