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古いラジカセから 聴こえてきてたような


 スピッツが毎年夏の終わりに開催するイベント『ロックロックこんにちは!』にHomecomingsが出演することになった。小学4年生の頃、風邪で学校を休んだ僕の枕元にお母さんが置いてくれた小さなラジカセと何本かのテープ。微熱でどこかぼんやりとしながら聴いた『RECYCLE』と『ハチミツ』『インディゴ地平線』『フェイクファー』という3枚のアルバムと1枚のベスト盤が僕の人生をそっくりそのまま変えてしまった。それまでPUFFYしかちゃんと聴いたことがなかった(今でもめちゃくちゃ大好きだ)僕のなかで「音楽」がいきなり「ポケモン」や「ロックマンエグゼ」や「星新一」や「お笑い」を抜いて一番好きなものになったのだ。それまで中を見たことがなかったお母さんの机の引き出しのなかからは、『Crispy!』と『ハヤブサ』のテープも出てきて、僕は毎日夢中で何度も何度もカセットをひっくり返してはスピッツの音楽にのめり込んでいった。家にあるカセットを聴き終わると、まだ見ぬアルバムをレンタルしてきてお母さんにテープにダビングしてもらった。その当時、一番新しいアルバムだった『三日月ロック』と『花鳥風月』が一番最初にレンタルしたアルバムだったはず。はじめてCDで聴くスピッツは音に迫力がありすぎてカルチャーショックだったけれど、『三日月ロック』はカセットで聴いてもちゃんと迫力があって、最新のスピッツはすごいんだ、と妙に感動してしまった。B面集の『花鳥風月』にはいろんな時代のスピッツの曲が入っていて、そのいびつさが無性に好きだった。「流れ星」「スピカ」「猫になりたい」「心の底から」「コスモス」に「野生のチューリップ」、『花鳥風月』にはやたらと思い入れがある曲がたくさん収録されていて、それはきっとお母さんが「野生のチューリップ」や「スピカ」を多分いちばん好きな曲かも、と言っていたことにも影響されているはずだ。「爆笑オンエアバトル」もセサミストリートも星新一のSFショートショートも「タンタンの冒険」も「12番目の天使」も全部お母さんが教えてくれたもので、この少しあとにスピッツ以外の音楽を聴くきっかけになるレミオロメンも家族旅行でいったUSJに当時あったHMVでお母さんが視聴して気に入ったことがきっかけだった。

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