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「霊長類最速の生物」と「ウマ娘」ってどっちが速いの?@映画館

映画館に行こう

比較的忙しい日だったと思う。

単発記事の編集が重なっていたり、同僚のタスクを受け継ぐための準備に追われるうちに、だんだんと余裕がなくなっていった。

普段、こういう忙しい日は早めに上がって熱めのお湯に浸かってからゆっくり寝るのがセオリーだったが、その日は数日前にTwitter(現:X)で見た「積極的休養」という文字を思い出した。

効果のほどは定かではないが、どうやらこういう日はちょっとアクティブになった方が、かえって休養として機能するらしい。

何をしようか考えた僕は、かねてから気になっていた映画の存在を思い出した。決まりだ。映画を、『ウマ娘』を見に行こう。

そうと決まったら善は急げ。仕事をちょっと早めに切り上げた僕は、n分かけてちょっと遠めの映画館へと足を運んだ。

僕は普段、あまり映画に行く方じゃない。知っているドラマの映画版も好きなアニメの映画化も、ふーん映画になったのか、どれ余裕があったら見にいってやろうとだけ思って結局は見ずに終わるタイプだ。

今回わざわざ『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』を見に行こうと思ったのには2つ理由があって、ひとつは映画のメインキャラの一人であるマンハッタンカフェを最近推していること(これは下の記事でもちょっと触れている)

もうひとつは、最近SNSでオタクの方々が謎ワード「オッチャホイ」を連呼しており、それがどうやら『ウマ娘』の映画に出てくる謎の物体らしいという話を聞きつけたことである。

謎の物体「オッチャホイ」、とても気になる。

その真相を暴くため、我々は映画館へと向かった……

脳内に突如現れた「ヤツ」

自発的に映画館に行くのはかれこれ10年以上ぶりな気がする。

あの頃と比べると発券機も様変わりしており、人力じゃなくてタッチパネルになっていた。お金も自動清算だった。

お小遣いの少なかった子供の頃には、本来禁止されていたペットボトル飲料やお菓子をこっそり映画館に持ち込んだものだが、幸いなことに大人になった僕にはそこそこの蓄えがあり、やや割高な映画館のフード&ドリンクもホイホイ買うことができる。

スプライトのMサイズにポップコーンでフル装備して気分は王様。心の中にたくさんの従者を引き連れた僕は受付でもらった入場特典を手に、意気揚々と上映会場へと向かったのである。

平日の深夜ということもあり、会場はほぼ無人に近く、なんと僕を含めて2人しかいなかった。(どんだけ過疎ってんだ)

調べればわかるので書いてしまうが、気になっていた「オッチャホイ」は新潟県に伝わる東南アジア風の麺料理らしい。
気になっていたものの正体も分かったし、シリーズ恒例のメインキャストによる『うまぴょい伝説』もちゃんと聴けた。満足だった。

しかし、ひとつだけ気になってたまらなかったのが劇中のあるセリフであった。

詳細は映画の内容に触れてしまうので省くが、主人公・ジャングルポケットのトレーナーであるタナベ(愛称ナベさん)のセリフにこんな感じのものがあった。

……ウマ娘の走る速度は最高で時速70kmにも達する。

『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』のセリフを石田が記憶から掘り起こしたやつ

このウマ娘の最高速度のくだりで、僕の頭には「ヤツ」の顔が思い浮かんでしまったのだ。

それは……


Photo by David J. Stang, CC BY-SA 4.0 ,via Wikimedia Commons(画像を一部切り抜き)

霊長類の誇り、パタスモンキーです。

パタスモンキーはアフリカのサバンナに生息する体長約70cmほどのサルの仲間で、木の上に生息しがちなサルの中にあって、短い指と長い四肢を活かして地上で生活する変わった種。

その特徴は、なんといっても走る速さ

ヤツらは天敵のチーターなどから身を守るため、地上を猛スピードで疾走することができるのだ。

その速度は霊長類で最速。桐生祥秀はおろか、ウサイン・ボルトすら遥かに超える速度で走るその姿は、まさに「霊長類の誇り」だ。

通常の人間はあまりこの生き物を知らないが、YouTubeチャンネル「オールマイティ・ラボ」の動画のなかで何度も「みなさんお馴染みの」とか「我々が愛してやまない」とか説明されたせいで、一部界隈の中でとんでもない知名度を誇っている。

ウマ娘の最高速度を聞いた時、僕の脳内では映画そっちのけでアグネスタキオン(ウマ娘)とパタスモンキー(我々の愛してやまない霊長類の誇り)が壮絶なデットヒートを繰り広げだした

ヤツらはもう止まらない。野を駆け山を走り、果ては僕の神経細胞やらグリア細胞を蹂躙し、全くもって映画を見る気分じゃなくしてしまったのだ。

早くこの脳内レースを終えて映画に集中させて欲しいものだが、ここで問題が発生した。僕がパタスモンキーの最高速度を覚えていなかったのだ。

これは困った。どちらが速いか分からなければ、脳内でパタスとアグネスが戦い続けてしまう。しかし、観客2人とはいえ映画の上映中にスマホで調べるのも気が引ける。

結局最後の『うまぴょい伝説』を聴き終わるまで、パタスは僕の頭の中を走り続けた。

ーーー

映画が終わってすぐ、僕はパタスモンキーの最高速度を調べた。

ヤツの最高速度は時速55km。ウマ娘には到底及ばない。

思えば、オールマイティ・ラボの動画の中でも「パタスモンキー如きがチーター相手に勝てるわけがない。結局はそのまま潔く連れて行かれてしまう。」と述べられていた気がする。

哀れなり、パタスモンキー。

仮に『ウマ娘』の世界でどれだけ努力して皐月賞に挑戦しても、ウイニングライブでセンターを張ることはできず、「パタぴょい」することもできない。

創作の世界では「霊長類最速」の称号を奪われ、現実世界では天敵であるチーターに負けて連れて行かれる……

それが、二度と帰らぬ生き物、パタスモンキーなのである。


サムネイル画像:Photo by David J. Stang, CC BY-SA 4.0 ,via Wikimedia Commons(画像を一部切り抜き)

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