人見知りはツケ払いできない
今年に入って一度もエゴサーチしていない。私が現在所属しているバンド、トリプルファイヤーの名前で検索することもない。バンドとして表立った活動もあるわけじゃないし、したとしてその結果はいかほどのものか、といったところではあるけれど。
きっかけはレココレへの寄稿である。今年の1月中旬に私が寄稿したレココレの「このドラムを聴け!」特集号がリリースされた。その感想を目に入れるのが怖かったためエゴサを控えるようになった。結局それから一度もしていない。RSでの連載についての感想も気になるといえば気になるが恐ろしさが先に立つ。
何かしらの活動をしている人はエゴサーチをすべきなのかもしれない。つまりエゴサーチによって人々の欲求を把握し、自身の活動へフィードバックさせ、マーケットでのプレゼンスを高めるのが合理的な戦略なのだと思われる。それにネット上の罵詈雑言に怯んでいるようではこのクルーエル・ワールドを渡ってはいけないだろう。実際、出世している人々は日夜エゴサーチをし、その結果を積極的にリツイートしているではないか。エゴサーチこそが出世への唯一の道なのである。しかし、そうだとわかっていてもしたくない。もうエゴサーチができない体になってしまった。少なくとも一人ではできる気がしない。誰かに立ち会ってもらわないと無理だ。挫けそうになったときに肩を支えてくれる人物がそばにいてほしい。
ジョージ・ルーカスはスターウォーズの第一作が公開される際にハワイへ逃亡してホテルで布団をかぶってぶるぶる震えていたらしい。そんな話を細野晴臣のエッセイか何かで読んだ。チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーも何かをリリースする日はネットのリアクションをあまり目に入れないようにするそうだ。万が一ネガティブな意見を見つけてしまった場合は、その人物による他の発言をいくつか読んでみて、そいつがどうでも良い奴だと確認して心の平静を保っているとこのこと。人から注目を浴びたいという欲望があまりにもむき出しになっていて目のやり場に困ってしまう昨今においては、上記のエピソードは私たちの心を清涼感を与えてくれる。
日曜の深夜にグレーバーの『負債論』をやっと読み終えた。600ページ弱。長かった。迷子にならないようにノートを取って論旨を整理しながら読んだから3週間ぐらいかかってしまった。ボールペンを一本使い切った。
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