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EP11 癒されざる者(2)

EP11 癒やされざる者(2)
ルーシーさん大丈夫⁈を試して俺が悟ったこと、それはただひとつだけだ。
要するに孤独とは、死に至る危険な病、ただそれだけだ。 
愛は原子力の代わりには決してならないし、人は死ぬまで孤独だ。
その孤独を振り払うつもりか何かで俺は女友達の何人かに電話した。
この時の会話が原因で現在に至るまで絶縁状態になってしまったくらい、見当外れで敵意剥き出しの呪いに満ちた言葉を気が済むまで一方的にまくし立てた。
それで仕方なく、男性経験が乏しく性的絶頂と尿意と便意の区別もつかないらしい10代の女子大生を電話で呼び出した。
相手が電車を2回も3回も乗り継いで来るまでの間にルーシーさん大丈夫⁈の効果もいつの間にか薄れ、平静を保てるようになった。
錆びたガスメーターボックスみたいに固く肉厚の膣をこじ開けるようにして、少しずつ角度を変えつつ互いの恥骨がぶつかり合うまで奥まで深く突き刺した瞬間またトイレに行きたいと本人が言い出した。
まるで形の良くない尻の割れ目に自分の精液が流れ落ちていくのを虚しく確認したあと俺はまだ終電がある時間帯だしもう帰れば、そう言って浮かない顔つきをしている相手をとっとと追い出した。
そういえば今さら褒めるのも癪だがあんたの昔の女だよは、思わず見惚れてしまうほど芸術的で見事な尻の形をしていた。
その後、常夏の島と中南米を経由して宗教も言語も肌の色も異なる連中に混ざって注射器にも手を出すようになり摩天楼の吐きだめでファックした皿洗いの白人で蛇かマザコンのように執念深い男との間にできた子供を産んで、精神病棟に隔離収容されたりもした。
離婚したあと俺の方からその報告も兼ねて、一度だけ電話したことがあった。
しかし互いに毒を塗った棘のように冷たくまったく噛み合わない言葉の応酬を無駄に長くしたのが最後で、今に至るまで音信不通になったままだ。
それは冬でも夏でもない季節の夜明けで、池のある公園のベンチにふたり肩を並べて歯歯歯を吸っていた。
やがて耐えがたいほど白痴じみた黄色い光の帯が雲の隙間に流れ始めて、空いっぱいに広がってゆくのを交わす言葉の必要もなく、ただ恍惚と眺めていた。
不幸でも平和でもなかったあのとき。
あのときのことを、いまでもふと思い出すことがある。
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