大学卒業とともに②
泥のように眠り、目が覚めたのは19時頃であったろうか。
普段ならば貴重な1日を無駄にしてしまった!と後悔に苛まれるような起床時間であったが、この日ばかりは心が晴れ晴れしていた。なんせ今日から俺は公私共に男性なのである!!!
大学4年次からホルモン注射は開始していたし、元々声も低く、身長・体格もそこそこであったので「男?女?どっち?」となられることは無い状態ではあったものの、別世界が広がっているように感じていた。
来月からは男として学校に通うんだ。
合格発表後に学校へ出向き、男子学生として通学させてもらうことの許可を取っていた。「取っていた」と記してはいるが、私自身の解釈では本来であればこんなことは言う必要もなく、ましてや許しを請う必要など一切無いわけなのだが…
まぁ何はともあれ本来のあるべき姿としての生活をようやく手に入れられることで、やっと本当の人生が始まるのだ。
大学院は大学とは別の学校を受験したため、学内に友人・知人は一人もいない。
俺の人生はここから始まる…
自然と口角が上がるのを感じながら吸った煙草は普段より格段に美味く、全身に染み渡るような感覚があった。いつもより深く吸い込む赤マルはあっという間にその役目を終え、灰皿に積み上げられていった。
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