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三月大歌舞伎 第三部

夜の歌舞伎座は1月以来でしょうか。
改めて美しいなぁと眺めました。

第三部の終演は20:55です。久しぶりに21時に届こうかという深い時間。以前はこの時間が当たり前だったのに、私には猿之助さんの公演でなければ少し気持ち的に足が遠のく時間になってしまいました。海老蔵さんの公演で夜の部が22時超えなんてありましたね。今では考えられません(笑)

一つ目の「輝虎配膳」はがっつり時代物を観た満足感でいっぱいです。観始めて記憶がよみがえってきました。歌舞伎座ではあまりかからない演目。唯一、2014年納涼歌舞伎で拝見していました。主要な女方メンバーが萬次郎さん、扇雀さん、児太郎さん。。というめちゃめちゃ強そうな三人でした(笑)

「信州川中島合戦」というお話の一場面です。歌舞伎ではこの’輝虎配膳’しか上演されないそう。輝虎は上杉謙信のこと。敵である武田信玄の軍師、山本勘助を引き抜こうと頑張る輝虎のお話。勘助は登場せず、勘助の母、越路(魁春さん)、妻のお勝(雀右衛門さん)、妹の唐衣(孝太郎さん)が登場します。

輝虎が越路とお勝を接待しようと呼び寄せます。勘助の妹、唐衣は輝虎側に嫁いでいるので、会いたがっていると理由をつけて呼ぶのです。

越路は、歌舞伎の「三婆」の一人。老女役の大役です。魁春さんの白髪のお姿は美しく凛としていました。輝虎が自ら運んでくれたお膳をひっくり返す婆なのです!覚悟がかっこいい。輝虎が怒っても負けない。魁春さんのそのようなお役は私は新鮮で楽しかったです。

雀右衛門さんのお勝は言葉が不自由ながらも、姑のためにお琴の演奏で気持ちを伝えるのが心打たれました。姑想いの優しい嫁でした。

越路は助かり、ラストは女方二人で花道の引っ込み。嫁に助けられても何だか素直になれない感じなのか、やはり恐ろしかったのか。。でも最後はグッと強い感じで引っ込むの魁春さんが素敵でした。お勝の雀右衛門さんのホッとした感じは可愛らしかった。

そんな二人と孝太郎さんの女方三人の品あるお姿が眼福でした。輝虎の芝翫さん、家老の直江は幸四郎さん。立役の方よりも女方が主役のような、何だか晴れ晴れする一幕でした。

ざっくりとでも背景を知って観たほうが楽しめる演目かと思います。

二つ目「石川五右衛門」はリラックスして楽しめました。
五右衛門の幸四郎さんは楽しそうでした(笑)拝見するのは染五郎時代と二回目、11年ぶり。その時、吉右衛門さんに教わったそうです。現在の歌舞伎座は短縮バージョンは当たり前になっていますので、記憶は曖昧ですけど、いいとこどりな構成なのだと思います。

此下久吉(秀吉)と昔、泥棒仲間だった。。という設定が可笑しくて、錦之助さんと懐かしく語り合うあの体勢は何ですか!寝転がって頬杖ついて(笑)お茶目ではないですかー!可愛らしくてツボでした。

葛籠抜けの宙乗りの話は前の記事で。これは第一部の猿之助さんの宙乗りと比べてほしいです。葛籠の仕掛けはどうなっているのだろうと今でもわからないです。面白い。

ラストは南禅寺山門の場。五右衛門のセリフ「絶景かな、絶景かな」はいつ聞いても気持ちいい。歌舞伎座の客席の景色を見て言ってくれてるのかと錯覚するほど気分がいい。おおらかさ、ダイナミックさ。幸四郎さんはどんどん五右衛門級になっていく。

また吉右衛門さんでも観たいなぁとふと思う。この山門の場面は吉右衛門さんと幸四郎さんが最後に共演した場面です。そう思うとこみ上げてくるものがありました。

ちなみに、澤瀉屋の話をさせていただくと、私がお芝居をしている猿翁さんを拝見したのが襲名披露公演のこの場面でした。だから思い出深い。五右衛門は海老蔵さんで、猿翁さんの久吉。

そういえば、五右衛門物で一番拝見しているのは海老蔵さんかもしれません。ものすごいスペクタクルだったな。

いつか幸四郎さんの五右衛門、猿之助さんの久吉で観てみたいです。

理屈抜きに面白い。宙乗りの後に幕間は無く、大薩摩の後に山門の五右衛門の拵えでセリ上がってくる幸四郎さんに拍手!かなり走ってますよね。楽しませたい!という気持ちがバンバン伝わる五右衛門でした。

18:30開演なので、お仕事帰りに間に合う方は是非。

aya

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