投票コメント集【RADIOラジオ】NEMURENU35th

皆さん、こんにちは。
村崎カイロの中の人、1号です。

眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー「ラジオ」読者アンケートに多くの方から投票コメントを頂きました。
コメントを募った時の私の書き方が少し悪くて、「コメントは300文字以上でよろしくね!」と書いたところ、「一作品の選評につき300文字」と思われた方が多くいらっしゃるようで。すみません・・・全文字数で300文字以上ということでした。フォームの設定で入力文字数が300文字に満たないと送信ボタンが押せないように設定してありました。
さらに説明不足をすみません。今回の投票は順位付けせずに三つを選ぶことになっておりました。順位を付けて下さった方、悩ませてしまって申し訳ございませんでした。次回の投票時に改めてルールをまとめておきます。

そして集まった投票コメント。
異様な熱気を発しております。

なんというか・・・ここから先は濃いですよ。
異界です。重力が平地と異なります。

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皆様、所用は済ませてございますか?
お茶とお菓子のご準備は宜しいでしょうか。
ご準備の整った方は「 禊 」をしてからお進み下さい。
(この先は1万8千文字ございます。)
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投票コメント紹介


※記載方法等、転記に間違いがあったらこっそり私にお知らせください。

01「おにいさまへ・・・」さん

"1『ろくろ首の胴の方』海亀湾館長  コメント 先月書いた私の小説の中に、金縛りのシーンがあって、興味深いと思って読んでいたら、この作品の中に猫が金縛り中にお腹の上を歩くというシーンがあって、その夜、私は軽い金縛りにあって、3年前に死んだ私の猫がしっかり出てきましたよ。お腹の上を歩いていた。久し振りに会って嬉しかったけど。『轆轤首』の漢字が怖い。ほんとに出て来そう。ロフトのある社員寮が印象的だった。映画の『スピード』まがいの出来事が進行したり、アイディア満載のいい作品でした。ちなみに私の小説では金縛りはこの作品みたいに怖くなくて、天使が出て来て一緒に手を繋いで空中を飛んで、天使は目に白い包帯をしていて、二人で、布団で寝ている自分と手を繋いでる天使を空中から見ている、という感じでした。私にはここまで怖くできない。なにかが止めている。首のない胴が歩き回るなんて。キャー!

2『怪談語り「雛具師のラジオ」』ムラサキ コメント 私は東京で生まれて4才の時にとんでもない田舎に引っ越して来たんです。辺りは田んぼばっかりでなにもないんです。道路も舗装されてない。父はそこに建てられた工場の工場長になりに来た。この作品は私が実際その別世界で見た出来事に近かった。分かりやすいし、居心地がよかった。私には姉もいたので、お雛様は高い物じゃないけど、ちゃんとしたのがあって、お雛様を雛祭りの日を過ぎても片付けないと、なかなかお嫁に行けないという、ことわざ? みたいなのがあって、母は「それじゃあ、まだ片付けるの止めましょうか。あんた達があんまり早くお嫁に行ってしまわないように」そう言ってた。泣けた。その村には立派なお寺や神社があって、お祭りやなんかがあって、それもなんだかこの作品に出て来るみたいな感じでした。

3『ラジオマン』クマキヒロシ コメント 今、もう一度ざっと読んでみたら、凄くよかった。こっちを2位にすればよかった。というのは冗談です。この作品みたいに、あり得ない超常現象みたいなことを書いた小説って、どこにでもあるけど、この作品にはその超常現象にストーリー上の必要性があって、だからただの奇をてらったギャグっぽい小説じゃなくてそれは凄くよかった。プロットもちゃんとしてて、この手の作品にはあまりない、しっかり感があった。ラジオというテーマに忠実にどこまでもついて行くのは気持ちがよかった。サラリーマンの出て来る小説って、大概面白くないんだけど、これはそんなことなかった。日常を超えた世界だからだと思う。日常と異常な世界が同席していて面白かった。よくできた、小説として上等なできばえでした。"

02 「まる」さん

"海亀湾館長様「ろくろ首の胴の方」
誰もが1度は経験のある金縛りからの、リアリティーのあるラジオの現在進行形の語り。2ちゃんねるにスレッドが立ち、リスナーから次々に情報が入る。
今ではTwitterなどの情報から拾うのですが、ラジオ時代はリスナー様からの情報でラジオが進行していたことを思い出させてくれます。
そして、主人公の胴だけが勝手に動いているのか?との疑念が入ったまま読み続けると主人公にはなにもなく(ちょっと形跡は残る)、読み手は?となり、ろくろ首を退治する方法が浮かび、読者を引き込むところが、もう既に一冊の本を読んでいるようでした。

クマキヒロシ様「ラジオマン」
こちらもコメントに書かせていただいたのですが、普通のサラリーマンと思いきや、実は電波を自分で拾うことができる超人であることがわかる。
幼い頃に病気にかかったことがきっかけではあったが、主人公はそれを楽しんであたる。
親友(わたしにはそう感じました)との絡みは、女性にはできない爽やかがあり新鮮でした。
大切な親友ともラジオで繋がる主人公。
「遠くにいても一緒だよ」そんな言葉が主人公から語られているかのようでした。
もしかしたら、亡くなった人とも周波数を合わせて交信できるのか?と超人が登場するのに、読後には記憶に残る作品でした。

Koneko様「動画配信ネムキリスペクトに初参加ですにゃ」
ムラサキ様も書いていたように、編集能力が非常に高い。そればかりか、読み手も本物のラジオを聞いているような錯覚を覚えるところも凄いと思いました。
末尾に「~にゃ」と付け加えるところも、ラジオでは良くありました。
「天は二物を与えず」とは嘘だったんだなあ、と本当に思う作品でした。"

03「koneko33」さん

"作品:
1つ目:ひらさわ たゆさん ラジオ原稿23:50から
2つ目:磯貝剛さん オーディオブックってラジオドラマじゃん
3つ目:クマキヒロシさん ラジオマン

理由:
1つ目:私も学生時代によくラジオを聴きながら
勉強したり本を読んだりしていましたニャ🐾
たゆさんのラジオ原稿は流れがとてもスムーズで
自分の当時の気持ちも蘇ってきて📖
とても楽しかったですにゃ🌟

