見出し画像

エデン条約編4章がおもしろすぎるぞ雑記/感想と予想

※2022/06/09追記
 「聖園ミカ、記憶の欠落と改竄の予想」にリンクを追加。

1 はじめに


 続きの配信いつ? アロナ? 明日? アロナ? アロロロロロロロ!
 先日のこと。知人「言うてソシャゲっしょ?w」とテンプレ煽り。私「ちゃんと面白いってこと教えてあげますー!」と小学生みたいなぶちギレを見せてエデン3章までの長文感想を推敲、もとい書き直していましたが、4章を読み終わって「ダメだ。3章まででこの作品を語るなんて失礼だ。私が浅はかだった」と思い直し、ブルアカめっちゃええで――とだけ囁く変質者になりました。
 それくらい4章、面白かったです。どこまでアクセル踏むのかな~まぁ3章ほどではないかな~と高を括っていましたが、まさかのピカおじアクセル全開。コーナー曲がる気一切無し。最悪で最高な展開まで一直線に猛突進。ボカーン! クラッシュ! 意識が薄れる中、最後に見えたのはジュビロスマイルを浮かべながらこちらを覗き込むピカおじなのだった……。
 そんな4章の個人的に良かった部分などなど垂れ流していきます。予想だけ読みたいのよアタシは、と言う先生は目次から飛んでいってください。


2 心惹かれたシーンと大まかな感想


2.1 アツコの策


 アツコがベアトリーチェに「名前を使って約束させる」シーンは能力バトル系の漫画が好きな先生は「おっ」となったんじゃないでしょうか。戦いは既に始まっているってやつですね。
 黒服がアビドスでホシノを縛りつけたように、エデン条約が戒律の守護者を成立させたように、キヴォトスでは契約が大きな力を持ちます。現実において契約を成立させる方法は様々あるでしょうが、洋の東西を問わず特に重要とされるのは名前でしょう。
 物の名。人の名。特に本当の名前、諱(いみな)や真名(まな)と呼ばれるものは古来から特別視されています。目上の人物の本当の名前を呼ぶことや書くことは失礼と考え、異なる読みや文字を使う「避諱」の文化はこの代表格です。また、西遊記に登場する金角・銀角大王の持つ瓢箪は、相手に名前で呼びかけ、答えた相手を吸い込んで封印してしまうとされています。その他、洗礼を受ける際に与えられる洗礼名も、名前に関係した文化です。
 現代の作品でも、本当の名前が重要になる作品は複数存在します。「千と千尋の神隠し」では主人公・千尋が湯婆婆に名を取られますし、「夏目友人帳」では妖怪の名を記した友人帳を手にすれば、そこに書かれた妖怪を支配できます。「血界戦線」でも、主要な敵である吸血鬼を封じるためには諱を知らなければなりません。
 名前を知る。名前を付ける。名前に儀礼的意味合いを見出す文化は、他にも世界各地に散見されます。
 ベアトリーチェは黒服やマエストロの芸術を重んじていません。力のみを求める実利主義的な一面が見られます。その迂闊さが、アツコに名の利用を許してしまったのではないでしょうか。
 絶対この約束で逆転すると思ってます。ベアトリーチェが悔しそうに絶叫する姿が目に浮かぶわいガッハッハ!

2.2 ナギサの宣言


 そう! それだよそれ! 求めていたのはそれ! いや~良かったね。ナギサが自ら知り、自ら考え、広く視点を持った上で自ら選ぶ。自己の内面に物事を見る基準、道徳観とも言える軸を得て「ミカを信じる」と言い切ったのはノーベル透き通り賞です。かっこいいぞナギサ! そのままミカの部屋まで行って大胆な口づけと愛の告白しろ! この私が許す。
 何を信じれば良いのかわからない。どう信じるのが正解かわからない。そんなナギサが「それでも私は信じる」と口にしたのは、ミカを信じる以上に自分を信じられるようになったからでしょう。ナギサの活躍期待してるからな!
 やはりナギサが本当に特大感情を抱いているのはミカなんですよね。ヒフミにも好感を抱いているのでしょうが、それは一番ではないのです。俺が信じるナギミカを信じろ。

