【ネタバレ注意】めんどくさい人が観た「シン・ゴジラ」感想

※この記事はニコニコのブロマガに2016年8月1日に投稿した物を再掲したものです。

観てきました。

いやあ……やられましたね。庵野秀明という男に……。
ゴジラを知り尽くした男がそれをリスペクトしつつも、
今までにありそうで無かった「ゴジラ」を我々の記憶に刻み込んで来ました……。
恐ろしい人ですよ、ホントに……。

という訳で、この映画に対する感想を述べていこうと思います。
今回、鑑賞前に立てていた評価ポイントは以下のようなものでした。

●ゴジラ対人間であるか?
●怖いゴジラであるか?

この2つです。
え? たった2つ? と感じる方もいらっしゃるでしょう。
何故この2つだけか、というと、これはギャレゴジこと「ゴジラ(2014)」
私が最も押さえて欲しかった部分だったのに、押さえてくれなかった部分だからです。
あの作品は確かにゴジラ映画でしたが、やはりあれは外国人が好むゴジラ映画であり、
「思ってたのとちょっと違う」というのが正直な感想でした。
そこを果たして今回のゴジラは押さえていてくれるのか、そこだけが本当に気がかりでした。

で、実際どうだったかと言うと……

●ゴジラ対人間であるか?
徹頭徹尾、ゴジラ対人間でした。
もっと言えば、「ゴジラ対日本政府」でした。
キャッチコピーである「ゴジラ対ニッポン」というのは、ハッタリではなかったのです。
ゴジラ以外の怪獣が登場せず、人間とガチンコ対決を繰り広げるのは
「ゴジラ(1998)」以来、実に18年ぶりです。
日本版のみでカウントすると「ゴジラ(1984)」以来となり、実に32年ぶりとなります。
長かった、本当に長かった……。そして、待った甲斐がありました。

さて、今までこの「ゴジラ対人間」は、ゴジラに対して有効な対抗手段を持つ研究者
主人公ポジションの民間人の登場人物と協力してどうにか政府または自衛隊に取り入って
(または米軍がミサイルをブチ込んで)最終的にゴジラを倒す、というのがセオリーでした。

では、シン・ゴジラはどうだったかというと、
ゴジラに対して有効な対抗手段を持つ研究者は、物語開始時点で
ヒントと捨て台詞だけ残して早々に死亡してしまっていますし、
主人公ポジションの民間人は存在しません。

ヒロインらしいヒロインも存在せず、恋愛要素も一切ありません。
「ゴジラ」という人知を超えた存在に対して、日本政府の政治家や
召集された各分野の専門家たちがただひたすらに、必死にもがき続け、苦しみ続け、
この国の明日のために戦うという群像劇でした。
特に、政府を舞台の中心としたストーリーの構成は今までのゴジラには
ありそうで無かった点であり、よくそこに触れてくれた!と思いました。

今までは「ゴジラ対自衛隊」という趣きが強く、政府の動きについては
省略される事が多く、あまり触れられる事がありませんでした。
おそらく取材等が大変な量になる上に、面白くなる保証が無い事から
敬遠され続けてきたのでしょう。
そこにあえて挑戦し、ちゃんと面白くした庵野監督は本当に凄い人なんだなと
あらためて感じさせてくれましたし、このシナリオにOKを出した東宝も
肝が据わっている、或いは懐の広さを感じさせてくれました。

この「ゴジラ対人間」がしっかり書かれている上に、今までに無かった切り口で
見せてくれた点を、私は非常に評価しています。

●怖いゴジラであるか?
ものっっっっっっすごい怖いです。
怖いなんてもんじゃない、あんなもんのさばらせておいたら
「あ、人類終わったな」って感じてしまうぐらい絶望感がヤバいです。

「ゴジラ(1954)」に登場した通称「初代ゴジラ」
「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」に登場した通称「GMKゴジラ」あたりが
個人的に怖いゴジラツートップでしたが、それをあっさり追い抜いていきました。
人類に対する慈悲の無さで言えばGMKゴジラもなかなかのものでしたが、
今回のゴジラの禍々しさ、凶悪さ、人類に対する慈悲の無さ今までのそれを
遥かに凌駕
しており、観ていてただただ恐怖するしかありませんでした。

今までのゴジラの造形は、怖さに重きを置いているモノはあっても、
どこかカッコいい要素を残しており、むしろカッコ良さの方にパラメータを振っている
ゴジラの方が多いという状況でした。
それが今回のゴジラは「怖さ」にパラメータを極振りしており、
カッコ良さをかなぐり捨てて、グロテスクな要素も盛り込んでいるという、
かなり思い切った造形をしています。
あんな気持ち悪い(褒め言葉)ゴジラ、今までにありませんでした。
その気持ち悪さも相まって、歴代最強レベルの恐怖感を醸し出し、
「コイツからは絶対逃げなきゃいけない」という防衛本能すら感させる程です。
それだけ怖いし、何よりヤバいです。コイツと出会ったら生き残れる自信がありません。

