見出し画像

なぜわたしがBLを読むようになったか(下)

前回、kindle unlimitedに加入してBLマンガを読みふけるようになったという話を書きました。

今回はわたしの生活、考えを大きく変えたBLマンガ『GAPS』との出会いについて書きたいと思います。

現在1〜5巻が発売中。
試し読みもできるので、気になる方はぜひ!

大げさではなく『GAPS』に出会う前、出会った後で違う人間になったと言えるほど影響を受けた作品なのですが、劇的な出会いをしたわけではありませんでした。ページを開いた瞬間、雷に打たれたようなショックを受けた、とかじゃないんですよね。
(そういう衝撃があったのは、雲田はるこ先生の『昭和元禄落語心中』で、これは表紙めくって数ページで、これ好き……、ってくらくらしました。あとは高橋留美子先生の『らんま1/2』とか。1話読んだときのわくわくが何回読んでも色褪せません)

正直読み終えたときに、すっごい引っかかったってわけではないんです。
だけど、何か引っかかる。
でも、何が引っかかるのかわからない。

BLマンガと並行して他の本も読んでいたので、いつもなら読み終えたらすぐ返却していたのですが、『GAPS』だけはなぜか気になって、すぐに返却せずに、3回4回と読み直しました。
それだけ読んでも、このマンガに対する引っかかりが拭えない。読めば読むほどその引っかかりが大きくなっていくという不思議な感覚を味わいました。

絵が大好きってわけでもないし、いちゃいちゃしてるわけでもないし、激しい濡れ場があるわけでもないし……。
他の作品のように、ここ、ここが気になる。ここが大好き。って具体的に言えるところはないんですが、なぜか気になる。
うーん。
なんだろう? と思いながら何度も読み返しました。

気になって作品について調べたところ、続編が出ていることがわかったので、サイトから試し読みをしました。
2巻の試し読みは、あら、新しいキャラが出てくるのね、くらいだったんですが、3巻の冒頭を読んであ然。

か、片桐!!! おまえ、何やってんだー!!!

となりまして、ああ、これ全部買おうと思いました。(片桐は髪の毛白いほうです。ちなみに黒髪の男性は長谷川さん)
書くのをはばかられるようなことをやってますので、気になる方は試し読みしてみてください。片桐の行動が読めなすぎる。

当時の最新刊4巻まで買って、一気に読んだんですが、もう、それがすごかった。
めっちゃ濃密な読書体験をしました。
あれ、未読で読んだあのときしか体験できないと思うんですが、読んでる間は作品と自分しか存在しなくて、他のことはこれっぽっちも頭にない状態。
作品の世界に自分がすっぽり入ってしまったといったらいいか、いい作品に出会ったなあ、とか、うわっ、これ大好き、とか考えることもなく、ただただ『GAPS』の世界にいる、っていう時間を過ごしたのです。
読み終えて、うわーーーーーーっ、とkindleをつかんだまま大の字になって、しばし放心。今すぐにでも読み返したいが、余韻にも浸っていたいってジレンマに陥りました。とんでもないものを読んだってことだけがわかって、涙が出てきました。

その後は寝ても醒めても『GAPS』のことばかり考えるようになって、大げさじゃなく100回は読みました。
夜寝る前まで読み返して、朝起きた途端にkindleつかむという生活をしばらくしてました。1巻に至ってはその倍くらい読んだかもしれません。

これは、他の作品も読まにゃならん、と思いまして、その時点で出てる里先生の単行本全部と電子で出てた1話読み切りの『複雑で単純で幸福な時間を』を購入。
このときは、『GAPS』が好きなだけで、他の作品はそうじゃないかも、と思ったりもしたのですが、結果杞憂。全部、全部よくてですね、もうこれから里つばめ先生の全作品を追う、って決めました。

『GAPS』同様里先生の他の作品も繰り返し読んだにもかかわらず、わたしの引っかかりは取れず。
もしかして、わたしBLの読み方、わかってないんじゃない?と思い始めました。BLには独自の文法のようなものがあって、それを知らないとこの引っかかりは取れないままなんじゃないか?
参考書に手を出すのはチートのようで気が進まなかったのですが、里作品をより理解したい気持ちのほうが勝ったので、BL関連の本を買って読みました。

BL読者のサンキュータツオ氏がBLに触れたことのない春日太一氏を生徒にBLとはなんぞやを講義する内容。

最初はまったく理解していなかった春日さんが終盤で師匠を追い越す勢いでBLについて理解する様に爆笑。擬人化についても触れていて、最後に「天ぷらそば」と「鍋焼きうどん」はどんな性格か考える、というような宿題がついています。わたしはこれを読んだときは、この宿題を解くまでに至らなかったんですが、今なら、いけるか? という気がしてます。

アダルトビデオ監督の二村ヒトシ氏、社会学者の金田淳子氏、編集者・文筆家の岡田育氏の三人によるトークイベントで話したことをまとめたもの。

こちらの本ははじめて知ることだらけで本当に勉強になりました。BLの歴史やBLでの表現の傾向、BLのセックスと現実のセックスの違いなど幅広いテーマでトークしています。ジェンダー論の観点からも話されていて、何度もハッとさせられました。

こういう本を読んで、里先生の作品を繰り返し読み、考え続けて1年が過ぎて思ったのは、BLを読むってことは、自分と徹底的に向き合うってことだ、ということでした。
考え続けた過程で、自分の考え方の甘さ、至らなさに気づき、なんとわたしは傲慢だったのか、と衝撃を受けたのでした。

もっと、いい人間になりたい。

そう思ったし、思うだけじゃなくて、小さなことでもいいから、いい人間になることに向けて、今までやってこなかったことをやっていこうと思い、やりました。
そしたら、自信がちょっとついたんですよね。
ほんのちょっぴりですが、以前できなかったことができるようになったんです。
例えば、以前だったらネットで自分の書いた小説や自分の考えを発表するなんて、恥ずかしくてできなかったと思います。
でも、それができるようになった。
できるようになると、嬉しくて、もっと他のこともやってみようと思うようになりました。
今までだったら、面倒だからとか恥ずかしいからとか理由をつけてやらないでいたことを、とりあえず、やってみるか、とやってみるようになったのです。
これはわたしにとって、本当に大きな変化でした。そして、この変化はBLに出会い、里つばめ先生に出会えたからこそ起こった変化でした。

この話のタイトル「なぜわたしがBLを読むようになったか」の答えはkindle unlimitedの加入をきっかけに里つばめ先生に出会ったから、となります。里つばめ先生に出会えたからこそ、他にも今までに読んだことがないわたしの心をえぐる作品に出会えるのではないか? と期待を抱き、日々広大なBLの海を漂っている次第です。

長くなってしまったので、今回はこのへんで終わります。
BLを読みながらどう自分と向き合ったか、そして『GAPS』とはどんな話なのか、について具体的に書くことができなかったので、その話は、また別に書こうと思ってます。BLの話はまだまだ続きます。


未読の小説、マンガの購入にあてさせていただきます。