2.3 サオリの人格


4章で欠かせないのはサオリの人格でしょう。私としてはここが一番「納得感」のある描写でした。物語、特に少年漫画は多少の粗があっても納得感が保てていれば面白いとジョジョの奇妙な冒険から教わったオタクは多い筈です。私もそうなんですわ。
 トリニティ総合学園に対する憎悪が自発的なものではなく、教育されたものであることは3章時点で明白です。数百年前の、自分達が生きていた訳でもない時代の出来事を理由に直接的な憎悪を募らせても、そこには当事者性が欠けているのです。「当時、何があったのか」を体験している世代がこの世を去って久しく、記憶が記録になる程の時間が経っても同一の感情を維持し続けるのは困難です。
 当事者ではない彼女達が必死でアリウス分校であろうとするのには、止むに止まれぬ理由があることも推測できます。他人に提案を断らせない最も確実な方法は、相手の首根っこを掴むこと。アビドスで黒服が実践した手段その物ですね。
 サオリを束縛していたのはアツコの命、そしてアリウスの仲間達です。貧すれば鈍する。生活がままならない子供達を統制するには、生活自体を人質に取れば良い。的確で、性格の悪い判断です。その中でスクワッドを指揮しながら、アツコや仲間を生かす道を目指し続けていたサオリの精神性は、ある人物に似通っています。

サオリ(アリウススクワッド)
「お前がそうやって脅そうと、私はお前を生かしてみせる」
「今まで何度やっても無駄だったのに、今回は成功できると思っているのか?」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編4章8話「アリウススクワッド」より。

アズサ(補習授業部)
「……うん。たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編1章11話「大掃除!」より。

 
 何度でも足掻くこと。それはアズサのvanitasの根底にあるものです。私はサオリがアズサに似ていると言うより、アズサがサオリに似ていったのだと推考しました。ただのアリウススクワッドの頭目ではなく、アツコ達のためにアリウスを率い、何度でもミサキを蘇生する錠前サオリ個人の精神性に影響を受けたのがアズサと考えると、サオリがアズサに手厳しく接するのも無理からぬことです。
 サオリにとってアズサは「自分にできなかったことを成そうとしている存在」に映るのではないでしょうか。姫、仲間、命、多くを背負い、雁字搦めになったサオリが選びたくても選べなかったもの。無駄かもしれなくてもアリウスの憎悪と絶望に立ち向かう道。その道に駆け出していったアズサに向ける感情は単純な嫉妬のみならず、憧憬であったり、羨望であったり、嫌悪であったりが渾然一体とした状態だったのではないか。だからこそ、アズサに「その憎しみは誰の物なのか」と問われた時、自分に言い聞かせるために「虚しい」の連続で答えた。私の目にはこう映りました。
 アリウス分校の教義から解き放たれ、個人の性格が見えるようになると3章のサオリの言動に一種の納得が生まれる。描写は短いながらも、構成の精度がとにかく高いな~と謎の目線からの感想でした。

2.4 ミカの暴力


 どうしてこうなった?
 なんてこった……ミカ……どうしてこうなった? どうしてこうなった!?
 先生方が取り乱すのも無理はありません。まさか、まさかここでティーパーティー曇らせエンジンが起動するとは誰にも予想できなかったことでしょう。むしろ「こうなることわかってた」と言う先生いるんでしょうか。いるとしたらその先生は悪鬼羅刹か魑魅魍魎の類だと思います。
 ミカが同じことを繰り返していると指摘する先生もおられますが、私は今までのミカから成長していないようには見えませんでした。むしろ、決定的に成長した部分が一つあります。
 4章以前のミカは「自分が何をしたいのかわからない」ことに直面し、苦しんでいました。これは思春期相応と言うか、普遍的な子供の悩みだな~と感じるのですが、その規模が大きすぎる。そして、ミカ自身の口からセイアとナギサに会いたい、会って謝りたいと口にしたことでようやく彼女の中での優先順位が出来上がったのだと理解しています。
 ミカの大切なもの。その最上位と言えば当然、親友であるナギサとセイアの二人ですね。ここに先生や他の誰かが並ぶかどうかは、今はまだ判断すべき時ではないでしょう。
 セイアが傷つけられた時、ミカはこう口走りました。

