言葉にせずとも
真夏の休日。母と二人で旅行に行った。
あんたを育てて良かったわ、大きくなってもこうして一緒に旅行に行ってくれるんだもの。並んでのんびりとアイスを食べながら、母は楽しそうに言う。
母の言う通り、私は大人になった。途方もなく長い、ほんの一瞬の時間を過ごすことによって。
果たしてそれは、無意味に時間を重ねただけの「大人」ではなく、一緒に出掛けるだけで大喜びする両親が、ここまでかけてくれた時間に見合っただけの人間になったということなのだろうか。
そんな風に思う私をよそに、母は続ける。ずっと前、あんたが生まれた時、お父さんと二人で子育て方針を決めたのよねぇ、と。
そして、指を折りながら、いくつかの目標を挙げた。
その言葉を聞いた私は、へぇ、すごいね、と目を丸くした。
初めて聞いた両親の「子育て方針」は、そっくりそのまま、私の掲げる人生のモットーと同じだった。
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