「麻雀とクイズの違い」の話〜余はいかにして元麻雀プロとなりしか
こんばんは、泣く子も眠る深夜2時にnoteを更新する文章の怪物、石田武蔵です。
実は僕、ちょっと前までRMUというプロ団体で麻雀プロをしていました。
大会運営に携わったりとか、先輩と麻雀の話をしたりとか、麻雀×クイズのイベントごとで運営プロやったりとか結構活動はしていたし、オンライン麻雀もそこそこ打っていました。
思えば、1日のうち半分くらいはずっと麻雀のことを考えていました。そこまで好きだとやっぱりそこそこ腕も立つわけで、オンラインの成績も結構よかった気がします。何より、麻雀競技について「しっかりとした考え」を持っていました。
さて、そんな自分ですが、2023年9月に所属していた麻雀団体を辞めること
になりました。
今回は、なぜ僕が麻雀プロ団体に入って、そして1年足らずで脱退したのかというお話をしたいと思います。
注意:本記事は麻雀プロ団体や麻雀という競技について悪し様に罵る文章ではなく、むしろ僕は麻雀が好きであって、今後麻雀プロを目指したいという人間については積極的に応援したいと考えている、ということを留意して読んでください。また、僕は麻雀の「限られた手の中で周囲を見て最善手を選択する」という競技性をかなり好ましく見ています。
RMU入会
さて、僕が麻雀プロを志した理由としては、「なんとなく」が占める部分がかなり大きいです。
無理やり言語化するならば、当時何者でもなかった僕が「好きなこと」で「何か」になりたかったから。一応、当時は「麻雀で最強になりたかった」という、崇高な目的もあったような気もします。
ちなみに、数ある団体の中でRMUを選んだのは「テスト日程が近かったから」です。
さて、テスト当日に行われたのはペーパーテスト。「点数計算」と「何切る問題(理由まで回答)」の2部に分かれていました。「何切る」というのは簡単に言うと、「自分が持っている手牌から、最も状況に即しており、得な選択をする」というもの。
問題の複雑さとしては当然後者の方が難しいんですが、僕はなぜか「何切る」の方が点数が高かったらしいです。なんなら面接で「君……なんか点数計算よりも何切るの方ができているねぇ……うん。うん?」みたいなことを言われました。
まさかの2日前に『ウザク式何切る(赤)』をパラパラ読んだ成果がここで出ました。なんなら、一番難しいであろう最後のページの問題は理由も含めて全部あってました(ちゃんとテストを返してもらったわけではないんですが、チラッと見たところでかい丸が書いてあるだけだったので)。
面接での反応的にも、全体でもかなり良い方だったんじゃないかな……。知らんけど。
でも僕は好きなものには一直線になれるタイプ(そして、脇目も降らずに突進して物壊すタイプ)なので、多分そんなもんです。
以降は、これまでにも増して雀魂やらに熱を入れて打っていたんですが、だんだんと「プロとして団体に所属して麻雀を打つ」ということについて思うところが出てきました。
そして、ついに来たる決別の日。
特に何かやらかしたわけじゃなく、理由も細々としたものがたくさんあったりはするんですが、大きく分けると①麻雀という競技の「最強」に対して思うこと②QuizKnockに入ったことという、2つの理由があります。
辞めた理由①:麻雀という競技に対して〜「最強ってなんだろう」
勘違いしないで欲しいんですが、僕は未だに麻雀自体はかなり好きです。
ただ、麻雀という競技は良くも悪くも実力以外に左右される部分も多く、そのために表向きの実力が測りにくいという欠点があります。
(ちなみに、運要素が大きいと新規参入のハードルが下がるという良い点もありますし、ポーカーとかは運要素が大きいながら、競技としてかなり大きいものとなっています)
ちょっと話はそれますが、麻雀と近い界隈で実力がものをいいやすい競技であるのがクイズや将棋なんかで、そういった競技には「強者」と言われる人々が生まれます。基本的に大きなクイズ大会で上位にいるのは同じような顔ぶれですし(※偏見が含まれます)、将棋には藤井聡太さんや羽生善治さんという時代を代表するような猛者が生まれています。GeoGuessrなんかもそうですかね。
それに対して、麻雀にもやはり「強者」は存在します(サクラナイツの堀さんとかドリブンズの渡辺太さんとか、めっちゃ強いですよね)が、両者では外部から見たときの「強い」の性質が異なっている気がします。
要するに「猛者たる所以」が見えづらいのです。
「猛者」の代表とされるMリーガーを例にとっても、確かに「超絶強い人(麻雀についてのしっかりとした知識があり、そこに加えて状況を冷静に見定め深く洞察し、常にベストな選択ができる人)」がいるのはなんとなく見て取れるんですが、例えばめっちゃ勝っている人がそういう超強い人かと言われると実はよくわからず、ぶっちゃけ、実力自体は普通なんだけど毎回超絶上振れを引いているだけの可能性が捨てきれないわけです。(毎回天和や地和出しても勝ちは勝ち)
