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ひらかれた優美堂再生プロジェクト

2020年の夏から1年間、東京・神田小川町の「優美堂額縁店」の再生プロジェクトに参加しています。ビルの谷間にある、築80年の木造の店舗併用住宅。この「造って売る店」の1階の床下には防空壕まであり、なんとも地霊が守ってきたような雰囲気がありました。


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看板建築に描かれた富士山は、その塗装が剥がれ落ちて痛々しく、おそらく街ゆく人は、「そう遠くないうちに解体されて、ビルが建つのだろう」と思ってみていたことでしょう。

優美堂スクショ


昨年、その優美堂の再生プロセスが中村政人さんのアートプロジェクトとして立ち上がり、市民参加のボランティアが募集されました。
「大量に眠る額を運び出し、そうじをする!」というミッション。
知人からのお誘いを受け、真夏の片づけに参加したところから、この優美堂との週末旅が始まったのでした。(私に限らず多くの仲間も…)

はじめは「表現活動としてのそうじって面白そう!」という軽い気持ちからでしたが、このような個人商店のヒューマンスケールの建物が生き残っていく(残していく)のは至難の業であることがよくわかりました。

優美堂に限らず、生活者の暮らしの延長にあったはずの古い建物は、これからの未来を生きるには、都市を営むさまざまな制度や経済とのギャップがあまりにも大きく、そのままに「今ここを生きる」ということがかなわない状況にあります。たどり着く多くの解は、その建物を活かすことを諦めざるを得ない、そんな事情なのだと思います。


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このプロジェクトで初めて「法人の街」「企業の経済成長のための街」
という表現を聞いたのですが、なるほど、個人商店だった近隣の住人は、住み続けけるにはビルを建てざるを得ず、そのビルには、テナントとして企業が入ることになります。個人の「住む人」の顔が見えにくくなり、色とりどりの看板(その多くは全国の都市でも見られる)が景色をつくっている。


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(中央の白い建物が優美堂です)

そんな視点を得るだけでも、街の見え方が違ってきたのでした。奇しくも、この1年、コロナによる飲食店や企業の不遇と、リモートワークの影響もあるのか、1階の店舗から上層階の事務所まで、あきらかに空き室や消える灯が増えています。

そのなかで、小さな規模ながら多くの市民を巻き込んで、「活動の場を生み出す」というムーブメントは、これからの不確かな未来のよりどころ。私にとっての優美堂は、手を動かす場であり、人とのつながりを楽しむ場であり、自分の思考をめぐらす場なのだな、と思ったのでした。


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しかも、集中してペンキなどをぬりぬりしていると、いろんなモヤモヤが消えるという効果あり。これは、家事の効用と同じかも。手を動かすと頭も動く、その典型ですね。

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写真↑はペンキ塗りのためのシーラー塗り。黙々集中!


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ちなみに、アーツ千代田3331の統括ディレクターでもある中村さんの話を聞いてみたいと思ったのは、2016年のこの本↑がきっかけ。優美堂プロジェクトを通して、話を聞くだけではなく、そのエネルギッシュな行動を目の当りにすることで、生き方をみることができるとは。それはそれは、圧倒的な行動力と説得力なのでした。

↓の本は、今月発刊したばかりの、中村さんの著書。これまでのプロジェクトとともに中村さんの哲学に触れられます。

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実は、現在も絶賛施工中の優美堂ですが、ギャラリー&額縁物販&カフェとしてオープンしています。WEBサイトは、大学生がイチから作りました。東京散歩の折には、ぜひ遊びに来て下さい!

https://yubido.tokyo/





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