そして、当時は聞き手だった自分がYouTubeやnoteという
一般的にはラジオとは異なる媒体ではあれど
語り手として創作できたことにもにゃんだか感動を覚えましたニャ(*´ω`*)

また、ラジオの良い所は自分の知らにゃい曲を沢山知ることが出来る点に
ありますにゃ🎧

それは言うなれば、分からない単語を辞書で調べた時に
知らにゃい単語をついでに覚えてしまう感覚にも少し似ていて
知識欲だけでにゃく、心も満たされる不思議にゃ気持ちににゃります〇

元々知ってる曲ニャら共感が強まるし、知らにゃい曲ニャら
好奇心が強まるし、どちらにしても、ラジオは楽しく
それを今回創れて凄く嬉しいし、そのきっかけを頂けて光栄ですにゃ☕

2つ目:礒貝さんがご自身の記事の中で描いておられたヘッダーが凄く素敵で
「流石だニャー」と思いましたニャ(*´ω`*)

また、ラジオドラマという言葉を磯貝さんの記事で初めて拝見して
そこからヒントを得て、私が朗読する版ではSE、つまり効果音を多用して
聞くだけで箱の世界観をより聞き手に感じて貰える作風にする事が出来ましたニャ🌈

「1からエヴァを作り直したい。いや、可能ならゼロから作り直したい。」
と言っていた庵野秀明監督にも刺激を受けて
箱を新たにゼロから作り直していますにゃ(^^♪

もちろん、前回までの箱も当時の私が出せる全力だったし
頂いた物語や朗読、「音源を最大限に駆使して最高の作品に仕上げられた!
寄せて貰えた想いを最後まで丁寧に紡げた!」という確信はあるのですが

改めて、りりかるさんの朗読や千葉さんの音源を聞き直したり
礒貝さんの箱を読み直すと、「もっとこう表現しても楽しいかも!!」
と考える、いや、感じるようににゃりまして(#^^#)

そう感じさせてくれる素晴らしい記事が今回の礒貝さんの記事でしたにゃ🌺

そんにゃ訳で、どこまで出来るのかは分かりませんが引き続き、
創作に励んでいきたいと思いますニャ(≧◇≦)

私は猫にゃので、気まぐれだし、基本的にはのんびり屋さんで
感情も比較的穏やかですニャ👒

ま、言い方を変えれば意外と?飽き性でクールにゃ所も
あるのですにゃ🎈

その私がここまで惚れ込んでしまう作品を創られた礒貝さんには
脱帽ですし、その動画化にあたって朗読や音源を提供して下さる
りりかるさんや千葉さんにも感謝でいっぱいですニャ⛵

3つ目:クマキヒロシさんとは今回のイベントで初めて
相互フォローになって頂けまして(#^^#)
私のラジオを褒めて貰えて嬉しくニャって、お礼にと彼の作品を
拝読したのですけど、とても興味深い作品内容に一瞬で惹かれましたニャ❄

まずタイトルのラジオマンがビリージョエルのピアノマンを連想させて
実際、彼の曲を流しながら読んでみると、にゃんだか雰囲気もあっていて🎹

また、私自身が猫にゃので普通の人より耳が良い分、たまに電波的にゃものを
受け取る時があるので、そこにも共感しましたし、
その上で常世とは異なる世界から想いが届く設定にも凄くムネアツににゃりました🌸


まとめ:
以上の理由で個人的ニャ優秀作品として上記3作品に
投票したいと考えますニャ(*'▽')
宜しくお願いしますニャ🍫

最後に、長文を失礼しましたニャ(*ノωノ)
私自身の記事も取り上げて頂けて凄く光栄でしたし
こうした運営そのものにもリスペクトしてますにゃ🌷

今後とものんびり仲良くしてやって下さいニャ🍡
毎日お疲れ様ですにゃ🌼

koenkoより🐈"

04「エベシト人の手紙」さん

"「人間性の拗れた鬱屈を腹底に抱えて時に其れを吐き出そうと創作に走る」、そんな三篇を思いつくままに選ばせていただきました。

一、千葉貴史氏「ラジオの脳裡」

「憶測のオクターブの氷柱の表層」から「咀嚼されてしまった私の全て、借り物」と知るまでの間には、「少年時代の衝動をお焚き上げ」するときもあれば、「感動に狙われた世界に降り積もる私のストックを覗く夢」もあり、「混沌を口にした罰を抉る自尊心を奉る」ことだってあるのです。
宙空を飛び交う電波に波長を合わせようと、曇りを帯びた銀色のつまみを少しずつ行ったり来たり手探りに、回して試す試行錯誤の小さな小さな試みの中から、炙り出しのように現れてくる不可思議の紋様を楽しみながら読ませていただく過程では、拙いふた切れの極短詩返信も生まれました。
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炊き上げて滴りゆくは虚栄心テーブルクロスの風を探して
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オクターブ、ナイフで削れ無機質に。

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一、くにん氏「冥界ラジオ」

くにん氏のお名前はこのところよく目に入ってきていたので、「冥界ラジオ」という明快な題名に惹かれて氏の作品としては初めてこの掌編を読み始めたのだが、ラジオ番組を模すという仕掛けでの開幕はぼくの好みからするとやや冗長だった。
しかし話が進むに連れ、人と鬼との滑稽なやりとりの合間から、苦味ばしった上質の99%ブラックチョコレートの風味がにじみ出し、灼熱し、弾け飛び、そうして軽やかな残虐性をともなって人類の愚かさを、こちらの胸の奥底にまで刻み込んでくるその手腕には脱帽せざるを得なかった。
冥界ラジオに思わずチューン・インしてしまった同志諸君よ、今はすでに地獄の獄卒として懸命に働いているに違いない苦人氏に我らも続こう。人類の未来は暗くとも、灼熱の地獄の業火に照らされて、我ら獄卒志願者の未来は黒々と紅蓮の輝きを放つのだ!

