![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/131427935/rectangle_large_type_2_6f5eee0a8841d52518d21b8b2b881118.jpeg?width=800)
ルチオ・フルチ監督の映画「未来帝国ローマ」レビュー「本作はシュワルツェネッガーの「バトルランナー」のパクリでもリチャード・バックマン(スティーヴン・キング)のTHE RUNNING MAN)のパクリでもないッ!」
2072年の未来都市ローマでは娯楽に飢えた視聴者は
死刑囚に剣闘士(グラディエーター)の仮装をさせバイクに乗せて
バトルを演じさせ優勝者に恩赦を与えるデスゲームに夢中となっていた。
TV局は更なる視聴率獲得の為にバイク・バトルの王者ドレイクに
妻殺しの濡れ衣を着せ死刑宣告を出させ
デスゲームへの参加を強要する。
ドレイクは身に覚えのない妻殺しの汚名を晴らすべく
止む無くデスゲームに参加しつつTVスタッフの女性と懇意になって
彼女を通じてコンピュータにハッキングさせ
事件の真相を探るのであった…。
本作を語る上で課税の如く付いて回るのが
「本作はシュワルツェネッガーの「バトルランナー」(87)のパクリである」
と言う謂れのない中傷である。
本作は1983年の製作であり「バトルランナー」をパクる事など出来ない。
本作の脚本を書いたダルダーノ・サケッティは
「本作は!「グラディエーター」を20年も先取りしてる!!」
「「バトルランナー」が本作をパクっているんだ!」
と怪気炎を上げる。
![](https://assets.st-note.com/img/1708357549351-feS4l1jjXg.jpg?width=800)
映画「バトルランナー」は
リチャード・バックマンの小説「The Running Man」(82)の映画化であり
リチャード・バックマンとはスティーヴン・キングの事なのである。
スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で小説を書いた
理由のひとつは「スティーヴン・キング」って名前がブランド化して
「出せば何でも売れる」って状況に「俺はミダス王じゃない」って
反感から「いち小説家としての自分の力量を試したかった」からなのだ。
だがリチャード・バックマン名義で出した本の売り上げと
スティーヴン・キング名義で同じ本を出し直した売り上げに
大差があるのを見たキングは「何かを物語ってるよね」と語っている。
![](https://assets.st-note.com/img/1708357726787-SWmC3XqrLM.jpg?width=800)
従ってフルチへの中傷は「原作」へのパクリ疑惑への詰問へと移行する。
「アナタはスティーヴン・キングの
「The Running Man」をパクりましたよね?」
「僕(質問者)調べたんですけど
「The Running Man」はリチャード・バックマン名義で出てるんですね」
「でもそんなコト僕には関係無いんです」
「アナタがスティーヴン・キングの
「The Running Man」をパクったと認め謝罪するコトが重要なんです!」
![](https://assets.st-note.com/img/1708358300554-vOEUKKhf1i.jpg?width=800)
…全く中傷には理屈もヘッタクレもないのである。
「The Running Man」は質問者が調べた通りリチャード・バックマン名義で上梓されていてリチャード・バックマンの正体が
スティーヴン・キングである事など1982年~83年のフルチが知る由もない。
リチャード・バックマンという聞いた事もない米国の作家が書いた
ペーパーバックを何でフルチが読んでいて,
尚且つこのペーパーバックを元ネタに映画を作ろうと思うんだよ。
フルチの本作制作のアイディアの根底のあるのは
ジョージ・オーウェルの「1984」(1949年)であると
彼の肉声が録音された
特典映像「フルチテープス」にハッキリ収録されている。
フルチ「フットボール選手の更衣室まで隠しカメラがセットされ」
「プライバシーなど何処にもない」
「我々は皆『ビッグブラザー』によって監視され飼い慣らされてるんだ」
「オレは将来到来するであろう監視社会・管理社会を描いたんだ」
![](https://assets.st-note.com/img/1708358698742-lEHuVUFndS.jpg?width=800)
「ビッグブラザー」とは「1984」に登場する権力者・支配者の名称である。
映画「スクール・オブ・ロック」では大物(The Man)と呼ばれ
映画「バトルランナー」に於ける大物とはキリアンのコトだった。
ジャック・ブラックは
「大物に反抗するコトがロックなんだ」
と小学生相手に吠えた。
ともあれ「フルチテープス」の後半は「ビッグブラザー」に対する
フルチの罵詈雑言が延々と続き声のトーンが上がり続け遂には絶叫に至る。
フルチの肉声を聞くのはコレが初めてだが
これ程熱し易い瞬間湯沸かし器とは知らなかった。
フルチはキングの著作は読んでいないと言う。
「オマエに最近読んだ本を聴かれたなら
「スティーヴン・キング以外!」と答えてやるッ!」
というセリフにフルチの全てが言い表されていると思う。
余程質問者の不躾な態度が腹に据えかねたのだろう。
「マジレスするとオレはキングよりクライヴ・パーカーに注目してる」
「アイツの自称「オレは天才」ってトコロが特にな!」
映像面に於いては寧ろ「ブレードランナー」(1982年)の影響を見て取れる。
![](https://assets.st-note.com/img/1708359705253-vxfwd4t07b.jpg?width=800)
本作に於ける「ビッグブラザー」の正体に唖然とすると共に
「フルチが作ったSF映画」は「1984」が提示した管理社会・監視社会に
対する言い様のない嫌悪感が生んだ
「遅れて来た1970年代のシニカルなSF映画の末裔」だと僕は受け取ったよ。
僕は1970年代後半に人格が形成された。
だから…本作品を見てると
「チャチな世界観・チャチな特撮・チャチな批判精神すら皆懐かしい」
んだ。
僕は今…沖田艦長の様に静かに涙を流したい心境なんだ。
放っておいてくれ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?