【活動レポート】ムラツムギVillageオンライン村民集会第2回 集落ってなに?まちってなに?
みなさんこんにちは。ムラツムギ事務局です。
いつもムラツムギの活動を見守り下さりありがとうございます。
さて!8月20日(木)に、ムラツムギVillageオンライン村民集会第2回を開催しました(^^)
今回は、そのダイジェスト版を記事にします!
(ちなみに第1回のまとめはこちらhttps://note.com/muratsumugi/n/nd6ba32fcfd23)
第2回目のテーマは、「集落ってなに?まちってなに?」でした。
今回は「撤退の農村計画」の著者である金沢大学の林直樹先生にゲストスピーカーとしてご参加いただきました。
イベントページはこちら
<ゲスト紹介>
林 直樹(はやし なおき)
金沢大学人間社会学域地域創造学類・准教授、特定非営利活動法人国土利用再編研究所・理事長
1972年広島県生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了,博士(農学)。主な著書として『撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編』(学芸出版社)。人口が減少するなかでの山間地小集落の生き残りの選択肢について研究している。
林先生の研究していらっしゃること
林先生「私はもともと農業土木が専攻だったんです。それで活性化しなきゃ、ということをかつては一生懸命考えてたんですが、活性化がうまくいかなかったり、無住化が回避出来なかったり…そうなった時のセーフティーネットも必要だなって思うようになって、無住集落について研究をするようになってきたんです。」
前田「とても大切なことですよね。でも、そもそも無住化した集落がどんな状態になるのか?というイメージがない方もいらっしゃるんじゃないかなと思いますね…」
林先生「では実際に、私の関わった集落の例を見てみましょうか。
林先生「皆さんの想像する消滅集落って、どんなものでしょうか?
・・・まず、こちらの事例を見てみましょう。いわゆる『廃村っぽい』というイメージって、この事例のような、大破した廃屋ばっかりなイメージが強いと思うんです。しかし、そのような例って、すごく稀なんですよ。」
一同「そうなんですね!!」
林「そう。さらに他の事例も見ていきましょう。これはね、すごいですよ。無住集落なのに、有人のパン屋さんがあって、お客さんも普通に来ています。」
林先生「国勢調査上、『無住集落』になっているだけで、こんなにも賑わっている集落があるんです。ほかにも、キャンプ場になっている無住集落や、観光農園になっている無住集落もあります。中にはダムに沈んでしまった集落や、太陽光パネルでいっぱいになった所もありますね。
要は、“無住”と言っても十人十色。それぞれに個性があるんです。“無住”というと悲観的なイメージがつきがちだけど、こんな風に楽しく生き残っていける方法もあるんだよ、ということを強調したいです。」
「集落を集落たらしめるもの」って?
前田「林先生、今のような色々な集落がある中で、集落を集落たらしめるものって、何なのでしょう?」
林先生「難しい問いですね。まず、昔と今だと違うと思います。かつては、集落の人々は、"その時集落に住んでいる人"だけで助け合わないと生きていけないような、厳しい時代もあった。ですが、今は違いますよね。行政のサービスもあるし、外に出て行った子ども・孫世代の行き来もある。"その時集落に住んでいる人"だけで構成されているものではなくなってきている。昔に比べると、集落もパーソナルなものに変化している印象です。」
「そうなってくると、いよいよ『集落って何なの?』と迷ってしまいそうですが・・・やはり、集落を集落たらしめているものは、昔ながらのまとまりや、精神的な拠り所の機能ではないかと思います。人が住んでいるか/いないか、だけでは語れない、メンタルな部分でしょうね。」
田中「集落のあり方が変化してくる今後、集落の果たす質的機能について考えることは非常に大事なことだと思いますね・・・」
消滅集落の「消滅」って?ぶっちゃけ増田レポートについては?
前田「ここで林先生にまたお聞きしたい問いが、集落の"消滅"とは?というものです。2014年の増田レポートなんかでも、消滅集落という言葉が出てきますが・・・」
増田レポート: 少子化による人口減少で、将来の存続が危ぶまれるとされた自治体。 2014年に日本創成会議(増田寛也座長)が発表した。 40年までに20~39歳の女性の人口が5割以上減少すると推計された896市区町村で、全自治体のほぼ半数に当たる。
林先生「先日、総務省が出した調査では、2020年までの四年間で約100の集落が消滅したとのことでした。集落そのものは、山間農業地域だけでも2万以上ありますので、そのうちの100というと割合だけで見ると少ない印象ですね。
それと、さっきのパン屋さんのある集落なんかは、その調査で言ったら"消滅集落"ですが、活き活きとした"生きている集落"だと思うんです。人口って、集落にとって大きな要素の一つではありますが、人口だけで全ては語れないと思います。」
「う〜ん、あとね、増田レポートなんかは・・・そんなに重視しなくていいんじゃないかなぁ・・・」
一同(笑い)
林先生「要は、その集落に消滅の可能性があろうがなかろうが、質的には何ら変わりないという話です。学生のテストとかに例えるなら、"優"でも"良"でも"可"でも、合格に変わりはないじゃないですか。」
江戸時代と同じ暮らしを今も続ける?
