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僕はずっと法を犯していた!?国税局での税金回収のお仕事

こんにちは。

今日は税金回収の仕事をしていた時の話。

国税局で滞納税金の回収を専門的にする国税徴収官(僕もコレでした。)や、県庁、市役所や町役場で県税や市町村税を回収している人や税理士さんくらいしかあまり目にすることはないであろう、『国税徴収法』という法律のお話。

法律の話なので、「難しそうだなぁ」と思う方も多いと思いますから、今回は手短に書きます。

国民の三大義務のうちの一つである、『【納税の義務】の適正かつ円滑な履行に資することを目的』の法律が国税徴収法です(国税徴収法第1条より抜粋)。

そんな責任重大な任務を遂行するため、この法律を根拠に、僕は国税局や地方自治体で滞納税金を回収する仕事をしていました。


さて、タイトルに書きました、「僕はずっと法を犯していた!?」というのが気になりますよね。(気になっていただかないと、ちょっと悲しいです笑)

ここで言う「法」とは、もちろん国税徴収法のこと。

『え、国税局の職員が、仕事で使っている法律を犯してたの!?』『それでこの人クビになったのか!?』

と思われた方がおられるかもしれませんが、違いますよ(笑)

では、どういうことかと言いますと、国税徴収法の中で最も恐ろしく、泣く子も黙る条文(←なおさん調べ)、【国税徴収法第47条】というのがあります。

では、どんな内容か実際に見てみましょう。

第47条第1項・・・次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない。


具体的にどんな時に差し押さえるの!?っていうことを次のように決めてます。↓

第47条第1項第1号・・・滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき

どういうことかをざっくり書きますと、

『税務署が督促状を送ってから10日以内に滞納者がその税金を完納しなかったら、税金を徴収する職員は、その滞納者の財産を差し押さえないといけない

ということなんです。

「差し押さえてもいいよ」とか「差し押さえができますよ」ではなく、「差し押さえなければならない」っていう、徴収職員の義務になってるんです。あ〜恐ろしや。

その仕事を実際にやっていた僕が言うのもおかしいですが、怖くないですか?

ところが、このように書かているものの、実際には、100%全て「督促から10日過ぎたらすぐ差押えしている」というわけではないんですよ。

滞納している方が10日以内に金融機関やコンビニで納税されても、その連絡が税務署や自治体に届くには遅ければ2週間くらいかかりますし、やはり『滞納者の財産を差し押さえる』というのは国民に対する国家権力の発動でもありますから、「督促から10日過ぎました、はい差し押さえ」と機械的にはほとんど行なっていない、というのが実情なんです。

『税金滞納』とひと言で言っても、”うっかり”の人もいれば、“悪質”な人もいるので、全て一律に法律どおりに差し押さえはしていないんですね。

ですから、この国税徴収法第47条第1項の決まりは、ほとんどの徴収職員が”あえて”犯している、というわけです。現実的な運用って感じですね。


ただし、「だから、督促状が来てもゆっくり対応しましょう。のんびり納めたらいいですよ」ということでもありません。

税金滞納を繰り返しているケースや、納められる財産があるのに高額滞納しているような、いわゆる悪質な滞納者には即刻差し押さえをすることも、もちろんありますよ。

悪質、という以外にもケースバイケースで一瞬で差し押さえに至るケースもあることを書き添えておきます。

ちょっと説教じみたな書き方にはなってしまいますが、

「税金の督促なんか届いても、すぐには差し押さえなんてしないだろう!」

「たった〇〇円の滞納だし、大丈夫大丈夫!」

などと思っていると、やりますよ!国税も地方自治体も。

昨年、アノ吉本芸人さんも、過去に銀行預金を差し押さえられていたことご判明しましたよね。

即刻差押えだったのか、タイミングまでは分かりませんが、高額滞納があり、一方で、高額預金も所有していながら自主的な納税がなされなかったために差押えに至ったことは容易に想像できます。

とは言え、今のこのコロナ禍で金銭的に苦しい方もおられるでしょうし、ご自身やご家族のご病気などで納税の余裕がない、という方もおられると思います。

ですから、税金の督促状が届いたり、届いていなくても「あの税金、期限過ぎちゃってるなぁ」と覚えのある方は、督促状や納税通知書の送り主である税務署や自治体に電話して、分割で納めたり、一定期間猶予してもらったりなどの納税相談に乗ってもらいましょう!

国税局でも自治体でも、職員は皆、血の通った人間です。鬼でもマシーンでもなんでもないので、相談のために連絡をくれた方には、丁寧に対応してくれるはずですよ。

元職員のポジショントーク、と思われるかもしれませんが、督促状や催促状を送って連絡をもらえないと、「税金を納めるつもりのない、通知を無視している悪質な滞納者」っていう風に、職員は判断する傾向にあります。

税務署や自治体単位でも、何万人、何十万人と滞納者の方が存在しているのが現状ですから、どうしても一律的な見方になってしまうんですよね。

一方で、ご連絡をいただけたら、「納税に前向きな人、誠実な人」という見方にもなりますし、お話しすることで初めて、滞納している理由であったり、納められない事情を知ることができるんですよね。

ということで、何かあったら、すぐに電話しましょうね!

書き始めた時に思っていた着地点と全く違う場所に行き着いてしまった本日の記事でした。

ではでは。

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