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一、千本松由季氏「クスクス笑ってる花とウインクしてるペニス」

80,000字弱、400字詰め原稿用紙にして200枚に近い中編の力作です。

美大出だけれど絵の描けなくなったゲイの画廊店員が、若いピアノ弾きと出会うことで、二人の共作として絵を描く力を取り戻し、何かを成し遂げ、けれども成功に怯えて逃亡し、しかし完全に過去を断ち切って逃げ切ることもせずに、成り行きの中でもう一度幸せを掴もうとする。そんな物語です。

「絵≒色」と「音」の世界が言葉で気持ちよく表されており、それが男同士の恋の幸せと重ね合わされて、「一幅の画」としてきちんと立っている作品だなと感じます。

語り手の画廊店員が、ピアノ弾きよりだいぶ歳上だということがあとのほうまでぼくにはわからなかったので、少しイメージがつかみにくかったことと、成功を書いている部分で伏線がまったくないため逃亡が唐突に思える点や、その逃亡から元の関係性へ戻る過程にもう少しぎくしゃく感があってもいいかなという感想など、荒削りな面は見受けられるものの、そういった部分を膨らませた完成形を想像するのも楽しいですし、何よりも作品全体にうっすらと満ちている語り手の曖昧な不安感が、エピソードの積み重なりの中で行きつ戻りつ解消されていくところに心を打たれました。

読んでいく中で、何ヶ所か涙腺がうるみ、終盤近くの「自分の中の許せない何かを許す」というところではぼろぼろと涙がこぼれました。ぼくも軽めのアルコール依存でクリニックに通った経験もありますし……。

以上、勝手な感想を書きましたが、最長100枚ほどの作品しか書いたことのない者としては、この長さでこれだけのものを書けるというだけで尊敬に値します。いくらかでもご参考になれば幸いです。

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今回のNEMURENU35th、全部の作品には目を通せていませんが、「投票ルール変更」をきっかけにムラサキさんのお人柄に打たれて参加させていただいたこと、とてもいい経験になりました。

こうして感想を書くことも含め、新しい人との出会いというものの持つ可能性を、引きこもりがちな自分なりに、改めて感じることになりました。

あっちこっちと関心が跳びがちな人間ゆえ、こちらの企画に参加することもなかなかままならないかもしれませんが、以後お見知りおきいただければ幸いです。

無記名投票という趣旨をかなり逸脱しておるかも分かりませんが、以上、ネムキ初参加の弁でありました。"

05「小牧 秋」さん

"小説とは何か、面白い小説とはどういうものであるか。
私にとっての『面白い小説』は、
読書でしか経験できないストーリーに没入させてくれたり、主人公の気持ちを追体験させてくれるもの
「ではなく」
その作者にしか書けない『言い回しを楽しめるもの』である
という認識が昔からあります。
私も日本語の文章が書けます。今こうしてキーボードを叩きながら日本語で文章を書いています。五十音×2の平仮名とカタカナ、そして少しばかり多すぎる漢字が使えさえすれば誰だって日本語の文章は書けます。けれど、作家(プロでもアマでも)の書く文章には「ああ、あなたが書いたのですね」と一発で分かる力があります。あれは一体何なんでしょうね。私と同じツールを使いながら、全く違うものを作り出すあの能力。
私では生み出せない奮った言い回しに出会いたい、その気持ちで私は小説を読んでいます。


今回のNEMURENU_35thに寄せられた作品のうちから3作を選んだ基準は
 ✔「ラジオ」のお話になっている
 ✔ 独自性のある言い回しがある
大きくこの2つとなります。
その上で、

●クマキヒロシ「ラジオマン」
●としべえ2.0β「[小さなお話] 蒸気ラジオのささやかな航跡」
●くにん「【掌編小説】冥界ラジオ」

を選出します。


言い回しが面白いな、と思ったのはとしべえ2.0βさんの

予測しては失敗し失敗の次には、
まぐれ当たりでおめでとうと。

「まぐれ当たりでおめでとう」、こちらです。
失敗とは大なり小なり悲劇でしょう。その失敗にめげず(いや失意のままかもしれません)再試行再挑戦をしてなお失敗。そして人生にありがちな「前回の失敗の理由が分からないままなぜか今回は成功してしまう」。
あるあるです。もういいかと思ってそのまま反省しないやつです。本来なら上司に怒られるパターンです。でもそんなまぐれ当たりにおめでとう、擬人化された陰電や同意体(同位体)が無邪気に健闘を祝う、この陽気な一文が非常に気に入りました。まぐれ当たりでおめでとう!声に出してみたい言い回しです。

また、言い回しとは少し違いますが、効果音や叫び、息遣いなどといった「音」がどう書かれているかは、作家のこだわりやセンスが顕出しやすいポイントだと思います。
(余談ですが、私の恩師は趣味で探偵小説を書きます。年に何冊も専門書やエッセイを上梓するので文章力は非常に高く、あらゆることに造詣が深いのでその探偵小説も吃驚するぐらい面白いのですが、怪人が「うぎゃぁあああああああッ!」と叫んだ時には少し笑ってしまいました。何となく時代を感じます。)

今回選出した3作は共通して
「ラジオのノイズ音の言語化」に挑戦しています。
私が書くのであれば「ザー」、これ以外には思いつきません。素人の限界です。

ざ。ざじぜ、ざ。ざずずぜ、ぞ。
(略)
しゅしゃーし、しゃーししし、ししぇ。


としべえ2.0βさんの自由なノイズ音。カタカナは混じらず平仮名だけ。
面白いと思ったのは「濁点が入らない平仮名」でノイズ音を表現している点です。陽気な素粒子たちのドタバタ可愛いお話をこのノイズ音が補強しているように見えました。

 ・・・・・・ーー廾・・・・・・ーサ・・・・・・。
 サ廾・・・・・・サ・・・・・・廾廾・・・・・・ザ・・・・・・。
 メ・・・・・・ザー・・・・・・・ピ丗丗丗十・・・・・・・メイ・・・・・・。
 ザザー・・・・・・・。

くにんさんの記号が混じりあったノイズ音。読めるような読めないような絶妙な記号のセレクトには大変に興奮しました。「知っているものに似ているけれどなんだかちょっと違う」はホラーへの誘いの基本であり金字塔。冥界が現世に強制的に介入してきています。
そして始まる冥界レイディオ部分はむしろ日常感が溢れるくにんさんらしい会話劇ですが、前後にこのホラーな文脈のノイズ音を入れることで読み手を何だか説明のできない不穏な気持ちにさせる、所謂「ネムキ」らしさをひしひしと感じました。

