僕の夏希先輩論

あなたは何の為に生まれてきたと思いますか?
幸せのため?成功のため?神を信じるため?愛する人を守るため?それとも生まれてきた事それ自体には意味がない?僕はですね…

 きゃわいい女の子とサマーウォーズを一緒に観るため、そのためだけに生まれてきました。

 僕のバイト先の映画館でサマーウォーズがリバイバル上映されるのです。うかうかしちゃいられねーぜ!

 そんな訳で今日、バイト先の女の子とサマーウォーズの話をしました。僕が「夏希先輩は男子の憧れを具現化したものだ。」と言うと、彼女はこう言いました。

 「夏希先輩のような女は存在しない。」


 目の前が真っ暗になりました。思えば「夏希先輩的なもの」をずっと追いかけて続けてきた人生だったように思います。僕はずっと存在しないものを追いかけていたのでしょうか?ドンキホーテのように風車の影と戦っていたのでしょうか?涙が止まりません。私は改めて「夏希先輩」について考えてみる必要性を強く感じました。

 僕らは夏希先輩の何に惹かれるのでしょうか?細かくあげればキリがないと思うし、僕にはそこまで深く分析する知能もないので、個人的に重要であると思う5つの要素をシンプルにまとめてみました。


  ①世界を広げてくれる存在である事。

  ②ワガママである事。

  ③美人である事。

 ④もしかしたら「イケる」と思わせる
 存在である事。

  ⑤自分(あなた)を好きでない事。


 ①についてはストーリーの主題にも関わるものです。内気な青年である小磯健二は、陣内家に身を置く中で、あり得ないほど貴重な経験と家族の温もりに触れます。それが健二くんを成長させる事になりました。

 そのきっかけは夏希先輩の持ち掛けた「バイト」(後に彼氏のフリをする内容であると分かる)、つまり彼女のワガママであり②、なぜ健二くんがバイトを承諾したかと言えば、彼女が憧れの存在だから、(元も子もない言い方だが)美人だから③です。

 ④については「彼女のフリをする」というバイトの内容からして、(サンボマスター風にいう所の)「妄想恋愛男子」の胸を掻きむしりますし、

「隣の布団で寝かせてもらえよ」

「そんな事ある訳ないだろっ!」

「何やってんだろ、僕。」

 というこの上なく綺麗な流れによって、いみじくも表されていると思います。

 ⑤「自分(あなた)を好きでない事」

 これは厄介な問題です。夏希先輩は「侘助が好き」であり、バイトの人選も恣意的でした(別に佐久間くんでもよかった。)
これが魅力の要素になり得るというニュアンスを説明するのはちょっと難しいです。僕らは自分を全く好きでない相手を好きで居続ける事ができるでしょうか?(だからこそ④の要素が重要なのですが)現実問題として、人は人を定言命法的に好きになれるでしょうか?
 自分になんて興味もない存在。それがその得難さ故に輝いて見えるのか、それとも僕の恋愛の歴史が「惨敗の歴史」だったから「好きな人=自分を好きでない人」という悲しい方程式が完成してしまっているのか、それは定かではありません。これについて上手く説明できるほど、僕の頭は整理されていませんのでこの辺で諦めます。

 さて、分析の甘さによる取りこぼしはあるかもしれませんが、僕が考える「夏希先輩的なもの」とは、①〜⑤の集合です。そして、このような女性が存在しないという意見に対して僕は懐疑的です。

 本当にそうか?

 僕が一番忘れてはいけないと思う事。それは「小磯健二が数学のクソ天才であり、人との関わりの中で成長を見せ、命を張る覚悟で陣内家を守るというクソ有能ムーブを見せた事。」これに尽きます。
 小磯健二はラブマシーン、ひいては侘助という強敵を倒しました。夏希先輩からほっぺにチューしてもらうに相応しいガッツを見せたのです。
 この最終的に結ばれるというハッピーエンドはお客さんに対する「サービスカット」的な意味合いも多分に含まれているとは思います。結ばれない方が④と⑤を強く表現していて芸術的だとさえ思います。そこはエンターテイメントです。
 話が外れましたが、僕が言いたいのは夏希先輩に「モヤッ」とした感情を抱いている人は、実は「小磯健二」に疑問を抱いているのではないかという事です。僕は夏希先輩が健二君を好きになるのは自然な流れだと思います。クソ有能ムーブを見せたからです。問題はそんな男、実際にいるか?という事です。もっと言えば、物語の都合のご都合主義的な部分(僕はそこも含めてサマーウォーズが好きなのだけれど)に注目して、「夏希先輩が存在しない」という結論に至っているのではないかと思うのです。

 僕は夏希先輩のような女性はいると思います。例え存在しないとしても、その幻影を追いかけて死んでいきたいです。しかし、「小磯健二の様なガッツを見せられる男」これがどれだけ存在するかについては疑わしい所があります。僕がその様な男になれるかと言われると、それはほとんど不可能に近い様に感じられます。でも努力はします。(ダメ天使)

 女性が夏希先輩に抱いている「生理的な嫌悪感」はネット上にチラホラ散見されます。僕は「夏希先輩擁護派」ですが、こういったものは紛れもない「生」の意見なので、検討の価値があると思います。夏希先輩の何が根源的に女性達をイライラさせるのか、そういう問題にも、女性の意見を取り入れながら考えていく必要があると思います。

 ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?