ミカ(ティーパーティー)
「私の大切な人たちがこんな目に遭っているのに、錠前サオリだけ安穏と過ごしてるなんておかしくない?」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編4章7話「選択と決断」より。

 
 ミカは罪と罰を受け入れています。思い出の品々が燃やされても、罵倒されても、檻の中で耐え続ける。それは、自らに課せられた罰が公正なものであるという理解の表れです。自身が罪を犯した者に公正な裁きを下すことを受け入れたならば、サオリはどうなるのか? 彼女もまた、公正な裁きを受けるべきではないのか? 3章までのミカと明確に異なる部分はここにあります。自分が何をしたいのか、何をしているのかわからないままに突き進むのではなく「誰のために」「どのようにして」「何を対象に」暴力を振るうのか決めてしまった存在。今のミカの怒りには、頑強な骨格が入っているのです。
 自らの内面に優先順位と理屈を得た今のミカは、最早ただの「聖園ミカ」ではありません。言うなれば、「超・聖園ミカ」です。そのパワーは間違いなくキヴォトス最強に近い代物でしょう。
 ……どうしてそんなことになっちゃったのかなー!!


2.5 全体を読んでの所見

 
 はじめにも書きましたが、エデン条約編4章は「そこでアクセル思いっきり踏むのかー!!」といった印象です。どちらかと言えばポジティブな方向の驚愕ですね。
 エデン条約編3章で一つの事件は完結しています。ですが、この物語には明らかに「終わっていない問題」が山積みです。歩み寄り始めたティーパーティーや事件の事後処理のみならず、結果的に「アリウスをトリニティから追い出す」という歴史の再現になってしまった事実に、当事者となった補習授業部やティーパーティー、ゲヘナなどが如何にして向き合うのかという勝利者の責任、トリニティとゲヘナ両校に残した爪痕も多大なものです。
 この解決したように見えてまだ問題が残っている状態は、なにもエデン条約編に限った話ではありません。アビドス廃校対策委員会編には土地の権利や、アビドスの砂漠化の原因が残っていますし、時計仕掛けの花のパヴァーヌ編は、アリスの正体に関係するAI「Divi:sion」による、あまりにもわかりやすいクリフハンガーで終わっています。
 1年以上ブルーアーカイブを追ってきて「残っている問題はまだ触れずに進むのかな~」と悠長な考えを持っていたのですが、そんな穏やかな心は今や見るも無残な姿で横たわっています。「女の子達が頑張って勝利を掴み取ったので現実的な問題はサクッと解決すると思った? 限界まで苦しみを煮詰めてから叩きつけてやるよ!!」と宣言されたかのような、そんな衝撃を受けました。ここまでやるんだ……ここまでエンジン全開にするんだ……。
 そんな訳で、私としてはエデン条約編への期待が高まったと同時に、アビドス編やゲーム部編の今後にも期待できるな~と大満足なのでした。続きを待ってるよ! ピカおじ!



3.聖園ミカ、記憶の欠落と改竄の予想


※2022/06/09追記
 後日Twitterにブラッシュアップしたものを投稿しました。再読の先生やこれから読む先生はこちらの方がわかりやすいかと思われます。


 エデン条約編4章を読み終え、真っ先に生じた違和感が「聖園ミカは何故アリウススクワッドを追跡できたのか?」です。ミカは2章のナギサ襲撃未遂事件の後から投獄されています。そんなミカが、現在アリウス分校が通過を試みている入口を予測できるのはおかしいのでは? ミカはアリウス自治区の入り方を知らないのではないか。改めてエデン条約編を読み返す内に、一つの仮説を立てるに至りました。「ミカ、記憶いじられてる説」です。
 私が参加している先生向けDiscordサーバーでは日夜様々な議論が飛び交っています。議論以上に、ただの性癖トークが飛び交っています。そこで4章についてオタクがやりたい放題に熱い議論を交わし、ひとまず形になった私の見解を解説していきます。「私~? 私はこっち派かな~」と現在の見方を明確にする意味合いもあるので、ここだけはちょっと真面目に読んでほしい。上の方は全部忘れてもらって構いません。