ザザーっ

ザザーっ

ザザーっ……

クマキさんのノイズ音はあまり捻りがなく普通、のようにも見えます。しかしながら最後の促音は平仮名の「っ」を選んでいます。「ザザーッ」だと無機的一辺倒に感じますが、ひとつ平仮名が混じることで有機的な印象が生まれます。無機的な電波に声と思いを乗せる友人・安波、人間でありながらラジオになった主人公・友部、そんな彼らのノイズ音は「ザザーっ」がピッタリなのかもしれませんね。
また、ノイズ音はとても短い。友部は彼自身がラジオであるので「ラジオ番組を楽しむ」以前に「電波を拾う・ザッピングする」ことが彼のアイデンティティです。お話のラストでラジオマンは”到底拾えない微弱な”電波を拾い集めます。幽かで、儚く、途方もないこの行為と彼の強い意思が、短く繰り返されるノイズ音に表われているのだと思いました。

そして私はあっさり意見を翻します。

私にとって小説は言い回しが全てであるかのように書いてきましたが、クマキさんの「ラジオマン」は言い回しよりもストーリー構成と見せ方があまりに素晴らしくて完全降伏しました。とても面白い「小説」でした。

序盤、友部がラジオマンになった理由・電波を受信できる理由が詳細に説明され ” OK、この世界で友部は電波を受けることができるのね ” と私は納得しました。
中盤、ラジオマン友部はradikoに嫉妬します。曰く、『僕の能力では昔のラジオなど聴けやしない』。万能ではないラジオマン。
しかし物語の終盤、ラジオマンは昔のラジオを聞きます。そこに明確な説明はありません。説明はないけれど、構成と見せ方の力で「そうか、友部は昔のラジオを聞けるようになったんだ」とすんなり納得してしまう。こんな気持ちの良いペテンは小説にしかできません。
言い回しを最重視していると思っていましたが、どうやら私は小説にしかできない技巧(それはペテン)も同じく愛しているのだと、クマキさんの小説で気付かされました。

作中、ラジオで語られた事は全て引用表示となっています。番組のタイトルコール、どうでもいい会話、ちょっといい話、天気予報、不穏なニュース。
そして、過去の安波のラジオ番組《tomobeの夜》。
安波のお喋りに友部はいつものように突っ込みを入れますが、それは鍵括弧でくくられ交わされる今までの会話とは違い、引用表示とその外の文章であり、その交わらない境界線がちょっと悲しい。友人との別離なんていかようにも俗っぽくお涙頂戴で書くことができるでしょうに、クマキヒロシはそれをしない。
ちょっと悲しい、でもそこにはロマンがある。本当に面白い小説でした。
"

06「文塚」さん

"三作品を挙げさせていただきます。

・「ラジオマン」/クマキヒロシ
・怪談語り「雛具師のラジオ」/ムラサキ
・gif「 personal radio」/y. 


以下、それぞれの作品への恋文です。(文中敬称略。)

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「ラジオマン」/クマキヒロシ

読み終えて、静かに大きく息を吐いて、肺はカラになって、しかし息苦しさはなく、ただ熱だけが、確かに残っている。
そんな柔らかい興奮の残る作品でした。とても好きな作品です。
凡庸と異能をめぐる、軽妙で間の抜けた独白と会話、その気軽さ。主人公の「無害な異質さ」を、私はとても微笑ましく愛おしく思います。
「非凡」を望み、求め、社会から出て行こうとする若者の、その望み故に露呈してしまう平凡さ。それは普遍的な、そして残酷な人生のテーマです。私は登場人物たちに、その世界線に、親近感を覚えて安堵した気持ちになるのですが、そんな日常描写の中に、戦争前夜的なキナ臭い社会情勢がさらりと挿し込まれます。その余りにも淡泊な描写。主人公のリアルと、私の生きる世界との齟齬。私は瞬時に緊張しました。「主人公の異能」と云う突飛な虚構をすんなりと受け入れて、心を開いていたが故に産まれる、新たな虚構との真剣な対峙、隣人と初対面の挨拶を交わす様な、どこかぎこちなく新鮮な緊張感。それは大きな、大きな読書の悦びです。
スレた本読みの常として、その緊張の中に「何故、そんな設定が必要なのか?それはこの作品にとって、物語にとって、必要なトリガーなのか?」とメタな読み解きをして、期待や不安を持つのも事実です。
期待。不安。両手の重みを感じながら、読み進め、読み終えて。
見事と云うよりありません。
そこにはロマンがありました。感動の強制でない、値段の付かない、はにかむようなロマンティック。
最後の節を読み終えて、静かに大きく息を吐いて、肺はカラになって、しかし息苦しさはなく、ただ熱だけが、確かに残っていました。
これは我々に似た世界の話であり、全くの虚構世界でもあります。
根を同じくして、その花の色を異にして。
「近未来」ではなく「近似未来」と呼びたいような、手を振って別れた双子世界、見知らぬ恋人の様な、気恥ずかしい愛おしさ。ラジオマン。主流も傍流も、零れ落ちた流れすらも拾う、受け身のひと。受け止めた名言を取り込み脳に録音し、垂れ流すだけの男。ラジオマン。普通の男。
それがいつか、自分の言葉を話し出すとしたら。挨拶でない言葉を、発する時が来るならば、と。
それを、そんな世界を描き出すことが、クマキヒロシと云う凡人の持つ、誰にも真似できない異才であろう、と私は思います。
とても、好きな作品です。
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怪談語り「雛具師のラジオ」/ムラサキ

