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相原コージ先生の「うつ病になってマンガが描けなくなりました 発病編」レビュー「確かに台詞には感動しましたが漫画が「白く」台詞の文字が「デカい」事に落胆しました。」

拝読しました。
漫画で伝えたい事があるなら絵の力が主で台詞は従なのではないか。
それが本作の1コマの半分は文字が占め1文字が非常にデカい為,
1つの吹き出しに平均25文字位しか入らず情報量が少ない。
吹き出しの情報量が少なくとも絵で見せる力があれば何も問題ないんです。
その肝心の絵が手抜き作画で線は繊細さを欠き
背景すらないコマが大多数を占める。

例えば先生の御自宅の書架の描写があって,
ファンは普段先生がどんな本をお読みになられるか知りたい筈。
だが書架の本は判型に殆ど差異が無く,
しかも背表紙が全て真っ白なのである。
これでは何も分からない。もっと情報を開示して欲しい。
勿論「うつ病病みには書架はこの様に見える」って意味は全くない。
単に機械的・作業的・自動的な手抜き描写なのである。

僕は「自分は今損をしている」って常に感じながら,
読書に耽る虚しさばかりが募るのである。
台詞の方は2度に渡る怪我と例の外出自粛令によって
引き籠りを余儀なくされた先生が
鬱憤と自分はコロナに感染したのではないかとの疑念から不眠症に陥り,
遂には自殺未遂,精神病院の閉鎖病棟への隔離入院に至る
非常に重いもので「読ませる」内容なのは確かなのですが
1文字のサイズが大き過ぎて直ぐ読み終えてしまう不満がある。
決して詰まらなくは無いのだが漫画家・相原コージの作品としては
作画においても台詞設計においても非常にイライラする出来となっている。
先生が「うつ」になって台詞の構成力が落ちたとボヤいておられますが
御自分で突っ込まれておられるように
「予防線を張るな」と言いたいのです。

『先生は「うつ」で可哀想だから,お布施の心算で買う』方が
多いようですが,お布施の心算で買った同情的な方も
最初に本書を開いた時にギョッとした筈。
漫画が「白い」文字サイズが「デカ過ぎる」って。

直前に細野不二彦先生の「1978年のまんが虫」を読んだせいもありますが,
どうしても本書と比較してしまう。
漫画家なんだから細野先生の様に漫画で描いて欲しいのです。
本書の台詞は今の閉塞状況にある
日本人の多くが共感する事が出来ると思う。
先生の奥様の
「何故僕に献身的に介護してくれるのか?」
って問いに対する「答え」,
息子さんの電話での「励ましの言葉」等々,
感動出来るポイントは多々あります。
しかし最初に本書を開いた時の驚きと落胆を超えるものではなかったので,
星2つ減点します。

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