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5分で特別法_倒産法

概要

 今回は倒産法(破産法,民事再生法,会社更生法)について、その内容を5分で読める程度のダイジェストでまとめました。
 破産を中心に説明した後、破産と民事再生の異同、民事再生と会社更生の異同を述べる形にしております。
 毎度の文章ですが、このまとめには若干不正確だったり説明が不足している点があります。これはあくまで「概ねこういうことが法律で決められているんだ」ということを5分で概観するためのまとめなので、その点はご了承ください。

破産法

法の概要

管財人が破産者の財産をかき集め、債権者に按分して破産者の借金を終わらせる。破産者は生活費程度のみを持った状態で財産を再スタートする。

管轄

原則として住所地、法人は主たる営業所の所在地の裁判所が管轄。(4)

破産手続の申立て

破産は、破産者が支払できなくなった場合に、申立てを行うことで始まる。(15)

手続費用の予納が必要。(22)
→破産するのにもお金がかかる。

手続開始

破産手続の開始が決定されると、破産管財人が選出される。(31,75)
→管財人は裁判所から選出された弁護士。破産手続には、「依頼者の代理人」と「破産管財人」とで、弁護士が二人登場する。

破産者は氏名が公告される。(32)

破産者

ほとんどの財産につき処分権がなくなる。(34Ⅰ,47,48,78)

99万円までの現金、生活や業務に必要な物、開始決定後に取得した財産は、引続き処分できる。(34Ⅲ①、民執131)

聞かれたことに対して説明する義務や、財産を開示する義務を負う。(40,41)

債権者集会に出席しなければならない。(135)

手続中は、士業や警備員や保険募集人など一部の職業がやれない。(各業種の規制法による)

手続中は、転居や旅行について裁判所の許可が必要。(37Ⅰ)

債権者

破産者に対する債権は原則として行使できない。(100Ⅰ)

抵当権等の担保権があれば、優先弁済を受けることができる。(65)

反対債務がある場合、相殺することができる。ただし、破産手続開始後に負担した債務など相殺できない債権もある。(67,71,72)

管財人

破産者の債務の一覧を調査・整理する。(117)

破産者の財産を調査し、可能な限り換価する。(153,184)

破産者宛の郵便を破産者より先に受け取り、財産隠しなどをしていないか確認する。(81,82)

業務について善管注意義務を負う。(85)

破産者の不当行為(支払不能なのに特定の者にだけ借金を返した、支払不能なのに不動産などの財産を異常に安く売った、など)を否認により取消し、破産者の財産をなるべく回復させる。(160)

破産者の財産から破産の手続費用などを回収し、残額を債権者に配当する。(148,193)

債権者への配当は債権額の割合により按分される。(152)

→管財人の役目を大雑把に言うと以下の3つ。破産者の債務を調査すること、破産者の財産をなるべく回収・換価して配当金を確保すること、破産者が不当な行為をしないか監視すること。

破産手続終結

配当の終了により、破産手続は終結決定がなされる。(220)

廃止

破産者の財産が破産手続費用にも足りないことが明らかになった場合、手続が廃止され破産手続が終了する。特に、申立て時点において、破産者の財産が手続費用にも足りないことが明らかな場合、手続は開始の決定と同時に廃止される。(216,217)
→同廃の場合、管財人が不要なので予納費用が安い。しかし、東京地裁では個別運用により同廃は行われていない。

免責

破産手続の申立てをすると、免責許可の申立てもしたこととなる。(248Ⅳ)
→理論的には破産と免責は別の手続だが、この規定により実務上は一つの手続のように扱われる。

免責不許可事由(手続中に不当行為があった、破産の原因がギャンブル、7年以内で2回目の破産、など)がない限り、免責の許可が決定される。不許可事由があっても、裁判所の裁量で免責許可が決定される場合もある。(252)

免責許可の決定を得れば、債務が免責される。ただし、租税,一部の不法行為の損害賠償請求権,養育費,罰金など、一部の債務は消えない。(253)