ラジオには沈黙が許されません。鳴り続ける事でのみ、自己を全うします。
ラジオが鳴らす沈黙は、嘘の沈黙です。世界が沈黙するのでなく、世界の沈黙を、ラジオが虚ろに鳴らすのです。
模造された沈黙。そこには容易に、怪異が忍び込みます。
次々と、群れ成して、止め所無く。
連作掌編の愉しさとは、舞台世界の拡大と聯絡であろうと思います。
世代を跨いで積まれる怪異世界を私は存分に愉しみ、自分も何か、この世界を広げてみたい、石のひとつも積んでみたいと、悶えるような興奮を覚えました。好い作品は作者が記すのみに終わらず、その余熱で世界を灼きます。読者はその焔に灼かれながら、灼かれる世界と自己を眺めながら、絶頂間際の様な、生暖かい息を吐くのです。ほぅぅ。
ひとつひとつ、それぞれが十分に魅力的な怪異譚たちが、背中越しに、そっと、手を繋ぐ。その静かな仕草。それを震えながら、指の隙間から覗き見る淫靡な情熱。ああ連作は、愉し。それを再確認する読書でした。
現実の模倣品を創作する雛具師。「同じであって、同じでないもの。」その矛盾的創造は、まるで「実話怪談」と云うジャンルそのものです。「本当だよ。でも本当じゃないよ。でも。」と作者は嘯き、読者は「オバケなんて嘘さ、でも。」と二の腕を擦ります。とても魅力的な舞台設定です。
しかし、語りは終わります。
語り手の命、そして「語りの根拠」迄もをあっさりと消失して終わる結末に、騙されたような、足元が抜けたような、闇夜に探り当てた手が母親のものでなかったような、震えて声を上げる間も許さぬ「常の終わり」を感じました。
或いはこの怪談は、ここが終着では無く、むしろここから始まるのではないか、とも思います。
いつか滝沢氏の、滝沢家の、まだ語られぬ断片が、誰かの引き出しから、ラジオの沈黙から、読んだ者ののうみそから。
流れ出す時が来るのではないか。
そう感じさせてくれました。
読んだ者の心に根を張って、水を遣りたくなるような作品です。末永く愉しみたいと思います。
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gif「 personal radio」/y. 


眺め始めたらもう永遠。愉快なgifは、麻薬的です。
全体を見て、細部を見て、全体を見て、今度はこっちの細部を見て。
ひとが創っている、と云うことを、知ってはいても理解が出来ない。
なんだろうなあ、これは。と。思いながら、悩みながら。
眺め始めたら、もう永遠です。
gifとはループ、即ち時間を閉じ込めることだと云われます。
しかし私は、そこに続きを見てしまうのです。
世界の瞬間を切り取って、閉じた円環を這わせているのではない。
同じように見える光景が、続きを続けている。
続きを続け続けている。
続きが続き続いている。
そして或いはいつか、と。
私はそう思い、そう思いながら眺め、やっぱり今日も眺め終わりません。

それぞれの、ラジオたち。
語り手との繋がりに光と熱とを捜す、クマキヒロシ世界のロマン。
語り手の退場が日常と新たな不穏を呼ぶ、ムラサキ世界のロマン。
その二編が格別に愛おしいからこそ。
語り手と共にあり、でも、つれない態度のy.のロマンもまた、一層輝いたように思います。

以上。"

07「クマキヒロシ」さん

"[gif] personal radio
もはやファンですから、言わずもがな。
すくない線と、キャラクター達でどうしてこんなに世界が広がるのか?
y.さんの魔法たるや
これはもう、美味しくて仕方がありませんでした。
ラジオはOnAirと言われて、空気中にその番組が流れていることになり、それは共有空間の占拠でもあります。
にもかかわらず、
あの、天使であり、悪魔である二人のOnAirを、こうも興味がなさそうに聞いていられるなんて…
天界も、魔界も、人界には面倒な奴がいるなと思っているでしょう

非活劇的挙動「これはバラードではない」
いやぁ、これは面白い。
セリフとセリフに関連性をつなぐ方向がある気がしています。
おはよう→おはよう。そういえばさ→なになに?
といった風に、ひとはその言葉の端を糊代にして、次の会話を紡ぐにいきますよね?
そこが!無い!
いや、もっと言うと有るけど分からない!
んですよ。僕には
ところが他の方はちゃんと読めてる。
つまり、かなり高度なところでものがたりが動いていたんです。
東京界隈で、あちこちと場面転換、時空転換があるのに、いずれにいる東雲も北見もニセモノだと、いやどの時代どの場所の東雲達、北見達が本当の気持ちを言うのか…
掴めないまま終わりました。
解題を読みさらに、二人の性について思いに耽ります。
お互い、1人の人を愛していたけど、その三角形の底辺では憎しみ、共有し合い、そして哀しみを分ち。分かりあわないことを
信頼しあっていました。
面白かったです。
【ラジオの脳裡】 詩作 千葉貴史 #ネムキリスペクト

この作品は、音とリズムと、言葉の怒涛的な流れに惚れてしまいました。
おそらく受け止めなきゃならないメッセージの1割も受け止めて無いです。
ただ、カッコいいと。
たとえば、僕は音楽を聴くときに、その歌詞は入ってこないで、音楽性が先にきます。
その後に歌詞の言葉が感情を彩るのです。
それに似ていた気がして、衝撃を受けました。
またぜひ読ませて欲しいです。"

08「新入り獄卒」さん

" 新聞のラジオ欄の如く様々な作品がずらりと並んだ本アンソロジー。それぞれが異なる素晴らしい魅力を持っていて、その中から三題を選ぶのはとても困難な作業ではありましたが、純粋に「私」が特に楽しませていただいた作品を上げさせていただきます。(他の視点からの講評は、他の方がされると思いますので・・・・・・)
 なお、順番はアンソロジー収録順です。

「05 動画配信「ネムキリスペクトに初参加ですにゃ」koneko」
 ひらさわ たゆさんのラジオ原稿「23:50 バスルームから愛をこめて」を基にラジオ番組風の動画として配信された本作、番組を進行するkonekoさんのお声、その背景で流れる音楽、場面に合わせて緩やかに変化する画像など、とても完成度が高くて驚かされました。このような感じのアイドルや声優さんの10分、15分ラジオ番組、実際にありますよね! 
 自分の意見を作品に反映させようとする作品はその点から、何らかの事象の分析についてのものはその分析内容から、そして、エンターテインメントを目指す作品はそのエンターテインメント性から評価されれば良いと思います。
 ほんわかとした楽しい作品を創ろうと意図して、それを見事に達成した本作には、とても楽しませていただきました。ありがとうございました。
 なお、本作の基となったひらさわ たゆさんの「04 ラジオ原稿「23:50 バスルームから愛をこめて」も選びたかったのですが、申し訳ありませんが枠の関係で・・・・・・。たゆさんには、この場で心からの賛辞をささげさせていただきます。


