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サークル・シーズーなでなで(タンさん)の「響け!ユーフォニアム」吉川優子&中川夏紀ファンブック「どこまでも付き合うよ」レビュー「『吉川優子に報われて欲しい』と思われてる方に是非読んでいただきたい1冊ですね。」

先般アニメの3期が完結した「響け!ユーフォニアム」という作品に於いて
吉川優子は作劇上の要請で「損な役回り」を演じさせられている。

黄前久美子が1年の際に,1年でありながらトランペットのソロパートに
抜擢された高坂麗奈に対しあくまでも3年の中世古香織を推し続ける人物。

「実力」よりも「年功・情実」を優先すべきと主張する吉川は
再オーディションで中世古が高坂に敗れて泣き崩れる。

黄前が「吹奏楽部の3年間」を回想する際にも
「高坂と吉川の対立」が挙げられ
「高坂と中世古の再オーディション」は第1期の山場となっている。

「悪者」「憎まれ役」って貧乏くじを引かされて
100点満点でマイナス100点からスタートさせられた挙句
全国模擬試験で50位以内に入り,
学年首席で卒業生総代として答辞を読む人物…。
すなわち田中あすかとスペックを比較され続けるという…。
無理ゲーを強いられた吉川はしかしながら…

「中世古が絡むと判断力がアレする」

以外,殆ど欠点らしい欠点が見当たらない。

よく気が付き
後輩の面倒見が良く
同学年の悩み相談に良く乗り
かつて敵対した相手(高坂)に頭を下げて助力を依頼出来る…。
マイナス100点からコツコツ徳を積んで100点にして…
全国大会に進めずひとり泣き崩れ
副部長の中川夏紀に支えられた
悲嘆と悔恨をおくびに出さずに
「顔を上げろッ」
と部員に檄を飛ばし…。

こんな人間が…未だに正当に評価されないのはおかしいだろ?
と憤り…「吉川に報われて欲しい」と思う人間が顕れるのは
当然かつ必然であって本書…「どこまでも付き合うよ」の
作者タンさんもそうしたおひとりなのではないのだろうか。

田中あすかが次期部長の吉川優子の補佐として付けたのが中川夏紀で
中川は吉川の人となり…長所と短所を良く知り…。
中川は吉川の公私共のパートナーとなって行き…。
卒業後もふたりで現役の部員の為にアイスクリームの差し入れをして
陣中見舞いをして吹奏楽コンクールにも揃って応援に来ている。

だが実際…吉川は中川のコトをどう思い…。
中川は吉川のコトをどう思っているのか…。

ソコのところをアレコレ想像して漫画を描くのが二次創作の本領発揮で
本書は中川が「ワタシ達…付き合わね?」と吉川に告白して
吉川が非常に混乱しながらも中川の気持ちに応えて行く話。

人の真剣な告白を真面に受け取らなかったのが
細田守監督のアニメ版の「時をかける少女」で
「人の真剣な思いを真面に受け取らないと大変なコトとなる」訳で
大事に至らなくて本当に良かったと思います。

まあ…吉川の心中では「十分大事に至っていた」訳で
「公私共のパートナー」が「極私的なパートナー」と
なるまでを丁寧に追っていて吉川と中川が共に報われて
僕の魂も報われた思いです。

「ワタシ…アンタの事がライクじゃない方で結構かなりスキなんだけどっ」

この…ここぞと言う場面で直球で勝負するトコロに
タンさんの吉川の素晴らしさが結晶化してるのです…。

内容は全年齢向けで「生々しい描写」が苦手な方にも
比較的抵抗なく読めると思いますし…何より
「吉川優子に報われて欲しい」
と思われている方に是非読んでいただきたい1冊ですね。

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