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原作:クワハリさん,漫画:出内テツオさんの漫画「ふつうの軽音部」レビュー「本作は鳩野を御本尊として崇める幸山の信仰心を「プロデュース」として描いているのである…。

あのな。

コレから僕は…。
だっれっのっ参考にもならん滅茶苦茶なレビューを書くから。
だから…誰も読まなくていいし「スキ」もくれなくていい…。
レビューを書かねえと僕の五体が爆発四散しちまうから書くんで…。
何の参考にもならないからね!

今年の春から高校生となった鳩野ちひろは中学のときに
「ハトノの声ってなんかちょっとキモくない?」
とバカにされて深く傷ついたものの鳩野の心中には
「ロックバンドのボーカルやりたい」
という野心がマグマの様に渦巻いており…
「ボーカルとしての自信と力量をつける為に!」
「夏休みの1ヶ月!誰にも会わずに!」
「公園で独り弾き語りの修行をすることにした!」
「暑い!」
「そして家ではギターの練習!」
「練習&練習!うんざりするほど練習!!」
「『知り合いに見られたら恥ずかしい』…?そんなの知るかボケッ」
「このワタシをバカにした全ての人間を!」
「絶対に殺してやるという強い気持ちでやってやるッ!!」
…というボーカル志望の軽音部1年生だ。

鳩野が夜の視聴覚教室で翌日のライブ用に組まれたステージで
勝手に歌ってたところを同じ軽音部1年の幸山厘に目撃される。

幸山はそのときの感激を次の様に語る。
「ワタシ…はとちゃんは絶対に普通の人間じゃないって」
「初めて見たときからずっと思ってたから…」
「ボーカルやって欲しくて…」
「一度歌を聴いてみたいと思ってたんやけど…」
鳩野のボーカルを目撃する幸山。
「ワタシは間違ってなかったんだって…」
「あのとき確信したんだ…」

幸山の頭の中に1枚の「絵」が構築される。
その「絵」の中ではボーカルは鳩野,ベースは幸山,
ドラムは同じ軽音部1年の内田桃,ギターは同じ軽音部1年の藤井彩目…。
「絵」の題名は「はとちゃんのバンド」。

幸山は現実を「絵」の通りにする為,暗躍を始める…。

まず現在幸山と鳩野が所属してる4人バンドのボーカル担当の男子が
自分に気がある事を利用して散々男心を期待させておいてからフリ,
バンドを脱退させ,ドラム担当の男子を他バンドに引き抜かせる。

コレでバンドには幸山と鳩野だけとなった。

次いで内田桃が所属してるバンドのメンバーが
別のバンドの男子と破局して
バンドを脱退してガタガタになっているのをいい事に
残りのバンドのメンバーと内田をケンカさせて
バンドを空中分解させ宙に浮いた内田を勧誘するのだ。

内田は幸山の所業に激怒する。
「そうやって人の気持ちを煽って」
「自分の思い通りに動かそうとするのはかなりムカつくし…」
「そういう狡(こす)いコトする厘は信用できんから…」
「一緒にバンドを組みたいとは思わんわ」

…この内田の猛抗議に対する
幸山の「回答」で僕はこの漫画の虜となったのだ。
「桃ちゃんの心を傷付けてしまってホンマにごめんなさい」
「もっとやり方を考えるべきやったと思う」
「でも」
「すべては「神」…はとちゃんの為…」
「桃ちゃんにはバンドメンバーになって欲しかった…」

幸山にとって鳩野は「神」であり幸山は「神」の為に
自らの手を汚していたのだ。
幸山の愛読書は遠藤周作の「沈黙」。
「沈黙」と言うのはイエズス会の若い司祭が長崎奉行所に捕らえられ
「身の安全」か「神への信仰」を貫くかの2択を迫られる話…。
有体に言えばイエズス会の若い司祭が
踏み絵を踏むか踏まないのかの葛藤を描いているのだ。

幸山は…自らが信ずる「神」の為に
人の心を弄ぶ鬼畜の所業を繰り返して行く。

本作は現在第2巻まで出ているが第3巻に収録予定の
「幸山厘による藤井彩目の説得」
が実に凄まじい内容なのだ。
藤井は交際していた同じバンドの男子に別れ話を切り出され
バンド内に居場所がなくなる。

ソコをすかさず幸山が勧誘するのだ。
「(今まで崇拝していた男に捨てられた)
藤井さんには新しい「神」が必要やと思う…」
「彼氏はダメやで」
「恋人なんぞよりも圧倒的で絶対的な「神」が…」
「ワタシ達「弱い人間」には…「神」が必要なんよ…」

幸山の「やっていること」は鳩野を「御本尊」とする新興宗教の勧誘であり
「勧誘」を容易にする為に「標的」の人間関係がズタズタにするのに
積極的に加担し,人間関係をズタズタにしたのちに優しく声を掛けるのだ。

「鳩野のバンド」のこけら落としは大失敗に終わるが…。
先の述べた通り鳩野は夏休みの全てを公園での弾き語りの修行に
充てているのを見て取った幸山は鳩野を次の様に評価する。

「あの初ライブは…はとちゃんに与えられた「受難」…」
「神に「受難」はつきもの…」
「でもはとちゃんはソレを予想以上のやり方で乗り越えた…」
「「受難」を乗り越えて「復活」を果たした
はとちゃんがきっと何とかしてくれる…」
「ワタシの考案した浅墓な策など…全て唾棄すべきもの…」
「最初からはとちゃんの起こす「奇跡」に全てを委ねるべきだったんだッ!」

「ふつうの軽音部」の主人公は鳩野だと思っていたが…。
その実態は幸山の鳩野に捧げる「信仰」を描いており…。
幸山の「信仰」が「プロデュース」として顕現してるのだ…。

あのな。

ぜっんっぜっんっ「ふつう」じゃねえんだよ!

キャラクター造形で普通にスキなのは内田桃だけど…。
キチガイ狂信者全開で一瞬も目が離せないのは幸山厘。
人の心を弄び続けるこのオンナ…。
いずれ誰かに刺されて
「ワタシは神の御許に行く…」
と恍惚としながら殉教者として死んで行くに違いないんや…。

「軽音部」って言うと京都アニメーションのゆるふわアニメを連想するけどアレにはなかったバンド内でのケンカや恋愛問題…。
有体に言えばメンバーに男が出来て別れたりすると
バンドの存続が困難になるって「男問題」を
赤裸々に取り扱っていてすっこっしっもっゆるふわじゃありません。
寧ろ積極的に「男問題」を利用して
他バンドから見所がありそうなのを引っ張って来るという
非常に生々しい内容ですね。





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