民事再生法

法の概要

何年かかけて借金を一部のみ返済することで、破産と異なり財産の一部や法人格を残せるようにする制度。

※以下、破産と異なる点にのみフォーカスします。

再生手続開始の申立て

破産するおそれがあるときに申立てることができる。(21)
→再建を目的とする制度のため、破産より開始条件がゆるい。

再生手続開始

再生手続の開始が決定されると、監督委員が選任される。(54)
→ほぼ弁護士。

再生債務者

引続き財産を処分することができる。ただし、営業譲渡などは裁判所の許可が必要。また、監督委員の許可を得なければできない行為が個別に定められる場合もある。(38,42,54)

債務・財産を整理してまとめる。(101,124)

職業の禁止がない。

債権者

抵当権等の担保権は原則として行使可能だが、実行停止命令や削除命令がなされる場合もある。(31Ⅰ,53,148Ⅰ)

監督委員

監督委員の許可を得なければできない行為などについて、再生債務者を監督する。(54)

再生計画

再生債務者は、再生計画を作成して提出する。(163)

再生計画により債権者が得る額は、破産の配当により債権者が得る額よりも多くなければならない。(174Ⅱ④)

債権者は債権額に応じて議決権があり、再生債務者の再生計画に賛成・反対することができる。(87)
→例:債務者が破綻すると債権の2%ほどしかお金が回収できない。再生すると10%ほど回収できるし今後も取引継続が可能だが、回収に5年程かかるし他の債務者に強気の姿勢を示せない。こういった観点からどちらがマシか検討し、議決権を行使することとなる。

債権者の過半数の同意、かつ、債権額の50%以上の議決権の同意がある場合、再生計画は可決される。(172の3)

可決されたら、再生計画で返済を定めた額以外の債務は免除される。ただし罰金等はなくならない。(178)

可決後、再生手続きは終了する。再生債務者は再生計画を遂行し、監督委員はその遂行を監督する。監督は概ね3年。(186,188)

可決されない場合は再生手続きが廃止され、破産手続きが開始する。(191,250)

住宅ローンの特則

自ら住む住居の住宅ローンは、民事再生から外すことができる。(196)
→破産は原則として住宅を手放すことになるが、民事再生は自宅を手放さないで済むような特則が定められている。ただし住宅ローンは減らない。

小規模個人再生

個人の債務者で継続的な収入があり債務が5000万円以下の場合、小規模個人再生を行うこともできる。(221)
→通常の民事再生に比べ、手続きが簡易迅速。

監督委員ではなく、裁判所により個人再生委員が選任される。(223)

「総財産」「債務額から算出される最低弁済額」のどちらか高い方が返済金額となる。(231)

給与所得者等再生

小規模個人再生が可能な者のうち、更に給与等の安定した所得がある者は、給与所得者等再生を行うことも可能。(239)

再生計画の策定にあたって債権者の決議が不要だが、「総財産」「債務額から算出される最低弁済額」「給与から算出される最低弁済額」の中で最も高い金額が返済額となる。(241)
→小規模個人再生よりも返済額が高くなりがち。

会社更生法

法の概要

経営陣を退任させる代わりに、更生管財人によって民事再生よりも強権的に再建を行う。

※以下、民事再生と異なる点にのみフォーカスします。

債務者

従前の取締役などの役員は退任させられる。(211Ⅳ)

債権者

抵当権などの担保権の実行も制限される。(50)

更生管財人

手続開始が決定すると、裁判所は更生管財人を選任する。(42)
事業の経営,財産の管理処分権は、経営陣から更生管財人に移管される。(72)

結語

 このまとめは基本的に条文を見ながら重要と思われる事項をピックアップして作成しているのですが、そのせいで条文に出てこない重要事項が抜け落ちるという性質があることが分かりました(例えば、倒産においては私的整理も重要な要素の一つですが、私的整理を規律する法律があるわけではないのでこのまとめには出てきません)。

 あまり負荷を大きくせずにこの問題を解決する策が思いつかないので、ひとまずは現行の方法のまま進みます。

 いい方法が思いついたら、どこかの段階でこれまで書いたものも書き直し等して対応したいと思います。

 次回は社会保障法にしようと思い文献を読んで勉強中なのですが、あまりこのまとめに向かない気がしてきました。社会保障法は飛ばして消費者法にするかもしれません。

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