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PAPiの右心機能評価への有用性:J Clin Med. 2022 Feb 23;11(5):1206.

Pulmonary Artery Pulsatility Index and Hemolysis during Impella- Incorporated Mechanical Circulatory Support

Makiko Nakamura, et al.

J Clin Med. 2022 Feb 23;11(5):1206.


要旨

本研究では、Impella機械的循環支持中の溶血に対する肺動脈拍動度指数(PAPi)の影響を検討した。42例のレトロスペクティブデータを用いて、Impella挿入直後のPAPi値が1.3未満であることが溶血の発生と有意に相関することが明らかになった。この研究は、右室機能障害を示唆するPAPiが低い患者は溶血のリスクが高いことを強調している。推奨される臨床戦略としては、溶血のリスクを軽減するために、PAPiの注意深いモニタリング、デバイスの位置、前負荷管理などが挙げられる。

既存研究との関連
本研究で得られた知見は、機械的循環補助中の血行動態管理に関する知識の蓄積に寄与するものである。先行研究は同様に溶血をImpella使用における重大な合併症として同定し、溶血に影響するさまざまな機械的および血行力学的因子を指摘してきた。本研究は、PAPiと溶血リスクを定量的に関連付けることにより、より効果的な臨床的介入とモニタリングプロトコルを導き、Impella支持中の患者の安全性を高めるものである。


What is PAPi?

PAPi = 肺動脈の脈圧 / 平均右房圧
≒ (SV / PA compliance) / mean RAP
≒ CO / (HR x PA compliance x mean RAP)
→PAPiはCO/RAPに相関する
 X軸に右房圧、Y軸に血流量なので、循環平衡における静脈灌流曲線と相関する
→PAPiは右心機能を見る指標として妥当と言える。

Abstract

背景
インペラは経皮的経カテーテル左室補助循環装置である。デバイスに関連した溶血は重篤な合併症であり、デバイスの位置、デバイスの速度、補助時間などに依存して発生することがある。しかし、溶血の発生に及ぼす血行動態の影響については不明な点が多い。本研究では、Impellaを組み込んだ機械的循環補助中の血行動態、特に右室機能と溶血の発生との関係を明らかにすることを目的とした。

方法
2018年3月から2021年7月までに当院でImpella(2.5、CP、5.0)支持を受けた連続患者をレトロスペクティブに対象とした。Impella挿入直後の肺動脈拍動指数(PAPi)と溶血の発生との関係を検討した。

結果
42例(中央値71歳、男性60%)が組み入れられた。溶血は20例(48%)に発生した。溶血を予測するPAPiのカットオフ値は1.3と算出され、感度80.0%、特異度72.7%であった。PAPiの低値(<1.3)は溶血の発生と有意に相関し、オッズ比は11.65(95%信頼区間1.58-85.98、p = 0.017)であった(他の潜在的交絡因子で調整)。生存退院率はPAPiが低い(<1.3)患者で有意に低かった(50% vs 86%、p = 0.019)。

結論
本研究の結果から、Impellaを組み込んだ機械的循環補助の開始後、PAPiの低下によって示される右室機能障害を有する患者は溶血のリスクが高いことが示唆された。


主要関連論文

  1. O'Neill, William W., et al. "A prospective, randomized clinical trial of hemodynamic support with Impella 2.5 versus intra-aortic balloon pump in patients undergoing high-risk percutaneous coronary intervention: the PROTECT II study." Circulation 126.14 (2012): 1717-1727.

  2. Kapur, Navin K., et al. "First-in-human experience with microaxial percutaneous left ventricular assist device." Journal of the American College of Cardiology 63.2 (2014): 175-180.

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