見出し画像

EP14 StayHungry(PART.1)

EP14 StayHungry(Part1)

過去に俺のことを評して悪魔だと言った女友達がいる。
あなたって悪魔よね。 
ちょっと魅力的な女の子にふとそんなことを言われてしまったら、男なら誰だって心くすぐられてしまうに決まっている。
あなたって悪魔よね。
マスカラ濃いめの上目遣い。
ニッと口角を上げ、真っ赤な唇を脱糞寸前の充血肛門みたいに窄めてキュッと尖らせて。
その仕草が魅力的かどうかにチカチカ疑問符が点滅したってさ、溢れ出る色気さえあれば、いくらでも誤魔化せるという確信犯の鎖骨。
俺は見逃さない。
店員は2名。
俺より少し若いが俺よりずっと常識がありそうで、血を見ることには不慣れな印象だ。
多少面倒なことに巻き込まれても、貫く強い覚悟の正義感など持ち合わせていない。
単なる遊び代稼ぎの大学生かなんかだ。
こうした瞬時の判断能力が、薬物中毒やアルコール中毒を長く続けていくには必須の条件だ。
俺はあなたって悪魔よねとその親友だという存在感の薄い女の子が、清涼飲料水や氷菓子なんかをレジに並んで購入している間に酒類が置かれた棚の前まで歩いてしゃがみ込む。
原産国など気にせずアルコール度数の高さだけで選んだボトルを古着の毛皮のコートのポケットに突っ込むと、店を出て、すぐさまスクリューキャップをこじ開け鼻にツンとくる匂いとともに一気に流し込む。
胃壁がジュッと焼け落ちる音。
ナパーム弾が茜色に美しく炸裂し。
南極の氷山が溶け、崩れ、落ち、地政学的に人生のどん底みたいな谷間の街のごちゃ混ぜ交差点に流れ着く、粗末な密航船の木屑と不法移民のズル剥け溺死体の山、で、野鼠が巣篭もり。
頭蓋骨とおしゃべり。

あなたって悪魔よねの親友だという女の子は、ドーヌデルモのトイバ。
主たる客は、難聴のうえ前立腺肥大症で。
尿道カテーテルを導入しており蓄尿バッグをぶらさげている老日本画家で。
白く濁った老人の目でじっと凝視されながら、一糸纏わぬ姿になって、そのうち汗とは異なる体液が太腿の内側を伝い落ちてきて全身が真っ赤になるのを感じたってさ、意味不明のポーズで1時間以上も不動の姿勢を保ち、不定期収入を得。
その左右の乳首で煌めくのは純粋チタンの輪っか。
尿道カテの蓄尿老日本画家は、毎回高級スーパー正常位Cで肉が裂けるほど怒張した牛のごついペニスみたいにこんがり焼けたバケット2本でも購入すれば入れてくれそうな、紙袋を彼女の頭にすっぽり被せて顔を隠し、そうしてから素描を始めるのだという。
紙袋には、毎回猫とも猿ともつかない動物の顔が、木炭と朱色の墨汁で殴り、描き。
きっと美醜以前に、彼女の顔立ちが、絵として成立しづらいものだったからだと思う。
しかし乳首に金属の異物を貫通させていると聞いてしまった以上、日頃から苦痛と快楽の関係性に関して研究熱心な俺は、その存在が気になって仕方がない。
彼女の存在がというよりも、その控えめな膨らみの先端で、たったいまも、密かに揺れて煌めいているに違いない、金属の存在が…。

#つづく #自伝 #実話に基づく #ガレージ小説 #虫けら艦隊 #再起動 #頭蓋骨とおしゃべり #ボディピアス #西荻窪最終出口

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?