林先生「あとは、集落の枠組みの捉え方ですよね。今の集落の形ってほとんど、むかーし昔に形成された、そのままですよね。その昔、例えば江戸時代には、車やネットなんてなかった。外との行き来が非常に難しかった。ですが、今はそんなことありませんよね。
「特に畑や田んぼがあるところは、その隣に住んでないと管理ができなかったんです。でも今なら、管理するために車で通える。細かいことを言えば、留守中の獣害はどうする、なんて問題もありますが。でも、"必ずそこに住む"という必要性は薄れていると思います。そんな中で、暮らす場所は便利な場所を選び、大事な畑や田んぼも守るという方法もあっていいと思います。いつまでも江戸時代のような暮らしを現在も続けなくてもいいんじゃないかなと。」
無住化を見越した"撤退"は、生き残るため"保険"。
林先生「もともと『撤退の農村計画』を出した時も、撤退という言葉は、明るい未来のための生き残り戦略という意味で使っていました。諦めるというわけではなくむしろ逆で、状況に合わせて撤退することで、生き残れる道を見つけようじゃないかと。」
林先生「例えば、人口が減ってきたから活性化を頑張ってみると。それは素晴らしいことですけど、もしも、それがうまくいかなかったら、その時は知らんと。それは無責任のように思えます。本当に集落のことを大切に思うなら、活性化に全力で取り組むのと同時に、いざという時の"保険"を考えておく、というのは真っ当なことなんじゃないかと思います。」
「集落のみんなで話し合いができたか?」が重要
田中「僕が最近読んで印象に残った本に、植田今日子さんという方の、「存続の岐路に立つむら」というものがあるんですが。」
「思うに、計画的に無住化や集団移転について話し合うことができているかどうかで、その後のそのコミュニティのあり方って変わってくるんじゃないかな、と。ダム移転とかいろんな事情があって、消滅の岐路に立った時、集落の住民が話し合えたり、それで納得できたりしないと、コミュニティがバラバラになってしまいかねないよなぁと思います。」
林先生「全く、その通りだと思います。」
今後日本に必要なのは、「無住化コーディネーター」
林先生「うまく将来を描けているな、というところに共通して言えるのは、しっかり話し合っているかどうかだと思います。あとね、人が少なくなりすぎると議論が難しくなるんですよ。例えば、『あと3人しか住民がいません。関係者みんな呼んで今後の話し合いしましょう。お集まりください。』ってなったら・・・大変でしょう?だから、ある程度人がいる時から話し合っておくべきだと思います。」
「さらに大事なのが、そういう時に人を集めて、話し合いの場を作って、全体の話をコーディネートする人が必要なんだと思います。」
林先生がムラツムギに期待すること
林先生「僕がムラツムギさんに期待することは、今話した"無住化コーディネーター"のような役割になっていただくことですね。それも、遺書を書くような雰囲気ではなく、明るい未来に向けての話し合いとして位置付けられるような。そうしないと、話し合いが建設的になりませんからね。」
佐藤「前向きな議論にできるように、言葉選びが非常に難しいところではあると思うので、そこはとても悩みます・・・そこは課題ですね。ぜひ先生のおっしゃるような役割をムラツムギが担って、きっかけづくりをどんどん出来たらなと思っています!」
林先生「はい。人口がある程度いる、集落が元気な時から、明るい未来を前向きに議論できるような仕掛けづくりを、ぜひやって欲しいですね。」
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以上、ムラツムギVillage オンライン村民集会第2回の「集落ってなに?まちってなに?」でした。 この記事のほかにも議論が拡がったり、配信視聴者さんのコメントに答えたりと盛り沢山でした!もしよろしければ、配信の録画がYouTubeに上がっているのでぜひご覧ください(^^)
次回以降のお知らせ
さて、6月から始まりましたオンライン村民集会ですが、次回以降は以下のスケジュールで配信を続けていきたいと思います(タイトルは今後変更の可能性があります)。
今後とも、よろしくお願いします!
第3~4回(秋頃) これまでの地域活性化を振り返る
第5~6回(冬頃) 縮小社会を見据えたムラツムギの目指すまちづくり
第7~8回(年明け頃)ムラツムギの今後
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