日記と夢日記18

新型コロナウイルスに感染していたFountains of Wayneのアダム・シュレシンジャーが亡くなった。悲しい。

高校生の頃は、シンコーから出ていたパワー・ポップのディスクガイドで紹介されていたような90年代以降のバンドが好きだったからもちろんFoWも聴いていた。大学生になるとポップでわかりやすいものを忌避する傾向が出てきてあまり聴かなくなってしまった。今後は『リメンバー・ミー』ではないが、折に触れて聴いていくつもりだ。

Twitterでは追悼を込めていろんな人がアダム関連作について呟いている。記憶から溢れていたものが多数。「そうそうそう!IVYのカバーアルバムいい!」なんてことを思い出したり。

有名人が死に、そのことを受けて一部の人が問わず語りを始めた際に「死者をダシにして自分語りをするなんて下品だ」とか「みんな急に語り出してるけど本当に好きだったの?」とか言って水を差す人がいる。好きな人物の悲報からこんな話に続けるのはどうかと思うが、続けよう。

CoDモバイルをやっているとボイスチャットをつけたキッズたちと同じチームになることがある。FPSゲームはいかに相手が嫌がるような陰湿なプレイがするかによって勝敗が決まる。だから敵に押されている状態では自ずとイライラが募る。本当にこいつら性根腐ってんな!といった具合に。

こうした状況において口の悪いキッズたちは敵に殺されると「ああ!芋砂まじきっしょ!」「ロケカスきめぇ!」「リス狩りうぜぇ!」などとシャウトする。彼らのプリミティブなシャウトを聞くと、このぐらいシンプルな言葉を使うべき場面があるよなあと思ったりもする。

だから先に述べた水を差してくるような輩には「はあ?きっしょ!」とだけ言っておけば良いような気もする。そもそも奴さんたちのために時間を割いて「彼らの言っていることがしょうもない100の理由」みたいなことを考えることがバカバカしくないか。「なんだこいつ、気持ち悪ぃな」で終わらせておけば良い。自分のような似非インテリ風の人間は無意識に若者の言葉遣いを過小評価をしがちだ。己のボキャブラリーを顕示し、若者たちの語彙の貧しさを嗤い、自分がインテリ寄りであることを再確認して安心したがる。

このことを反省し、態度を180度変えて、若者言葉こそが人間の本質なのである!という調子で過剰に持ち上げるつもりもない。それはそれできついからだ。

Twitterの状況が311のときに似てきたような気がする。昨日の日記でも書いたが、当時は政治的な言説から距離を置きたいと考えていた。原発のことはよくわからん。怒り散らしている人はなんだか怖い。今ユナイトしない奴は腑抜けだと言われている気がする。そもそもなんで反体制であることを自明としちゃってるわけ?そんなことを感じていた。

そんな折、内田樹のブログを読み、「ファナティック」という単語を覚えた。一つの正義を狂信し、声高にそれを主張することには危うさがあるから気をつけろ。

今にして思えば内田樹の文章にはもっと含意があったと考えられるが、当時の自分はわかりそうな箇所をつまみ食いして粗雑に理解したうえで、仰る通り!と思ったのだ。常にクールでいることを良しとし、何事も相対化して中庸を目指した。そうした主張をする人に共感も覚えた。

今後悔していることは、政治的な言説を忌避しながら、クールであろうと努めたために、何かに対して怒りを顕にする人の怒りの矛先を見ず、その内実について検討することもなく、ただ怒っていることだけに反応し、「やだやだ、感情的になっちゃって。俺はいつでもクールですけどね」と言って自己愛をくすぐるに留まり、結果的に現状追認していたことだ。

「俺はクールであることが唯一の信条で、ノンポリだし、イデオロギーなんてもの持たないのさ。イエスかノーかと聞かれたら?中庸って答えるね。」当時は輪をかけてものぐさな愚か者だったためにノーと言わない限りイエスと言っていると見做されるのが世の習わしだと知らずにいたのだ。為政者からしたらなんと良い鴨なのだろうか。そうして気がつけば「和牛の商品券」ないし「マスク2枚」という事態になっていた。

イデオロギーとかないんで!としつつも、選挙には行っていたし、イエスかノーかについては票として投じていた。だから、こうした事態になったのは直接的には俺のせいではないと言えないことはないのだろうが、仮にそうであっても、冷静に物事を考えている風の何も考えていない人間であることに自分で気がつけなかったことに後悔は残る。

「そんなぶちギレてたら聞く人も聞いてくれませんよー」というようなもっともらしい発言になびきやすいことが情けなくて情けなくて。今後は良い鴨なりに抵抗していくほか無い。もはやすべてに「はあ?きっしょ!」と言ってしまいたいところだが、9年前の自分に投げかけるに留めておくことにしよう。過去の自分に居丈高になっても仕方がないのだが・・・。

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