「08 小説「そこに愛はあったのかい?」ひゅうが」
 本作はひゅうがさんの実体験を基にした小説とのことです。
 本作はとても読みやすく、「僕」の独白がすっと心に入ってきます。既に大人になっている私には、その独白は理解もできるし同意もできるけれど、とても眩しくて熱くて、心がじんじんと痺れました。
 文章の構成や文体自体で何かを表現しようとする作品もあるかと思いますが、作者が文章に寄って創り出される世界や思いを読者に伝えたいと考える場合、「読みやすい」ということは、とても強力な武器だと思います。
 ひゅうがさんの書かれた本作、内容と文章の両方に、私は楽しませ勉強させていただきました。ありがとうございました。


「15 小説「雛具師のラジオ」ムラサキ」
 本作は、雛道具協同組合会長のお話が連続ラジオ番組として放送されるという構成となっており、9節に分かれています。
 どの節もさすが当アンソロジー主宰の筆と唸らされる内容で、例え怖がりの人でも各節のさわりを読めば、怖い話だと知りつつも最後まで読み進めてしまうこと間違いありません。(そして、自分の周囲にも何かおかしなことが起きているのではないかと、こわごわと辺りを見まわすことになるでしょう)
 「9節といういささか座りの悪い数字であるのは、10節目に当たる怪談が隠されているからだ」と私は睨んでいましたが、それは、作者コメント欄に隠されていました。
 なんと、ムラサキさんは迷走した当初の作品案を排した後に、これだけの素晴らしい内容を備えた作品を、たったの一日で書き上げられたというのです。
 これを現代に現れた怪談と言わずしてなんというのでしょうか。
 本作を読んで自らの才能の限界を感じ筆を折る作家志望者が出ないことを祈ります。
 素晴らしい作品、ありがとうございました。"

09「ろくろ首の首の方」さん

"最初にあげたい作品は、

02 非活劇的挙動「これはバラードではない」朝見水葉さん

何ともなしに手に取った本だったのに、書き出しを読んでぐっと心をつかまれてしまうことがあります。私にとってこの作品がまさにそうでした。最初にぐいっと心の襟元をつかまれて、台詞と劇に引き寄せられたら、最後までその力が緩まることはありませんでした。登場する映画、文学、アイドルなど、取り上げられているカルチャーは程良いフックとなり、ストーリーと合わせて興味を途切れさせませんでした。自分が扱える文章よりもステージが上にある文章だと感じました。朝見さんの前作『吸血鬼の子守唄』を読んだときにも感じたことです。前回投票が行われていたら、間違いなく票を投じていただろうと思います。

次に【ラジオ】がお題ですので、音声を主体に構築した作品はまさにテーマに相応しいということから、

05 動画配信「ネムキリスペクトに初参加ですにゃ」konekoさん

ひらさわたゆさんが、日付が変わる直前の十分間に放送されることを想定して書き下ろしたラジオ原稿を、konekoさんが本当にラジオ番組にしたものですが、見事にきっちり十分間に収まるのが驚きでした。音楽を流すタイミング、音声の強弱、お便りを他者に伝えるための読み聞かせの技術など、ラジオ番組を制作するに当たっての細かな配慮が、ふんだんに盛り込まれているであろうことを想像し、驚愕しました。どこにも不自然さを感じませんでした。これは、ひらさわたゆさんが作った原稿も、十分間にちょうど収まる量の実践的な文字数だったということであり、しかもその内容も面白いということから、04 ラジオ原稿「23:50 バスルームから愛をこめて」も入って然るべきでしょう。言うまでもなくコラボ作品の魅力は1+1が2を超えるところにあると思うからです。

もう一作、ここに書こうと思っていた作品があったのですが、規定の三作品をあげてしまったので断念します。

今回のアンソロジー、すべて読ませていただきました。すべての作品が素晴らしいものだったことを、この文の最後に付け加えさせて下さい。ありがとうございました。"

10「磐長咲耶姫」さん

"海亀湾館長さん「ろくろ首の胴の方」
怖い話、好きじゃないのに、引き込まれてしまいました。金縛り対策のラジオが子守唄…まではいいのですが、何故怖い話を聞きたいのでしょう!?絶対に怖い夢を見てしまったり、それこそ金縛りに遭いそうではないですか!私には理解できないですが、怪奇趣味の主人公は「恐怖」という「刺激」を求めているのですね。それとも魅了されてしまって会社の先輩に言われたように「精気を吸い取られて」いたのでしょうか。金縛り、ラジオ、電波、眠る脳波に響く怪談、盛大な夢精、夢、小泉八雲、轆轤首。単語並べただけで怖そうです。何故人は怖さを求めるのか。なんて考えながら読み進めて。気づいたら爆笑しておりました。えっ?これ、怖い話じゃなかったのですか?大きなキスマークのついたパジャマと、数々の天才的なラジオネーム!!ああ、面白かった。海亀さん、ブラボーです!!


たゆねこさん「バスルームより愛をこめて」
ムラサキ様。なぜこのお二人セットアップではないのでしょうか?一心同体少女隊ですよ?
正統派!これぞラジオです!男なんてシャボン玉のコーナー、好きですねぇ。元彼から荷物が送られてきた。しかもプレゼントしたもの。だから、僕がプレゼントしたものも返せ。うっわぁ〜なんて気持ち悪いのでしょう。時々モノに罪はないから、と言って高価な贈り物だったら使う、とう人がいらっしゃいますが、気持ち悪いことこの上なし!私なら捨てますね。10分間って、結構長いのですね。大変楽しい番組でした。また、聞きたいですね。ひらさわたゆさん、konekoさん、楽しみにしております。


ムラサキさん「雛具師のラジオ」
淡々と語られる昔話は恐ろしげでありながらとても美しく、気づいたら夢中になって一気に読んでしまいました。雛人形の御道具を作るという職人。不思議だったり、不気味だったりするラジオにまつわる幾つものお話。ラジオで放送されていたと明かされ、最後には語り手・滝沢氏が急遽、しかもお祖父さんのラジオやノート、滝沢氏の草稿も消えてしまった。怖い。怖いです。でも、流石ムラサキさん!お見事でございました。怖いの苦手なんですけど、もしかしたら、怖いの好きになれるかもしれません。でも、文章で読んだからよかったのですが、この「雛具師のラジオ」、ラジオでは聴きたくありません……。"