 まず、アリウススクワッドが通過を試みているカタコンベ入り口の情報をおさらいしましょう。

ミサキ(アリウススクワッド)
「カタコンベの入り口は、判明しているだけでも約300か所。その中の『本当の入り口』は限られていて、残りはすべて偽物」
~中略~
サオリ(アリウススクワッド)
「だから私たちは正しい入り口と、そこからアリウス自治区に通じるカタコンベ内部ルートを暗号で伝えている」
~中略~
ミサキ(アリウススクワッド)
「どんな仕組みかは分からないけど……カタコンベは全容が明らかになってない迷宮。足を踏み入れるたびにルートと入り口が変わってしまうから」
ヒヨリ(アリウススクワッド)
「今の私たちでは、どこが正しい入り口か分からないんです……もう暗号を教えてもらっていないので」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編4章9話「アリウス自治区へ(1)」より。

ミサキ(アリウススクワッド)
「そもそも、アリウスの生徒なら誰でも知ってる入り口だし」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編4章10話「アリウス自治区へ(2)」より。

 このように、トリニティ地下カタコンベに繋がる道はとても複雑です。しかし、まだ使える入り口が一つだけあるからそこを目指そう! けれどアリウスは皆知ってるから待ち伏せされる。当然、強行突破する。そうして息も絶え絶え、入り口に辿り着いたところで14万の女が出てきたわけですね。
 ミカがアリウスと内通していたのは周知の事実です。スクワッドと連絡を取る際にカタコンベの暗号を入手していても不思議ではありません。ところが、カタコンベの入り口と内部ルートは常に変貌しているため、現在の入り口を予測するには、ミカが投獄される以前からこの「アリウスなら誰でも知っている入り口」が機能している必要があります。

 仮に、ミカ投獄以前から当該の入り口が機能していたとしても、疑問は残ります。3章序幕において、ミカはアリウス自治区の入り方について知らないと口にしているからです。

ミカ(ティーパーティー)
「うん、だよね。私もそう思う。……そういえば尋問でも聞かれたけど、最後までアリウスの自治区のことは分からなかったなぁ」
「自治区への入り方をちゃんと知ってるのは……多分「スクワッド」のリーダー、サオリくらいだと思うよ?」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編3章3話「ポストモーテム(3)」より。

 
 2章の事件後に投獄されたミカは当然、尋問を受けています。しかし、アリウス自治区の場所やカタコンベの情報は公開されておらず、これによりエデン条約会場の襲撃を易々と許してしまいました。この時点では、ミカの発言が嘘だったと捉えることは十分可能です。しかし、ミカはアリウスから見放され、抵抗する意味も利益も限りなく無に近いと言えます。それでも、彼女は嘘をついたのでしょうか?

 4章序幕のナギサ、サクラコ、ミネによる会議では、アリウス分校の謎について当事者達による認識の共有が行われます。カタコンベに関する話題の中で、通路を知る人物としてミカに疑惑の目が向けられますが、ナギサは意を決してミカを信じる選択を取りました。素晴らしい。
 4章序幕のナギサに対する問答は、明確に反復の演出になっています。天丼と言った方が伝わりやすいでしょうか。3章3話「ポストモーテム(3)」では、ナギサはミカを信じ切れませんでした。どこかに真実があるのではないか、と目の前のミカを受け止められずにいたのです。反対に、4章ではミカ本人を真っ直ぐに意識した上で「信じます」と言い切る。一連の事件を通した精神の成長描写であり、同時にナギサという共通した人物を通して、プレイヤーからミカに向かう信頼性を担保する役割があると見ています。

 ミカ自身にも、自らの罪を認め、受け止めるという成長が見られます。罵詈雑言を浴びせられ、私服や思い出の品々を勝手に持ち出され焼却されても
彼女は牢獄に留まり続けています。反抗できる力があるにも関わらず、黙って怒りを受け止めるのは罪の意識の表れであり、それは彼女の言葉からも伺えるでしょう。

