【ネタバレ注意】めんどくさい人が観た「ゴジラ(2014)」感想

※この記事は2014年7月26日にニコニコが運営していた「ブロマガ」に投稿された物です。

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はい、観てきました。
という事で感想を綴ろうと思うのですが、一問一答っぽい形式で褒めた後、めんどくさい人モードでの感想を書きたいと思います。

ではまず褒めるフェイズから。

●面白かった?
面白かったかと問われたら、今回のゴジラはまず間違いなく面白いです。
皮肉とかではなく素直に。

●ちゃんと怪獣映画だった?
自分が思う「怪獣映画」は
・登場怪獣が人類を圧倒しているか
・都市を舞台に暴れ回り破壊の限りを尽くすか
・怪獣に対して人類がどう立ち向かうかという描写があるか

という点が描かれているかどうかと考えているのですが
今回のゴジラはこれを全て満たしていたので、まさしく我々の想像する「怪獣映画」だったと思います。

●「ゴジラ映画」としてはどうだった?
これは胸を張って「ゴジラ映画だった」と言えます。が、これに関しては後述のめんどくさいモードの際にまた書きます。

●新怪獣ムートーってどうよ?
放射性物質を食べて成長し、電磁パルスを発生させて電子機器をストップさせてしまう、
さらに無数の卵を産んで繁殖までするというとんでもないヤツでした。
特に電磁パルスは戦闘機や軍艦を完全に無力化してしまうので、米軍がまるで歯が立たず
「効くかどうか分からないがとりあえず核ミサイルでぶっ飛ばすしかねぇ…」という状況まで追い込みます。
挙句その核ミサイルまで食われてさあ大変!って事にもなるので、人類に対して無慈悲なまでに暴れ回ってくれます。
これ、これですよ。やっぱり怪獣はこれくらい無慈悲で暴力的でないと。
そういった点では、ムートーは「モンスター」ではなく、れっきとした「怪獣」でした。

●ゴジラはどうだったの?
今回のゴジラは「地球の生態系の頂点に君臨する存在」として登場しており、
核エネルギー(と、同じくそれをエネルギーとする生物)をエサとしていて、それがムートーを追う理由の一つとして描かれています。
さらに、ミサイルや大砲をものともしない頑丈さを持ち、背ビレを光らせて放射熱線も放ちます。
特に放射熱線は最初の一発目を放つ際、尻尾の先の背ビレから徐々に上の背ビレが光っていき、全て光った後に発射するというメチャクチャカッコいい演出でやってくれます。
ここは正直鳥肌が立ちました。マグロ食ってる方ではやってくれなかったけど、今回はちゃんとやってくれました。
頑丈で、重厚で、核をエネルギーとして、放射熱線を吐く…
我々のイメージする怪獣王「ゴジラ」が、今回の映画には、確かに存在しました。

●そろそろまとめて?
「ゴジラ映画が帰ってきた」
今作を観て、私は間違いなくこれを感じました。
パシフィック・リムの時も思いましたが、海の向こうにも怪獣映画の何たるかを理解する人が存在し、そしてそれを制作出来る時代になったんだなとも思い、同時に日本でそういうモノが作られない、あるいは作りづらいという事に悔しさも感じました。
ですが、今はただ、怪獣王の帰還を大いに喜びたい。そういった気分です。


……さて、褒めるのはこの辺まで。
ここからはめんどくさいモードに入ります。

先程あれだけ褒めちぎりましたが、実は今回のゴジラで「えっ、これはちょっとなあ……」と思ってしまった所が二点ほどあります。

まず一点。

●ゴジラをヒーローにしてしまった
今回のゴジラですが、これは私が勝手に期待してしまっていた事なのですが、
今作は初代ゴジラのように、ゴジラ「のみ」が人類の脅威として立ちはだかり、
米軍がいかにゴジラを撃退するのかを描く内容になるだろうと想像していました。
しかし実際はムートーという新怪獣が登場し、人類の脅威として立ちはだかるのは
ゴジラよりもむしろムートーの方であり、
ゴジラは人類の脅威ではありますが、
ムートーを倒す為に現れたという趣きの方が強く、結果的に人類を救ったような結果となってしまっています。
(ラスト近辺の、海へ帰るゴジラを中継するTV映像に「怪獣王は救世主か!?」というテロップが出ている所にも、今作のゴジラのヒーロー性が現れていると感じました)

そういう意味では、今作のゴジラは初期やVSシリーズの
「人類の脅威」としてのゴジラではなく、昭和シリーズ中期~末期
「人類に(比較的)友好的なゴジラ」を目指したのかなと、そう思いました。

前述の「ゴジラ映画としてはどうだった?」という項目について後述すると書いたのは
ここが絡んでおり、今作は確かにゴジラ映画ではありますが、自分の想像していた
「初代のような重々しい内容のゴジラ映画」ではなく、
「昭和期(三大怪獣~チャンピオンまつり期)のゴジラ映画」だった、というのが私の見解です。

こういった点から、今作のタイトルも「GODZILLA」ではなく
「ワーナーチャンピオンまつり サンフランシスコ大決戦 ゴジラ対ムートー」
としてくれた方が、もしかしたらしっくり来たかもしれません……。
(※VSでも×でもなく「対」な所がミソ)

ついでに、空を飛び回り強い繁殖力を持つ怪獣……

…ん?

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破壊者ではなく、大自然の均衡を保ち、調停者として君臨する怪獣……

……うん?

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あっ、この映画、ゴジラの皮を被った平成ガm……ゲフンゲフン!!!!

……では次に二点目。

●米ソの核実験を正当化している(と思えても仕方の無い)シーンがある
史実では太平洋戦争後、米ソは幾度も太平洋上で原水爆実験を繰り返していましたが
今作のゴジラでは、実はこれは原水爆実験ではなく、
その頃に現れたゴジラを倒す為に行われていた物だという説明が劇中でされます。

……この説明を聞いて私は思いました。「ふざけんじゃねぇぞ」と。
いくらアメリカ側が作った映画とはいえ、ゴジラをダシにして自分達のしてきた事を正当化してんじゃねえぞ、と……。

ゴジラは皆さんもご存知の通り、核の脅威を怪獣に投影させた存在であり
その後も一貫して反戦、反核を訴える存在であり続けました。
(忘れられてたっぽい時期はありますが……)

ただ、今作のゴジラは、前述した通り、そういった願いの込められた
重々しい内容の時期のゴジラではなく、それはひとまず置いといてゴジラのヒーロー性を
高めていた時期の内容に近いので、今回もおそらくそうしたのでしょう。

製作国がアメリカという事情というのがあるのか、
それとも初代と同じような物は作れないから思い切ってそういう方向に舵を切ったのか、
作り手側の意図は分からないにせよ、土下座して「私達が悪う御座いました!!」とまでやれとは言わないので、ちょっとくらい反省や贖罪を匂わせる内容にはして欲しかったと思いました。
(芹沢博士が広島の原爆で亡くなった父の形見の懐中時計を米軍のステンツ提督に見せて、提督が複雑な表情をする、というシーンはありましたが……)


私が今作を観て不満に思ったのは、大きくは以上の二点のような内容です。
細かい事については今回は割愛します。(芹沢博士があんまり役に立ってない、とか)

まあ何にせよ、今回のゴジラは「想像してたのとは違ったけど、間違いなくゴジラ映画」
と言えるので、マグロ食ってる方のリベンジは十二分に果たせたと判断していいでしょう。
次回作、あるなら期待してます。


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