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猫と無職 ♯2日目

 朝、10時に起きる。猫が起こしてくれなければ、もっと寝ていただろう。

 自分が毎日の行くあてをうしなったことを猫は知らない。でも、異変には気づいているようだ。距離感を測りかねている初デートの男女のようによそよそしくもありながら、家に自分がいることをうれしく思ってくれている様子で、今この瞬間も僕の膝の上で安心して寝ている。

 猫になりたい、などというよくある言い回しを使う気はない。彼女にもきっと苦労や悩みがあって、今も僕の膝の上で、彼女なりに、何か大切なことを考えているのだと思う。そっと肉球をなでる。その少しの硬さに彼女の人生の積み上げを思う。まだ3歳だっけ。


 少しの間になるかもしれないけど、しばらくの間、お互いのことをゆっくり話そう。まだ君に聞いたことのないことがたくさん残っている気がする。

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