11「spilt milk」さん

"異端と目して面白がっていた大嶋信頼の著作をスーパーの書籍コーナーで見かけ、おののいた。ここまで来たかと。

「神よ」と問いかけると、「支配者」のネットワークに繋がってしまう。
だから、「心よ」と問い、「心」に聞け。

『支配されちゃう人たち』において、そのよう(大意)に喝破した大嶋信頼に目をみはったのは2017年、まだ平成だった。

宗教は本来、人間を自由にするものだったはずだ。
しかし、「教会」が「権威」を持ち「支配」のシステム、すなわちピラミッド構造が出来た。
自由を取り戻すべくシステムを崩そうと「philosophy」が、「科学」が、立ち上がったが、いつしかどちらにも「権威」と「支配」が乗り移った。それらを崩そうとした「精神世界」の内部にも「権威」と「支配」が出来上がった。その「精神世界」を崩そうとした「スピリチュアル」も「権威」と「支配」に乗っ取られつつあり、「スピリチュアリズム」が優勢である。

そうと流れを眺めると、「支配者」を「神」と崇める人がいること、「神」を崇めずとも「支配者」を崇める人が多数いることは腑に落ちる。

「何者」をも崇めているつもりはなくとも、救われること、罰せられること、否定されること、見放されることを信じ、恐れて、自分自身のハート以外の何かに聞き従っているのなら、それは依存であり、支配のシステムの中にいる。

『魂の殺人―親は子どもに何をしたか 』『才能ある子のドラマ―真の自己を求めて』の著者であるアリス・ミラーがいう「闇教育」とは、このシステムのことである。そして残念ながら、普通「教育」と聞いて思い出されるのは、この「闇教育」である。

ジャッジメントが存在するのが、「支配」のシステムである。何かは正しく、正しくなければ間違っている。正しいものは上、正しくないものは下のピラミッド構造である。
「話せば分かる」というが、あなたは分かっている、あなたは分かっていないと、先生のように上からジャッジするのは誰か。
教え、諭し、誉め、叱ることで「分からせる」ことが出来るのは、権威または権力による上下関係がある場合のみで、要は「従わせて」いるのだ。
上意下達のこの世界は、白黒のオセロである。白は「みんな一緒に」と志向する。白でないものを許さず、相手が「分かる」まで白へと教化せんとする。愛の名のもとに、善意を持って。
「上」に従ったものは正しく等しく白であり、従わないものは全て黒と見なされる。この土俵に上げられれば、従うか、反抗するかしか出来ない。
このピラミッドを崩しかねないものは、「異端」として追われる。

翻って、ジャッジメントがない世界には色がある。何にも支配されない一人一人がそれぞれのハートに従えば「違う」のが「当たり前」と信じられるのは、そうなれる可能性があるからだ。ジャッジがなければ、「違う」ことに恐れも不安もない。

「良い子」ほど白黒の土俵から降りるのが難しいのは切ないことだ。自分を殺して、自分の外部から来る「すべき」の声に聞き従っている。

【 言葉によって世界を変えることはできない。
 暴力によって世界を変えることはできない。
 どうすればいいか。
 そのころまでに、わたしたちのつかんでいた方向は、こういうことだった。言葉ではない、暴力ではない、〈生き方の魅力性〉によって、人びとを解き放つこと、世界を解き放ってゆくのだということだった。
 けれどその具体的な方法について、わたしたちは、手さぐりし、つかみかねていた。

定本 見田宗介著作集 Ⅹ】

マザーテレサが魅力を放つのは、彼女が自分を殺して人のために行動しているからではない。彼女が自分自身のハートに従い、自分を忘れるほどに夢中でいるからだ。彼女には「すべき」と「したい」の葛藤も自己犠牲もない。

さて、時間がない。あと45分で投票〆切だ。

白一色の世界では、魅力もなければ出会いもない。みんなが白だから。
魅力が個性に宿ることは直観可能だ。一人一人が、それぞれのハートに聞き従えば、世界はカラフルになる。誰かや何かを信じ従い依存するのではなく、自分のハートを信じればよい。このことを全ての人が仏性、神性を持っている、という。
創造性も、神性がなければ成り立たない。白一色の世界では、「模倣」しか生まれない。

ここからスピリチュアリティに絡みつつネムキへ至ります。

スピリチュアルでは、波動が高い・軽い・精妙な次元と、波動が低い・重い・荒い次元がグラデーションとなって存在してるという。そして、ジャッジメントが少ないほど波動は高い・軽い・精妙となる。
高い方が良く低い方が悪いとか、低いものは高くしなければならないと思うのはジャッジメントとなり、波動が低くなる。高いのも低いのもそれぞれの好みであり、選ぶことができる、と思えば波動は高くなる。
目に見えないものが高尚だ、これもジャッジメント。「目に見えない放射能」「目に見えないから怖い」等のフレーズもジャッジメント。目に見える/見えないというジャッジメントを信じ、怖がり、依存しているので波動は低い。
スピリチュアルだから高尚だ、これもジャッジメントであり波動は低い。
こうしてスピリチュアルはジャッジメント、つまり支配のシステムに侵されているのが現状であろう。

チャネリングなるものがあるが、「目に見えないもの」=「波動の高いもの」と通じていると思うのは危険である。そこには依存心がある。

交信してるのは、天使ではなく、悪魔かもよ。
そして、天使でも悪魔でもなく、自分自身を信じたい。
よって、「01 gif「 personal radio」 y.」

生命の本質は肉体にはないと思うのなら、天使も悪魔も人と同じ「いのち」であり、慈しみたい。
よって「14 小説「冥界ラジオ」くにん」

出会いによって創作の刺激を受ける人は多いだろう。
カラフルだから出会いがある。
私も、カラフルなnoteで遊んでいたい。
「20 小説「クスクス笑ってる花とウインクしてるペニス」千本松由季」

千本松由季さんが、ネムキリスペクトを愛し、入賞を強く望んでいることを存じている。それは執着であり愛ではない、と言われるかもしれないが、全く愛でないものは愛ではないとも言われない。千本松さんのネムキへの愛は重い。きっと、波動も重い。重いのは決して悪くない。「そういう本気」は好きだ。

参考:大嶋信頼『支配されちゃう人たち』、青山ライフ出版、アリス・ミラー著『魂の殺人』『才能ある子のドラマ』共に新曜社、『定本見田宗介著作集 Ⅹ(晴風万里)』32p岩波書店

"

