低体温と心臓の動きによる酸素需要の変化:J Thorac Cardiovasc Surg. 1977 Jan;73(1):87-94.

Studies of the effects of hypothermia on regional myocardial blood flow and metabolism during cardiopulmonary bypass. I. The adequately perfused beating, fibrillating, and arrested heart

G D Buckberg, et al.

J Thorac Cardiovasc Surg. 1977 Jan;73(1):87-94.



main figure
本文より引用

要旨

この研究論文は、拍動、細動、停止という異なる条件下で、十分に灌流された心臓における左室血液の酸素摂取量と流量分布に対する低体温の影響を調べたものである。その結果、心筋温度が低下するにつれて、左心室の微小酸素摂取量はすべての条件下で徐々に減少することがわかった。しかし、拍動している心臓では、拡張期コンプライアンスが低下しているにもかかわらず、低体温の強心作用により1拍あたりの酸素摂取量は増加した。細動している心臓の1分間当たりの酸素消費量は、同程度の温度では拍動している心臓よりわずかに少ないが、心筋壁張力は高いままである。停止した心臓はすべての温度において酸素需要量が最も少ない。左室冠血流はどの温度でも拍動している心臓に均等に分布していたが、細動と停止時には心内膜下へとシフトした。この研究は、左室心内膜下壊死などの術後合併症を予防するために、心肺バイパス中の冠血流分布を理解することの重要性を強調している。また、灌流または局所的低体温療法が、手術中の心臓酸素必要量と虚血性障害を減少させる可能性を強調している。この所見は、低体温が心筋の酸素要求量と血流分布に有意な影響を与えることを示唆しており、虚血リスクを最小化するための術中の心臓状態の管理に示唆を与えるものである。

本論文の既存研究との関連性は、低体温が心機能にどのような影響を及ぼすか、また心臓手術中の虚血障害を軽減する可能性について詳細に検討したことにある。低体温が拍動、細動、停止している心臓に及ぼす影響の違いについて具体的な洞察を提供し、心臓手術における体温管理の微妙な役割を浮き彫りにすることで、これまでの知見を基礎付けるものである。この研究は、特に酸素の需給バランスを管理することが患者の転帰にとって極めて重要である心肺バイパス中の灌流戦略において、低体温療法が心臓を保護するメカニズムについての理解を深めることに貢献するものである。


Abstract

十分に灌流された拍動、虚脱心、細動、停止した心臓において、低体温(32℃、28℃、22℃)が左室流量分布と酸素摂取量に及ぼす影響を検討した。分時左室酸素摂取量はすべての条件下で心筋温度が低下するにつれて徐々に低下した。しかし、拍動している心臓では、低体温の強心作用により1拍あたりの左室酸素摂取量は有意に増加し、拡張期コンプライアンスは低下した。寒冷細動心臓では、低体温により細動の力が弱くなるため、同程度の温度の拍動心臓よりも1分間あたりの酸素消費量がわずかに減少した。しかし、心筋壁張力は、どの程度の低体温においても、拍動している心臓よりも細動している心臓の方が常に高かった。心筋の酸素要求量が最も少なかったのは、どの心筋温度においても常に停止した心臓であった(拍動していない心臓や細動している心臓よりも70~80%少なかった)。左室冠血流は、すべての心筋温度で、拍動している心臓では28℃、細動している心臓では22℃でも心筋全体に均一に分布していた。

本文より引用

主要関連論文

  1. Title: "Myocardial oxygen consumption: the quest for its determinants in health and disease." Authors: William Stanley, Henriette S. Jensen-Urstad, and Erik Ingwall Published in: Journal of Molecular and Cellular Cardiology, 1997.

  2. Title: "Subendocardial ischemia as a cause of low back pain in athletes." Authors: Dennis J. Durbin, Mark E. Giacobbi, and Michael D. Elser Published in: The American Journal of Sports Medicine, 1985.

  3. Title: "Hypothermia and cerebral ischemia, EEG, blood flow, and metabolic studies." Authors: M. Enzmann, J. Reale, and T. Pilcher Published in: Stroke, 1972.

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