怖いのは見た目だけではありません。
歴代ゴジラと同じく、シン・ゴジラも放射熱線を使えるのですが、その火力が半端ない。
その一撃は東京を瞬く間に火の海にし、最大出力となった時には障害物を貫通する
極太のレーザービームのような状態になり、あらゆる物を薙ぎ払い、広範囲を
壊滅状態にする悪夢のような威力
を発揮します。
最初に放射熱線を繰り出すシーンの絶望感は半端なく、引いてしまうレベルで
凄惨な状況を生み出していきます。

しかし、今回のゴジラの武器はこれだけではなく、
背ビレ、尻尾からも放射熱線を対空レーザーの如く繰り出すのです。
これにより高高度からの空爆は完全に無力化されてしまい、
さらに絶望感を突きつけてくれます。

以上のように、シン・ゴジラはこれでもか!というレベルで怖いです。
正直やりすぎなレベルで怖いです。夢に出てきたら本気でビビりそうです。
でも、めんどくさい私は非常に嬉しく思っています。
だって、怖いゴジラが帰ってきたのだから。

●その他、気になったシーン等
その他気になったシーンは以下のような感じとなります。

・無人在来線爆弾
今まで、怪獣映画における電車という存在は、基本的に一方的に怪獣に襲われるだけの
いわば「やられ役」でした。
しかし、この作品では「無人在来線爆弾」という形で非常に重要な役割を
終盤に与えられており、高崎線、山手線、京浜東北線といった、首都圏在住の方には
非常に馴染み深い車両達がゴジラに対し一矢報いています。

電車が怪獣に対し有効な攻撃手段となったのは、何気に怪獣映画初なのではないでしょうか。
今までやられる一方だった電車の底力、あるいは根性を見せてくれました。

・ゴジラ(1984)へのオマージュ、或いはアンサー
終盤、米国がゴジラ撃滅の為に東京で核兵器を使おうとする際に、次のようなセリフがありました。
「ここがニューヨークでも同じ判断(核兵器の使用)をするだろう」
このセリフですが、実はゴジラ(1984)でも似たような状況があり、
ゴジラに対する核兵器使用の是非を劇中の総理が米ソに問われるのですが、
そこで総理が
「あなた方の国、アメリカやソ連でゴジラが現れたら、
 躊躇わずに首都ワシントンやモスクワで核兵器が使えますか?」

と言い放つ場面があります。
シン・ゴジラでのセリフは、ゴジラ(1984)に対する、
庵野監督なりの回答なんじゃないかと思っています。
……まあ、ギャレゴジで実際核兵器使ってるんで、それへの皮肉とも捉えられるんですが。

・BGM、SEなど
今回、鑑賞にあたって出来るだけ前情報をシャットアウトしてから臨んだのですが、
それだけに伊福部昭(ゴジラシリーズの劇伴を数多く手がけた作曲家)のBGMが
ちゃんと使われていた事に驚きました。

やはり、ゴジラと伊福部昭の楽曲は切っても切り離せないと判断したのでしょう。
私は非常に良い判断であったと思います。

SEに関しても、特に爆発音に関しては昔の東宝特撮で使われていたSEが
おそらく使われている所に拘りを感じました。

でも、劇中で何度か流れたエヴァっぽいBGMに関しては
庵野ォ!やりやがったなァ!!! と心の中でツッコミを入れておりました。
だってそのまんまなんだもん……

●まとめ
さて、今回のこの「シン・ゴジラ」という映画ですが、
私としては、押さえる所をしっかりと押さえてくれた
長年待ち望んでいたゴジラだったので、非常に満足しております。
故に、不満な部分は「もうちょっと特撮シーンが観たかったな」という所以外は特にありません。

非常にクセのある作品ではあると思います。
ですが、この作品は今の時代でないと作れないし、今の時代に観ないといけないモノだとも思っています。
この映画を先の震災等に絡めて感想を述べる人もおそらく多いでしょう。
だからこそ、今の感性でこの映画を観て欲しいのです。
何年、何十年も経ってからこの映画を観ても、おそらく今現在観た時と同じ感じ方は出来ないと思うのです。
それだけに、様々な人に、この映画を観て欲しいです。

続編に関しては、個人的には必要無いと思っています。
後でいくらでも料理出来そうな終わり方ではありましたが、
ここで終わっておいた方が無難でしょう。
後はレジェンダリー・ピクチャーズの方に任せて、日本のゴジラには
またしばらく眠っておいて貰いましょう。

以上。クッソ長い感想にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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