 ダメ押しとばかりに描写されるのが、セイアからの問いかけです。少々長くなりますが、極めて重要な部分のため中略無しで引用します。

セイア(ティーパーティー)
「……アリウス自治区に接触した時、『スクワッド』以外で他の誰かに会ったことは?」
ミカ(ティーパーティー)
「えっ……アリウス……?」
セイア(ティーパーティー)
「アリウス自治区には、本当に一度も行ったことがないのか?」
ミカ(ティーパーティー)
「えっと……あの、セイアちゃん……?」
セイア(ティーパーティー)
「ドレスを着た背の高い女性を見たことは?『スクワッド』について他に知っている情報は?」
ミカ(ティーパーティー)
「……え、えっと、セイアちゃん。何を……」
セイア(ティーパーティー)
「ゲホ、ゲホッ……」
「君が、アリウスに接触したことによって……」
(ミカ。感嘆符と表情変化)
ミカ(ティーパーティー)
「……」
「あ……そ、そうだよね?私のせいで……いろいろ……」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編4章6話「折れてしまった羽」より。

 
 このシーンの見方は複数あるでしょうが、私にはセイアとミカの会話が噛み合っていない。特にミカがセイアの言葉を理解できていないように映りました。アリウスと接触したことにミカは反応を示していますが、過去の出来事に対する追及として受け取っています。しかし、セイアが問うているのはベアトリ―チェを中心にした現在の情報であり、この部分にミカはピンと来ていない表情のままです。
 3章であればブラフとして機能したやもしれません。しかし、周辺人物をこれでもかと出演させてまで「ミカがアリウス自治区の情報を知らない」という描写を重ねているとなれば、私には「真である」と受け取る方が筋が通っていると感じます。

 ミカがアリウス自治区の入り口を予測してやって来た。しかし、ミカはアリウス自治区の情報を知らないはずだ。これだけでは「記憶をいじられている」という結論を出すには性急ですね。ここで登場するのが自分のことをゲマトリアの姫だと思い込んでいる厄介なサークルメンバーことベアトリーチェさんです。
 彼女の登場シーンは、短いながらも重要なセリフに溢れています。

ベアトリーチェ(ゲマトリア)
「聖園ミカがアリウス自治区を訪れて以降、彼女に多くのことを手伝っていただきました」
~中略~
「そう……いわば聖園ミカは私にインスピレーションを与えてくれる……ミューズとでも言いましょうか」
「『エデン条約』を利用して太古の威厳を確保するというアイデアも、予知夢の大天使を真っ先に処分すべきだという判断も、彼女のおかげで実現できたのです」

メインストーリーvol.3「エデン条約」編4章5話「不可解な探究者」より。

 
 ベアトリーチェの口からミカがアリウス自治区を訪れていたことは明かされ、またもや矛盾が生まれます。そして、ミカと接触したことによってセイアを襲撃し、排除する判断を下したとも語ります。
 上記の発言通りに一連の事件を時系列順に並べると、ミカのアリウス自治区訪問→ベアトリーチェ接触→セイア襲撃作戦となります。この情報を念頭に置くと、以前とは全く異なる見方が生まれるシーンが存在します。

ミカ(ティーパーティー)
「……セイアちゃんはここにいる」
~中略~
アリウスの生徒
「これについては、『スクワッド』に任せます」
ミカ(ティーパーティー)
「……スクワッド?」
アリウスの生徒
「はい、ご存知でしょう?」
(アリウスの生徒、立ち去る)

メインストーリーvol.3「エデン条約」編3章17話「憎しみの正体」より。

 
 ミカがセイア襲撃に加担した記憶。3章までの情報ではそれ以外の見方はありません。しかし、セイア襲撃以前にミカがアリウス自治区を訪れていたというベアトリーチェからの情報を含めると、会話に不自然さを感じるのです。既にアリウス自治区を訪れているにも関わらず、ミカがアリウスの部隊を統率するスクワッドの存在を認知していないとは思えません。スクワッドの名を聞き返すミカに対するアリウスの生徒の答えが、この違和感に拍車をかけます。

「ミカとアリウスの生徒で、違う認識があるのでは?」

 セイア襲撃以前にミカがアリウス自治区を訪れ、スクワッドとも接触していた事実。アリウス生徒はそれを覚えているが、ミカは覚えていない。「ご存知でしょう?」という不必要にも感じられるセリフの意義こそ、この両者の認識の不一致にあると言えるのではないでしょうか。
 

