村山写真室

撮影・額装

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最近の記事

別の存在の仕方

東京での撮影からの帰り、特急電車の中で読んでいた本の中に、 「〈死〉とは、〈別の存在の仕方〉である」 という言葉があった。 誰の何というタイトルの本かも忘れてしまったけど、なんとなくその一節が頭の中を漂っていた。 ふとスマホを見ると家族から着信があり、慌てた声で、飼っている高齢の犬が「いま死んじゃったかも」と。 駅に着き、タクシーに乗って急いで家に帰った。けれど犬は薄く目を開けたまま動かなくなっていた。 犬の額に自分の額を当て、強く悲しみを感じながらも、しばらくするとまた

    • お守りとしての写真

      2011年の年末、南三陸町の仮設住宅の集会所で家族写真の撮影をおこなった。集会所の中に臨時のスタジオを作り、そこに来て頂いた方々を撮影し、その場でプリントをして無料で差し上げた。 ある日高齢の女性が一人でお見えになり、撮影を終えた後、一枚の写真を見せてくれた。それは震災が起こる前に亡くなった旦那さんの葬儀の際の写真で、よく見るとその葬儀の風景の中にとても小さく旦那さんの遺影が飾られている。 「この遺影の部分を大きくしてもらえないでしょうか」 実際の遺影の方は失ってしまっ

      • 時間のにじみ

        器が好きで、たまに器屋に行っては、どれを買おうかと長時間悩む。 手に取って重さや厚みを確かめ、いろんな角度から眺め、元の場所に戻し、少し時間を置いてまた手に取って眺める。ようやく一枚の器を購入し、その晩はリビングのテーブルの上に置いて、また眺める。ああ、なんて「いい」器なんだろう、と。 けれど毎日その器を使っているうちに、購入した日に感じた「いい」という感覚は、いつの間にか薄くなっていく。それは粗(あら)が見えるという意味ではない。だんだんと慣れが来てしまうからだ。 その器

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