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組織における尻ぬぐいと中間管理職の心得とは何か?

同じ職場で20年以上勤務したり40歳代も半ばを過ぎると、いわゆる中間管理職になる方が一定数います。中間管理職は「上からも抑えられ、下からも突き上げられる」という難しい立場であると同時に、上の尻ぬぐいも下の尻ぬぐいも求められる多忙な職位です。
 そこで本noteでは、私が共感している書籍の一部から、組織における尻ぬぐいと中間管理者の心得を整理します。

冒頭で記したように、中間管理職は難しくて多忙な職位であることは周知の事実です。それ故に、上司や経営層に対して不満を抱き、部下に対しては苛立つというストレスを抱えます。この不満や苛立ちの原因の一つが、”尻ぬぐい”に対する認識にある気がします。
 尻ぬぐいとは、その名の通り”尻を拭くこと”という意味に加え、”他人の失敗などの後始末をすること”(goo国語辞典)という意味です。しかし、経営学の文脈では、将来の管理者や経営者を育てるためのトレーニングや選別の意味で用いられていることがあります。

では、中間管理職は本当に尻ぬぐいが多いのでしょうか?
 下の図は、1994年に行われた調査結果の一部です。この調査は、8つの企業の39の組織単位が対象でした。質問票は885枚配布され、回収率は93.7%でした。

高橋伸夫(1997)『日本企業の意思決定原理』を参考に筆者作成。

その結果、尻ぬぐい感は係長でピークとなる逆U字型を示し、中間管理職は尻ぬぐいが多いという肌感覚と一致しました。

尻ぬぐいには、健全な尻ぬぐいと不健全な尻ぬぐいがあります。
 健全な尻ぬぐいとは、上司が部下の失敗を尻ぬぐいするもので、不健全な尻ぬぐいとは、部下が上司の失敗の尻ぬぐいをするというものです。この健全な尻ぬぐいが、将来の管理者や経営者を育てるためのトレーニングや選別の意味を持つ尻ぬぐいなのです。

では、不健全な尻ぬぐいはどうするべきでしょうか?
 個人的な感覚では、これを完全に無くすのは極めて難しいと感じます。では、どうしても無くせない部分の尻ぬぐいとはどう向き合えば良いのか。私としては、「視座を高め、視野を広げるためのトレーニング」としてマインド・コントロールすることが良いと考えています。むしろ、そうするしか仕方がないのです。誰かが尻ぬぐいをしなければ組織は回りません。誰かが行う尻ぬぐいのおかげで、組織的行動やシステムが破綻を来さずに済んでいるのです。

次に、中間管理者としての心得について整理します。
 下の10のパターンは、”センスのない参謀のケース”として紹介されている典型的なコケるパターンです。この内容は参謀だけではなく、中間管理職にも参考になります。

①トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる
②トップのいきなりの豹変についていけず混乱する
③トップの言うことだけに乗っかり、立場の弱い少数意見を無視
④「いいね、その方向で進めてくれ」を真に受ける
⑤最初に立てた予定調和のシナリオで押し切ろうとする
⑥答えの出せない問いを設定したまま堂々巡りをする
⑦自分が見えている世界だけで物事を判断する
⑧バカと思われたくないので、相手に聞き返さない
⑨自分が抱いた違和感を封印してしまう
⑩自分のチームメンバーに精鋭ばかりを集めたつもりだったが…

杉田浩章(2020)『プロフェッショナル経営参謀』p103。

自分と上司、あるいは部下と自分の間で心理的安全性に課題がある状況の場合、①〜④と⑨の状況になりやすいと感じます。これらを回避するには、指示や状況を自分の言葉で理解することと、こまめに確認することが重要と感じます。②の”トップ(あるいは上司)のいきなりの豹変”に対しては、「言った言わない」の水掛論を持ち込みたくなりますが、すでにそれ自体は問題ではありません。トップ(あるいは上司)の思考がより良いものに変化した結果なので、改めて指示や状況を自分の言葉で理解し、こまめに確認することが大切と個人的には感じます。
 私個人の場合、特に⑤に注意が必要と感じています。私は最初から課題や論点を決めつけ、議論の中で新たな論点が見つかっても最初のシナリオにこだわり、できるだけ早く意思決定に持ち込みたいと考える節があります。予定外の状況の中で新たに見えてきた論点にスポットを当てず、それがのちに重要な論点となって結果的にコケた経験も少なくありません。
 日頃から、周囲とあまりコミュニケーションを取らない状況では、⑦となっていることにすら気づかないことがあります。すると、どれだけ用意周到に準備したとしても、あっという間に振り出しに戻ってしまいます。
 また、会議などの閉会後に周囲の人を捕まえてウダウダいう人がいますが、大抵は⑧の特性を持った人と感じます。この場合はタチが悪く、人の時間を予定外に奪います。このような人は、問題を解決する場で解決させずに作業に取りかかるので、結果として何をやってもコケてしまいます。

中間管理職は、突発的な仕事が発生して自分のペースで仕事ができないことが多くなります。さらに、他人のミスや情報不足、指示命令や方針の変更などにより、仕事が二度手間となるなど多忙感がとても強くなります。そのような状態の中での尻ぬぐいは、間違いなく負の感情しか生みません。
 部下の尻ぬぐいは部下のトレーニングや育成のため、上司の尻拭いは自身の視座を高めて視野を広げるトレーニングのため。そのことを再確認することで、組織に対する自身の価値は高められるのではないかと感じます。
 10の典型的なコケるパターンを回避する鍵は、部下や上司、他部門同僚との上下水平的なコミュニケーションです。もちろん、頭ではわかっていても上手くいかないことも少なくありません。ただし、頭でわかっていないと上手くいくことも上手くいきません。
 本noteが、私も含めた中間管理職のお役になれたら幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考
・高橋伸夫(1997)『日本企業の意思決定原理』
・杉田浩章(2020)『プロフェッショナル経営参謀』

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