 ベアトリーチェに記憶を改竄する力があるのか、と疑問に思うのも無理はありません。しかし、ベアトリーチェが他者の精神に干渉できることは既に描写されています。
 ゲマトリアの会議中、ベアトリーチェはセイアの介入を感じ取り、早々に退出します。この時、黒服は動揺し、ゴルコンダはセイアを認識していません。ゲマトリアを観測したセイアは明晰夢の酷使によって現実と夢の境界が薄れた状態ですが、先生やミカ達が観測しているように肉体はトリニティ側にあります。
 「アリウス・バシリカ」に入り込んでしまったセイアを待ち受けていたかのように、ベアトリーチェはセイアを捕らえます。意識のみで実体の無いセイアに干渉し、あろうことか肉体側にダメージを与えているのです。
 これらの描写だけでもベアトリーチェが「実体の無い存在を知覚及びそれに干渉できること」は明白です。この力を用いて、ミカの頭からアリウス自治区やベアトリーチェに関する記憶を削り取る、或いは封じ込めるなどの記憶操作を行ったのではないかと予想します。そして、セイアが傷つけられ精神への負担がピークに達したポイントで、サオリに対する憎悪を募らせたことで、近接するアリウス自治区などの記憶の一部ないしは全部が解放されたのではないでしょうか。
 ミカは「ゲヘナが嫌い」を理由にセイアを襲撃したと語り、先生達も些か無理矢理ながらも、それを真実だと受け取っています。しかし、真実はベアトリーチェによる記憶の一部改竄・欠落だったとすれば、ミカが「どうしてセイアを襲ったんだっけ?」と行動と感情の狭間で苦しんだことに、一つの理屈を見出すことも可能ではないでしょうか。


 ベアトリーチェが記憶操作を行ったとして、理由は一体何か。これについては幾つかの仮説が立てられます。

・仮説1「アリウスに関係する情報の秘匿」
 個人的に一番可能性が高いと感じる仮説です。ミカが裏切ったり囚われたりした時、アリウス自治区で見た情報、カタコンベの存在などをトリニティに伝えさせないようにするために記憶を封じた。素直な考えですね。
 主目的は「ベアトリーチェの存在を知られたくない」「アリウス自治区の場所を隠したい」「エデン条約襲撃をカモフラージュしたい」など、複数予想できます。なにか一つ忘れさせたい記憶があり、それに巻き込まれる形で関連する記憶も欠け落ちたのか。はたまた、初めからアリウス自治区の情報は全て忘れさせるつもりでいたのか。この部分は、現在公開されている物語ではなんとも言えません。
 特殊な予想として「ミカが生贄と祭壇を知ってしまったから」というのもあり得ます。この場合、アツコを救い出す鍵をミカが握っていることになりますね。正気に戻ってくれミカ。

・仮説2「スクワッドに憎悪を向けさせる計画」
 ミカの記憶からベアトリーチェを消去し、アリウス分校に直接の憎悪を向けさせることが目的という仮説です。
 現在、ミカは「サオリが全部悪いじゃん?」という思考に陥っています。本当はベアトリーチェが仕組んでおり、ミカ自身も彼女の掌の上であるにも関わらず、目先の事実だけに囚われ、直接の解決にならない手段に執着して突き進む姿は憐れにも見えます。
 強大な力を持った聖園ミカの攻撃対象にベアトリーチェを含めないための予防策……と書けばそれらしくなりますが、一つ欠点があります。カタコンベやスクワッドについての情報まで一度忘れさせる必要性に欠けるのです。他の仮説と複合した方がわかりやすいかもしれない……。
 
・仮説3「ミカに罪を擦りつけることが目的」
 セイア襲撃、ナギサ襲撃未遂、並びにエデン条約の撹乱を実行した稀代の大悪人「聖園ミカ」を仕立て上げるための手段という仮説。
 ミカがベアトリーチェの存在や、アリウス自治区の詳細を思い出さなければ、トリニティ内部での捜査の手は聖園ミカで行き止まりです。アリウススクワッドや指揮系統上位のアリウス生徒が捕虜になれば、異なる方向で捜査することは可能ですけれどね。
 実際に、物語では多くのバッシングがミカに向けられています。アリウス分校やユスティナ信徒は不確定要素が多く、ティーパーティーも調査中となれば、ミカがわかりやすい悪の親玉になる流れは必然です。

