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松本救助先生の「眼鏡橋華子の見立て」第1巻レビュー「眼鏡が人を救う話」。

「両眼とも裸眼で視力が1.5」というのが長年僕の密かな自慢だったのだが
寄る年波には勝てず最近2mから3m先の事物が滲んで見え
本を読んでいると細かい文字が判読できなくなった。
花粉症の治療がてら眼科に赴いたところ右目が老眼で左目が乱視と診断され更に精密な調査の結果,眼鏡を作る必要があり処方箋を書くから
指定の眼鏡屋に行き処方箋を提示したのち
好みの眼鏡フレームを選べと言われた。
僕の要望としては昔のように事物がハッキリと見え
眼鏡をかけていることを忘れるような眼鏡を所望し
散々「試着」した結果
デュポン社の遠近両用眼鏡が最適解となったが
眼鏡フレームと左右の眼鏡レンズ込みで3万円請求された。
正直結構な出費である。
1週間後に眼鏡屋に赴きレンズがハマった状態の眼鏡を
無事受け取ったのだが確かに2mから3m先の事物が昔のようにハッキリと
見え本を読んでいても細かい文字がハッキリと見えるようになった。
しかし1時間以上眼鏡をかけ続けていると目が疲れ
さらに眼科では起きている間は基本的に眼鏡をかけ続けるよう指導されたが眼鏡屋では必要なときに眼鏡をかけるよう指導されている。
一体何を信じればいいのか。

こんなときに眼鏡橋さんならどのような見立てをするのか
という動機から本書を購入した次第である。

「眼鏡が人を救う漫画」のひとつに鳥山明氏の「Dr.スランプ」があり当初
主人公の則巻アラレは視力の調整が上手くゆかず眼鏡をかけていた。
鳥山氏はアラレの視力の調整が完了次第,眼鏡を外す予定でいたが
読者から次のような趣旨の手紙が届いたという。
「私もアラレちゃんと同じように眼鏡をかけています。
これまで眼鏡をかけているとからかわれることが多かったのですが
最近からかわれなくなりました。アラレちゃん,どうもありがとう。」
鳥山氏は翻意してアラレの眼鏡を外さないことに決めたという。
今では信じて貰えないかもしれないが
「眼鏡をかけていること」
が視力に何らかの問題があることが
からかわれる要因のひとつであった時代があったのだ。

本作品では眼鏡に関する様々な悩みを抱える人々が登場する。
眼鏡橋さんはそうした人々の悩みを聞き,最適な眼鏡を見立てる。
本巻の最大の難題が5歳の男児に落ち着きがなく始終イラつき
歩くと体が傾いており原因及び対策が分からないというもので
母親の見立ては自分がシングルマザーであることが
子供に何らかの悪影響を与えているという心理に重きを置いた
見立てなのだが眼鏡橋さんの見立ては違う。
どう「違う」のかは具体的には明かせないが
「問題の本質」が心理的なものではなく物理的なものであると
見抜くに至る眼鏡橋さんの推理が圧巻であり
彼女の推理が実証された瞬間の爽快感は類例がない。

「Dr.スランプ」や本作品のような「眼鏡が人を救う」作品は数少ない。
本書は昨年(2017年)2月23日にリリースされているが
僕が2018年5月に本書を読んだ際,奥付を参照すると未だに初版であった。
本書がリリースされてから13か月以上経過しても
未だに重版がかかっていない…!
僕hこうした良書が存在することを知って貰いたい一心で
こうしてレビューを書いている次第である。

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