12「何の変哲もない枯井戸」さん

"この度も皆様お疲れ様でございます。投票の方法は変わりましたが、この打ち上げのような、後夜祭のような雰囲気、良いですねえ。
私の選です。

「これはバラードではない」朝見水葉さん
「クスクス笑ってる花とウインクしてるペニス」千本松由季さん
「えっあ、ほらオーディオブックってラジオドラマじゃん」磯貝剛さん

三作に絞るのが相変わらず難しい。もっと選びたいですが、本日の天候と体調も鑑みてこの三作と致しました。

今回の選んだ観点は春に因んで「闘志」
春風や闘志抱きて丘に立つ、とは高浜虚子です。春らしく燃えて挑む作品を三つ選びました。

朝見さんのシナリオは良いですね。朝見さんの人間性が凝縮している。この作品に多くのものを傾注している。そんな本気が見えます。前回の作品も並々ならぬものを感じましたが、朝見さんの作品は稀有な質量を感じました。

シナリオ、というのもまた良かった。シナリオは映像化が前提です。つまり実用的価値がある。

私は自分が有料記事を作ると仮定して、どんな記事なら成立するか考えていた事があります。
世の中には無料で読める面白いものが沢山あるので、面白さだけでは後手に回る気が致します。そうすると有料であるからには娯楽以上の付加価値が必要であって、それが「実用性」ではないかと。
そんなこんなで戯曲を書いて、全国の劇団に向けて売ろう!と決めたのですが実現していませんし、戯曲も書いていません。

千本松さんの今回の作品はとにかく長いので読めずに終わった方もいるかもしれないですね。
映画を観始めた時に、私は映画の冒頭部分が苦手で。まだ映画世界に馴染めていませんので、乖離を感じる。
しばらくすると世界観に慣れて面白くなってくる。
面白くなると、映画がいつまでも終わらずにいたら良いのに!なんて思います。
そういえば昔、上映時間が13時間くらいある映画が公開されて話題になりましたね。
千本松さんのこの度の作品には、作者自身の「終わらない」ことの意思を感じました。そのような作者の気持ちがメランコリックに滲みながら、浮遊している。その迷宮に山家のような、どこか妖しい執念を感じる。作者の何事かが掛けられた作品は評価されて然るべくものに思います。

磯貝さんの作品にはkonekoさん、りりかるさん、千葉さんと多くの方が関わっておられます。
全19回と回数もさることながら、こんなにも多くの方が集まる作品にはもう敵いません。
かつてことり隊長がウォーズマン理論を引用して「1200万パワーだ」と満身創痍の体躯を鼓舞していた事がありましたが(無理は禁物)、磯貝さん(100万パワー)にりりかるさんの朗読が加わって200万パワー、そこに千葉さんの音楽が入り倍の400万パワー。更にkonekoさんが動画を作成し、これをyoutubeにまでアップロードする事で3倍の、バッファローマンを上回る1200万パワーです。
一人で面白い事っていくらも出来ますが、人を集めて協業するって中々出来ません。繋がる力や意欲って素晴らしい事です。

と、今回の選は以上の3作品です。もっと多くの作品の名前を挙げたいのは山々でございますが、何分季節は乱癡気の春でございますので諸々お赦し下さい。
"

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以上が寄せられた投票コメントでした。

いかがだったでしょうか。
この熱量。猛暑です。

投票結果について

事前告知では、今回の投票から二段階方式で、この後は寄せられた選評に間接投票をして傾斜配点を決定し、最終的な集計をして優秀作品を決める。とこんな流れになりますが、皆様からの熱意を拝読して、少し気持ちが変わりました。(相変わらずのきまぐれです。)

ここに寄せられた選評はそれぞれの確固とした視座であって、その主観に優劣など付けようべくもありません。そも作品の「優秀」とは各々がその主観によって決めるものであって、決して多数の票を集めることではない。多数の票を集めるものが必ずしも「優秀」とは言わない。
と・・・良質の選評を読んで、すっかり満足してしまいました。
これ以上、選評を弄って、皆様の作品を取り沙汰するのは野暮ですよ・・・。

選評を読みながら改めて思ったことに、クリエイターにとって大切なことは、「誰」から選ばれるのか、其処にあるように思います。創作とは、別に勝ち負けがあるわけではありませんが、自分が認められたいと思う人間から認められることができればそれは勝利と呼ぶべきもので、それ以上の至福はないものに思えます。逆を言えば、どれだけ多くの支持を受けようとも、その「誰」か、から支持を得られなければ多数の支持など無意味と思うものかもしれません。
そもそもこれが公募なら、誰か一人の意見で受賞者が決まることもあるわけですからね。その一人から選ばれなければ落選です。

寄せられた選評の結果をどのように捉えるのか、それは参加した方がご自身の観点で決めるものに思います。

ということで、投票はこれでおしまい。
奇々怪々のコメント師様のご登壇によって、この度は大変活況の企画となりました。ありがとうございます。
私も本企画の中で、優秀賞など頂戴したこともございますが、この度の合同選評会的なものは優秀賞を頂いた時以上の興奮があったように思います。

この度の【ラジオ】に作品をご提出して下さった皆様、投票結果はいかがでしたか。クリエイターの皆様が、この企画を通じて、「この人からの票を得たい」と思えるような選者に出会えることを祈っております。
もし、共感できるような選評、優れた選評、あるいは御礼等があれば、本記事のコメント欄にて御賞揚下さい。コメント師が元気になります。

作品を出される方、それを楽しむ方。選評する方、される方。
それぞれの立場で、今回の企画にご参加いただきありがとうございます。
それぞれの方が力強い個性を発揮されたと思います。
これまでの当企画では作品を提出する方のみが「参加者」で、それ以外の方は外縁にいた訳ですが、匿名式投票コメント制により、選評という新たな参加方法が生まれました。お珍しい方からも選評を頂くことができて私としてはとても楽しい企画でございました。

この「眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー」企画は次回で丸三年となりますが、いまだ成長の途上です。是非、今後も当企画をよろしくお願いいたします。


次回のテーマの決定投票を募集しております。

締め切りは4/10 18:00まで。

投票はこちらから。
https://forms.gle/WLnSAvjWRqKi5CaZ9

現在は「迷路」が優勢です。
迷路か・・・。
路頭に、迷う。人生の・・・。
相変わらずこの企画は突飛なテーマに決まりますね。

#ネムキリスペクト #眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー #ラジオ
#小説