 大きく三つに分けて述べましたが、私としてはどれか一つに限定するよりもそれぞれを複合することでより「それっぽい」理由になるかなと考えています。アリウスに関する情報を秘匿しつつ、ミカの動きを抑制すると言った多面的な手段の方が狡猾ですからね。

 これらは全て予想の話ですが、仮にミカの記憶が改竄されていたなら、エデン条約編を通して重要なテーマに位置づけられている「真実」の物語にもそぐう内容になります。「ミカはアリウス自治区を知らない」は真。「ミカはアリウス自治区を訪れている」も真。ミカの中にある真実と、特定の人物のみ知り得る真実は正反対であり、そのどちらも真実として機能する。何故ならば真実は個人の記憶に紐づいているからである、という話です。
 ここまで予想してきて今更なにを言うか、と怒られそうですが、私はこの予想がただの予想で終わってくれることを願っています。何故なら、ミカの抱いた矛盾が、意図的な記憶の欠如だったなら、今の彼女にとって耐え難い壁が立ちはだかるのですから。
 セイアを亡き者にしてしまった時に抱いた困惑と恐怖、自分の心を守るために飾り立てた理由、後戻りできない場所まで駆け抜けようとした無鉄砲さと自傷的な無力感、もう一度親友に会いたいと願う決意、罪を罪として受け入れた心の成長、親友の苦しみで湧きあがった怒り。ミカがこれまで向き合い、苦しみ、抗い、自分で選び取ったと確信していた感情すらも、他人の掌で転がされるだけの代物だったという圧倒的な絶望になり得ます。それは人格を否定するだとか、尊厳を破壊するだなんて生易しいものではなく、「聖園ミカ」という個の徹底的な圧砕と言えましょう。



 もうブルーアーカイブはえっちなゲームです!でもなんでもいいから俺達をこの地獄から救ってくれ。



4 おわりに



 たすけてくれ~~~~~~~~~~!(懇願)
 エデン条約4章が来る! 次はアリウスの話だな! ルンルン! なんて軽々しくストーリーに突っ込み致命傷を負った先生は、立て続けに公開される続編に嬉し涙を滂沱の如く垂れ流す。もうダメだ~~~~~~~。
 アロナ。先生、夏まで正気を保っていられないかもしれないよ。ミカミカゼミは夏を迎えられないよ。それでも良いのかい? 蝉のいない夏。音の消えた六畳間。微かに響くミカの声。「先生は誰の味方?」

 最後になりますが、こちらを紹介させていただきます。大変興味深い考察と全然興味深くない性癖トークが飛び交う限界オタクの集落。その名も「キヴォトス情報集積部」さんです!

 なんと先日参加メンバーが1000人を突破したそうです。めでたい! 金目鯛!
 沢山の先生が集まって、ブルアカの話や好きなゲームの話をし続ける最高のサーバーです。ドのつく深夜以外は毎日誰かがブルアカや好きなゲームや絵や性癖の煮凝りみたいなド性癖トークで話に花を咲かせています。オタクの楽園かな?
 上述のミカに関する考察も、こちらのサーバーで議論を交わしながら成形していきました。他人と議論を交わしながら考える場所に居られるのは猛烈に楽しいことです。
 注意点として、こちらのサーバーはメインストーリー更新日からオールネタバレOKです。読み終わった先生が熱量をそのままに感想を垂れ流します。他にも、あらゆる性癖を受け止める混沌の坩堝であるため、苦手な話題だなと思った時はそっと見なかったことにするのも重要です。なんでも許せる人向け。
 しか~し、楽しいのは事実! 毎日ブルアカの話題で駄弁りたい! でもTwitterだとネタバレとか気にしちゃう。そんなあなたにオススメ。今ならSRムシモチ貰える。



 ティーパーティーもアリウスも幸せになってくれ。