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個人防護具と就業制限②

筆者は2020年4月20日に「個人防護具と就業制限」というタイトルで、新型コロナウイルス感染症患者に接触した医療従事者のPPE(personal protective equipment:個人防護具)と就業制限についての関係を整理し、本noteに公開した。その際に参考にした 一般社団法人 日本環境感染学会の「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド ver.2.1」が昨日(2020年5月7日)、 ver3 に改定されたため、本稿ではその改定のポイントを整理し、リハ機能を持続させるためのBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)について再考する。

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上の図は、暴露のリスク評価とその対応について整理した図である。この中で、ver.2.1 からver.3 で変更された点は以下の3点である。

1つ目は、接触時間の目安となる長時間の基準が3分以上から15分以上に延長された点である。2つ目は、濃厚接触と判断される距離が2mから1mに短縮された点である。3つ目は、医療従事者がマスク・目の保護をしていても、体位変換やリハなどの広範囲の身体接触があった場合は、無症状の医療従事者に対する就業制限が、これまで「なし」であったものが「14日間」と明記された点である。

リハ機能を持続させるためのBCPを検討する上で、無症状の医療従事者に対する就業制限を無くすための施策が極めて重要になる。COVID-19陽性患者への介入に限らず、2週間の行動歴や接触歴を把握できない外来患者等に対してリハを提供する場合、ver.2.1 では、患者がマスクを着用して医療従事者がマスクと目の保護を行うといったPPEで無症状の医療従事者に対する就業制限を無くす可能性を確保することができた。しかし、ver.3 では、医療従事者はこれらのPPEに加えて手袋とガウンまで求められるため、PPEの不足している現状ではその実現可能性は低い。

したがって、リハ機能を持続させるためのBCPは、これまでの「PPEによる対策」から、「ゾーニングや病棟担当制、グループ制等による交差感染を抑制するための対策」にシフトすることが求められる。

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一方、感染症に対するBCPでは、職員の就業制限等により業務縮小を余儀なくされる期間が数ヶ月にも及ぶとされている。したがって部門マネジャーには、「職員の就業制限をいかにコントロールするか」、そして「継続させるべき優先度の高い業務は何か」についてを、適宜状況の変化に応じて再考・修正することが求められているのだろうと思う。

このような世界規模の感染拡大に対してリハ部門の意思決定に携わったマネジャーは、過去数十年振り返っても筆者の周囲には存在しない。前例がないからこそ、正確な情報を基にした論理的な意思決定の足跡を残していきたいと思う。

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