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これも数年前Twitterにざっくり書いた話だが、体験したのは先に書いた

おーいさん
https://note.com/murmur_noise/n/ne0715556ab1d

とほぼ同時期の、マップでモンスターを捕まえるゲームを同僚数名と夜中に大きな公園でやっていた時の話だ。文字規制が無いので詳細を含め改めて書いてみようと思う

       穴

今回の話には全く関係ないのだが、この公園は我が県内の心霊スポットとして有名な場所で過去には大きな犯罪の場所としても知られている。もし県民の同志が見たら「あーあの公園か」とわかってしまうだろう

夜中の公園というのはそこそこ人がいるもので、ゲームする人(私達)ランニングする人、ペットの散歩をする人、と様々で。すれ違う時はお互い不審人物じゃありませんよアピールなのか会釈や「こんばんは」と挨拶をする

その夜私は同僚男性3人とゲームをしていたのだが、若い人と違い途中で飽きと疲れでほぼベンチの主になっていた。目の前は球場、池、売店(勿論閉まっている)自販機などが見える公園の中心にあるベンチだ。私達はそこを集合場所として各々が別々にウロウロしていた

勿論私もレアが出たと聞けば重い腰を上げてゲットしようと動くのだが、大概が誰かが見付けたモンスター情報をかなり遅れて1人でその場所に向かってゲットする。動く時は1人行動になる


そんな夜中の公園で、1人スマホの画面を見つつ歩いていると。公園の池沿いの細道を前方から来る人の気配を感じた。そこは一応マナーとしてスマホから目を上げ、前を向いてすれ違う準備をする

公園の街灯(公園の中心)は私の背後にあったので、私からは丁度その灯りで相手が小型犬を連れた小柄な初老のご婦人だとシルエットで判断できたが、なにぶん夜の公園なのでハッキリと顔が見えるのは、すれ違う瞬間になる

小型犬は躾が良いのかご夫人の歩幅に合わせていて、とても静かに足音と落ち葉や枝を踏む音だけが聞こえる。吠える事も無く、影からはパピヨンかシーズーあたりかな?と徐々に近付く人影の足元を見ていた
夜中の公園ですれ違うのに顔をガン見しているのは失礼なのでギリキリまで「可愛いワンちゃんですね」という不審者じゃないアピールでもあり気まずさもあった

私達がすれ違った道は公園中央の街灯やベンチの多い、人もかなりいる中心の広場から伸びた池沿いの道で。その道を奥に進むと人影も灯りもほぼ無くなり、人の気配より池のカモやウシガエルの気配がしていたので夜でも汗ばむ季節だったとこれを書きながら思い出した

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最初に気が付いたのは、やはり気になっていた小型犬だった。近付いても散歩している犬の息遣いが全く聞こえないし、どうにも顔が見えない。影になっているとはいえ、その顔はまるで渦を巻いている(ハッキリと見えないがそう感じる)ぽっかりと夜中の公園でも異様さが際立つ真っ黒い穴が空いていた

本来ならあるであろう鼻や口、目。それが無い。ただただ穴にしか見えない。影なのに奥行きがある、中は何かが蠢いている気配がするのだがその蠢きは散歩でよく見るハッハッといった息遣いでは無い。無音だ

戸惑った私は飼い主であるリードを握る女性の顔を見ようとそのまま視線を上げた

その女性の顔も犬(なのかどうかもわからなくなっていたが)と同様に、まるで輪郭だけが人間型の縁どりのような大きな穴が空いていて、視線の高さが近いせいか犬よりその穴の中が良く見えた

背後の灯りに薄らと照らされた穴の奥はまるで髪の毛のような煙のような、黒くて細い何かが奥深くで蠢いていた。渦を巻いているような不規則のような、とにかく見ただけで鳥肌が立つ。一目で忌まわしい物だと思った

なような。ばかりの表現になるがとにかく今までに見た事のないものだったのだからどうにも説明が出来ない

暫く見入ってしまったが、その顔らしきものがこちらに向く瞬間慌てて視線を逸らす。危ないモノには気取られない。こういう界隈では当たり前だろう
私はスマホに目を落としその人とぶつからないように細心の注意を払いつつ少しだけ早足になってしまったが、何も見てませんよーアピールをしながら早くすれ違いたい気持ちでいっぱいだった

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わざとらしくならない様にモンスターの位置を確認する素振りですれ違った瞬間
女性の、その蠢く穴の中から

チチチ…チチ…ジジジ

という夏の殺虫灯のような不快な音が聞こえた。それはとてもくぐもっているのだが明らかにこちらに向いて聞こえる。遠くにも感じるし、耳元にも感じる。平衡感覚が狂ってしまいそうな不思議で不快な音で、今思い出しても気分が悪くなる

視線はスマホ画面だがどうにも気になった私が目の端で気付かれないように様子を伺うと、女性と犬はすれ違う瞬間から私の歩きと共に顔をこちらに向けて、見えない目でこちらを追っていた

まとわりつく様な不快な視線に私はサーっと血の気が引くと共に冷や汗がドッと吹き出るのを感じた。これを気取られないように、早くここから立ち去りたい。でもここで走り出したらダメだ…と
頭をフル回転させて最大限の聞こえてません、見えてません。をアピールしつつ女性から徐々に離れた

その後も背中にまとわりつく嫌な視線を感じたが、それも暫くすると消えて。そうっと振り向くと女性と犬は跡形もなく消えていた

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私はすぐに仲間達と合流したい気持ちを抑えて、わざとその道を進み大回りをしてから中心のベンチに戻った
仲間達はそろそろ帰ろうか、と集まっていて。私に対して「どこまで行ってんだよー」と待たされた不満を笑いながら口々に言ってきたのだが

私の様子がおかしい事に気がついたのか、見えない所で何かあったのでは無いかと心配してくれた

私は周囲を見回してから小声で、ここにあの(すれ違ったら)道から犬を連れた女性が来た?と聞いた。私があの辺ですれ違った人!!と言うと
私と入れ違いにベンチで休んでいた子が

〇〇さん(私)が歩いて行くのはずっと見えてたけど、すれ違うも何もずっと1人だったじゃん

そう言って私が怯えているのは暗がりが怖かったのかと笑っていた。それ以来私は昼でもその池沿いの道は絶対歩かないようになった

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どうでも良い私の見解を最後に書かせて頂く、怪奇小話を書くようになってから、同好の士の話もよく読むようになったのだが、まさかの顔に穴が開いている。という話は地域に関わらず結構ある事のようで

それは共通の同じ怪異なのではないか?と似たような方の話を読む度に思うのだ

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