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とよ田みのる先生の「これ描いて死ね」第4巻レビュー「漫画道は修羅のみち」

漫画は…趣味で描いてる分には楽しいけれど
「プロになりたい」と思った瞬間から地獄に変わる。
本巻はそういう話の詰め合わせ。
小学館の金剛寺編集に「試しに」自分達の描いた漫画を見せる安海達。
金剛寺編集は漫画を一読するなり
「この子は駄目だ」
「プロになるという決意がない」
と斬って捨てる。
プロ漫画家のへびちか先生は
「漫画家志望者が十万人いたとして」
「漫画を描く,いつか描くと口先だけで描かない人が9割いて脱落」
「残りの子達の中で賞が取れるのが1割」
「その1割の中で読み切りを描かせて貰えるのが1割」
「その1割の中で連載を取れる子が1割弱」
「その1割弱の中で安定して連載が続けられるのが1人いるかいないか」

…とここまで生存競争の凄まじさを語っておきながら
へびちか先生に言わせると「ここからが本番」で
「その「1人いるかいないか」を集めて
殺し合わせるバトルロワイアルがプロの世界」
だと言う。
アシスタントの幸村が思わず
「ほとんど無理ゲーじゃないですか…」
と呟くと,へびちか先生は
「その無理ゲーが楽しいんじゃない」
と答えるのだ。
巻末の「ロストワールド」はアシスタントの幸村の話。
子供の頃から漫画が好きで
いっぱいいっぱい真似して描いた
図画の授業も大得意

…二浪して美大に入って漫画の賞を取って調子に乗って
へびちか先生のアシスタントになった。
彼女はアシスタントとして卒がないし,
後輩として入って来た手島零の面倒見もいいし,お茶を入れるのもうまい。
へびちか先生の彼女の評価は「いい人」。
幸村は手島の漫画に賭ける暑苦しい情熱に圧倒される。

…てっきり手島が幸村を蹴落とし
生き残りサバイバルゲームの優位に立つ話かと思ったら
へびちか先生は
幸村を「「いい人」の描く漫画はつまらない」と斬り
手島が情熱込めて2週間かけて描いた背景を没にする。

後年手島先生は
「漫画は趣味で描く分にはいいですが,本気になったら地獄ですよ」
と安海にもっともらしく指導するが,先生は「地獄」の片鱗を感じただけ。
今も地獄の真っ只中で業火に焼かれながら漫画を描いてる
へびちか先生の「心境」は決して先生には分からないのだ。
先生は生き残りサバイバルゲームに負けたのだから。

「ロストワールド」の最後で幸村は手島から話を聞いていた
没我常態になって宇宙と一体化して漫画を描く境地に到達してるけど
きっとへびちか先生は
「例え没我状態になって宇宙と一体化して描いても漫画はつまらない」
と幸村を斬って捨てたに違いないのだ。

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