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個展に向けて④

個展をすると決まって早々に、バイト先の絵本美術館のアートディレクターさんが、揃いの額をいくつも貸してくれました。28年に渡り、たくさんの展示を手がけてきていらっしゃいます。作品を見ると、そこからアイデアが浮かんでくるその感性は、誰にも真似することができません。

切り絵の影を活かして展示ができたらと、前々から思っていました。とはいえ、形にするのは容易ではありません。それが今回、額のサイズと手持ちのマットと、色々な条件が重なり、簡単にできる方法を思いつきました。貸していただいた額があってこその作品です。

「この額が並んだらきれいですよ」「(個展をするにあたり)額があれば安心ですよね」と、さささっと、八切りの額を5枚、小全紙の額を5枚、貸して下さいました。もし、その額がなかったら、個展1カ月前の今頃、間違いなく途方に暮れていたと思います。

わかりやすくもある不思議な感覚ですが、それはしなくていい、それじゃないよ、それは嫌だという時は、ハートが一瞬でどんよりと曇ります。それそれ!という時、合っている時は、何も起きない。自分ではピンとこないけど、どうもこれらしい、というようなこともあり、そのことが、今回の額の第一印象でした。その感覚の最たるものが、結婚相手だったという話はまたそのうちに。

それはさておき、ここで大切なのは、嫌だと感じる自分を駄目だと思わなくてもいいということです。抵抗のエネルギーは、更なる抵抗しか生みません。そこを打破していくやり方は、今、とても難しくなっているように思います。楽で心地よくて気持ちいい道は、いつも合ってる。シンプルだけど、ほんとうのことです。

それはそうと、この画像の作品ができてから、現在進行中のDMハガキに使う画像と、タイトルも変えようかと思いました。この画像を使うなら、個展タイトルは『生ききる』。けれど、ちょっと重いかなと思って、アートディレクターさんに相談してみました。初めに必ず肯定してくれます。それから少し経って、溢れる一言に、それだ!と、希望の光を感じることがよくあります。

今回は、どちらの案もいいですねと言って、それからしばらく経って原画をスキャンして、出力された紙を眺めながら「黒は、デザインが難しいんですけどね」と呟きました。それでわたしのハートはピコンと反応して、この作品をDMハガキにすることはなし、ということがわかりました。

生きると死ぬは必ずセットで、生きたいと死にたいも同じ。シーソーのように揺れ、いつまで経っても定まることなく、希望すら見えず、死んだように生きるのか、はたまた、死にたくないと思うが故に、生きられないという想いも同時に作り続けるのか、本当に死んでしまうのか。それら、生死に関わる全ての恐れ、両極を行ったり来たりすることの終わり、揺れを打破する為の、中心から垂直への移行、そこへ向かうための決意としての言葉として浮かんだ『生ききる』という個展タイトル。

けれどまぁそれは、誰かに強く提示するようなものでもなく、わたしの胸の内だけでわかっていればいいことだなと自分自身でも納得がいきました。「黒はデザインが」という一言がなかったら、うっかり『生ききる』が個展タイトルになり、全く違う展示になったかもしれません。

こんな風に、ゴトゴトと、あらゆるものをまぜこぜにしながら、制作は進んでいきます。わたしが描いているけれど、わたしの考えを離れたところからありとあらゆる手立てを使い、創造がなされていきます。みえないところで、あらゆる存在と共に創っている世界。

ひとつひとつ、形になるのが、とっても楽しみです。



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