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後継者

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#事業売却

第13話 事業売却

2017年6月26日京都商工会議所ビル6階の京都府中小企業再生支援協議会の会議室にて、 13時00分からバンクミーティングはスタートした。 メインバンクの地銀、信金、メガバンク、政府系、そして保証協会までの幅広いラインナップが集まった前で、 1.祖業である着物製造卸業を他社に事業売却すること。 2.対価の考え方としてはクロージング時の売掛金-買掛金の差額と、売却対象となる在庫を一律に〇掛けという形でディスカウントした金額の合計とし、労働債務関係は交渉次第とすること。 3

第14話 特別清算

2018年7月24日久々に出社。事業の売却先が確定した後は、何がしかの用事がある時にしか出社しないことにしていた。 挨拶は交わすが、事業を売った人間は、社員にとってもう社長ではない。 4月16日の15時30分に全社員を集めて売却先が確定した旨を報告した際、私としては「決まった!」という達成感とある種の高揚感に包まれながら話をしたが、その瞬間、何とも言えない冷めた空気が流れ、自分がその会社の社長では無くなったことを悟った。 10時から顧問会計士事務所との特別清算に向けた

「後継者」のおわりに

2023年10月20日昔の話をするようになったら、人生終わりだと思っていた。 約40年前に市場規模のピークを迎えてから、一度たりともリバウンドすらせずに右肩下がってきた産業に飛び込んでからというもの、とにかく物量が多かった話、俺の武勇伝、どこそこが凄かった話などを酒の席でも昼間の商談でも聞かされ続けて、辟易していたのだ。 しかもほとんどの場合において、その成果はお前の力は全然関係無いだろ、たまたま業界が盛り上がっていた時にその場に居ただけじゃねぇか。とか、その時に主役とな