逆に前述のような「猛者」だとわかる人が成績的に振るわず、後ろ指を刺されながらMリーグの舞台を去っていく様子を、画面越しにたくさん見てきました。麻雀、特に大舞台で成果を出すというのは、それだけ難しいということです。
このような運要素の高いゲームについて、実力を測るためには「とにかく試行回数をこなす」ことが重要とされており、少なくとも数百半壮はこなさないとしっかりとしたデータが出てこないとされます。(この辺りは、麻雀の戦術をデータで見る本などがたくさんありますので、その辺りを見ていただければと思います。)
しかし、それだけ打ってもごく僅かながら「打った局全てで超絶上振れている」可能性は残りますし、なんなら普通に麻雀頑張っている人はそれだけ打つ間に実力が伸びるに決まっているので、なかなかしっかりと実力を測ることは難しいと感じています。
最近の代表的なネット麻雀である『雀魂』においても、玉の間(上から2番目の部屋)でしっかりとした実力が証明されるくらいまで打つ人間はそこまで上手くない(うまい人はそこまで打つ前に王座の間に行ってしまう)という、一種のパラドキシカルな現象があるらしいと聞きます。
また、ある局面や問題についてしっかりと話し合うことで麻雀についての理解や実力の程を測ることもできなくはないのですが、それには付き合う側にもしっかりとした麻雀についての理解が必要となりますし、それで読み取れるのは、例えば「何切るを解くことでわかる手牌の構築能力」とかの一部要素だけ(だと勝手に思っている)。
普遍的に、同じ物差しで「現在の麻雀の実力」を数値化することは、なかなか難しいような気がします。
正直なところ、普通に麻雀打っていた僕くらいの人間には、「麻雀の強さ」がどのようなところに宿るのかわかりませんでした。
それはちょうど、「心はどこに宿るのか?」という哲学の難問に似ているような気がします。脳か心臓か、はたまた……。
このような「実力の数値化のしにくさ」は、「強者」を決める際などにどうしても足を引っ張ると思いますし、何より僕から「麻雀を極める気持ち」を奪い去っていきました。
いろんなことを言ってきたんですが、結局は最強というものがどういうものなのか、全くもってわからなくなってしまったんですね。「最強」の答えを見つけるのが先か、死ぬのが先か。そういうレベルの話だと思います。
判断力とかゲーム性の理解とか清一色多面待ち覚えるとか、「最強」目指してできることはたくさんあるんですが、例えばそれを世界一理解している人間がいたとして、それでもその人が「対戦相手に必ず役満ツモられる世界一運のない人」だとしたら、それは「最強」と呼べるのでしょうか。
僕はそれがたまらなく怖い。
そして、それに気づいた途端、当たり前ながら、負けても「運がなかった」と言い訳をすることができることに気づいてしまいました。
僕は好きなことには一生懸命取り組んで、なんなら周りのものを突進で壊すタイプと前述しましたが、迷っている中ではそんな勢いが出るはずもありません。完全に止まってしまいました。
最強とか関係なく麻雀ができるならばそれは幸せだし、競技者の中には「答えが見えている」人もいるんだとは思いますが、結局僕はそうなれなかったというお話です。
辞めた理由②:QKに入った
麻雀プロを辞めるにあたって、実はQK入社も結構大きかった出来事。
僕が麻雀プロに入った理由のひとつに「何者かになりたかった」というものがありました。でも今は麻雀プロであることにアイデンティティも求めずとも、「QuizKnockのマダガスカルお嬢様」という訳のわからない、おそらく世界にただひとつの称号を持っています。
正直に言えば、QKのメンバーとして過ごす日常はかけがえのない物だと思いますし、編集部の活動に集中したかったというのも大きいです。
以上の理由から、今後麻雀プロ団体に戻ることはほぼないと思います。今後現実的に麻雀と関わるなら、魂天目指したり、配信初めたり(QKやっているうちは無理かな)くらいかな、と思います。
最近、TQCの先輩で元QKの林輝幸氏が最高位戦に入会(と同時期に魂天到達)、同じくTQCの先輩兼元QKのこうちゃんが連盟に入会しました(すげー!!)。
これで須貝さんが日本プロ麻雀協会とかに入ったら、プロ麻雀の世界にQK戦国時代を現出するため、RMUに復帰するかμ麻雀競技団体にでも入りましょうかね。そんな未来、きっとないけど。
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