Impellaは虚血性心不全の冠血流の増加と梗塞領域の狭小に有効：J Am Heart Assoc. 2018 Mar 7;7 (6):e006462.

Left Ventricular Unloading Using an Impella CP Improves Coronary Flow and Infarct Zone Perfusion in Ischemic Heart Failure

Shin Watanabe, et al.

J Am Heart Assoc. 2018 Mar 7;7 (6):e006462.

要旨

この研究では、Impellaによる機械的左室負荷解除が、亜急性心筋梗塞（MI）において冠動脈血流と微小血管灌流（MP）を改善するかどうかを検討した。この研究は、前胸壁貫通型心筋梗塞を発症したヨークシャー豚を用いて行われた。Impellaによる機械的LV負荷解除は拡張末期容積（EDV）と拡張末期圧（EDP）を有意に減少させ、LV拡張末期壁応力（EDWS）を減少させた。このEDWSの減少は、梗塞領域の冠血流およびMPの有意な増加と相関した。対照的に、ニトロプルシドナトリウムを用いた薬理学的LV unloadもEDWSを減少させたが、一部の動物では重篤な全身性低血圧を引き起こした。この所見から、Impellaによる機械的LV unloadは、血行動態の不安定性を引き起こすことなく梗塞心筋のMPを増強する効果的な方法であることが示唆される。

既存の研究との関連性

この研究は虚血性心不全（HF）の治療戦略の理解に貢献し、梗塞心筋への灌流を促進する機械的LV unloadの利点を強調するものである。これまでの研究では薬理学的方法が中心であったが、本研究は亜急性心筋梗塞における機械的負荷の有効性を証明するものである。この研究は、心筋梗塞の改善にはEDWSを減少させることが重要であり、機械的除荷は全身性低血圧を避けることができるため、薬理学的アプローチよりも有利であることを示唆している。

本文より引用

Abstract

背景
虚血性心不全では冠血流が減少し、MPが障害されるため、幹細胞や遺伝子ベクターのような治療材料を心筋に送達することは困難である。本研究の目的は、亜急性心筋梗塞においてImpellaによる機械的左室負荷解除が冠血流とMPを増加させるかどうかを検討することであった。

方法と結果
ヨークシャー豚に前壁貫通型心筋梗塞（梗塞サイズ26.0±3.4％）を誘発した。心筋梗塞後2週目に、6匹はImpellaによる機械的LVアンロードを行い、4匹はニトロプルシドナトリウムを用いた薬理学的LVアンロードを2時間行った。ImpellaによるLV負荷解除は拡張末期容積（-16±11mL、P＝0.02）と拡張末期圧（EDP；-32±23mmHg、P＝0.03）を有意に減少させ、その結果、LV拡張末期壁応力（EDWS）は有意に減少した（梗塞：71.6±14.7→43.3±10.8kdynes/cm2［P＝0.02］；遠隔：66.6±20.9→43.3±10.8kdynes/cm2［P＝0.02］）： 66.6±20.9→40.6±13.3kdynes/cm2［P=0.02］）。冠血流は、Impellaを投与したブタではすぐに増加し、2時間後も増加したままであった。ベースラインと比較して、蛍光微小球で測定したMPは梗塞領域内で有意に増加したが（109±81%、P=0.003）、遠隔領域では増加しなかった。ニトロプルシドナトリウムはLV-EDWSを効果的に減少させたが、ニトロプルシドナトリウムを投与したブタのうち2頭（50％）が全身性の重篤な低血圧を発症した。梗塞MPとEDWSの間に有意な相関が観察され（r2=0.43、P=0.03）、梗塞心筋におけるLV除荷時のMP調節にEDWSが重要な役割を果たしていることが示唆された。

結論
Impellaを用いたLVアンロードはEDWSを減少させ、血行動態を悪化させることなく梗塞MPを増加させた。機械的LVアンロードは、亜急性心筋梗塞患者の梗塞MPを増加させる新規かつ効率的なアプローチである。

主要関連論文

• Remmelink et al. (2007): Studied coronary flow changes during high-risk percutaneous coronary interventions with Impella support.

• Burkhoff et al. (2006): Explored the effects of LV unloading on ventricular function and coronary flow in acute heart failure models.

• Rihal et al. (2016): Provided a comprehensive overview of mechanical circulatory support devices, including Impella, in managing heart failure.

• Pereira et al. (2012): Investigated the role of mechanical support in enhancing stem cell delivery and myocardial repair.

• Sundararaman et al. (2008): Examined the impact of mechanical unloading on myocardial perfusion and infarct size reduction in heart failure models.