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時事無斎雑話(13) エレバン放送第37日本支局から、新型コロナワクチン接種の体験レポートです(後編)

※前編はこちら

 CMの間に自民党総裁選の結果が入ってきました。党の重鎮たちの支持を得たキシダ候補が下馬評を覆して新総裁に選ばれたとのことです。
 個人的に、結果についての感想は特にありません。ただ、総裁選結果を伝えるニュース番組でキャスターが「キシダ新総裁はお好み焼きが好きで~」「ネクタイの色は~」のような事をさも重要な話のように得意げに話していたのには心底腹が立ちました。他に報じることはないのでしょうか。あるいは、有権者をそういうことにしか関心のないバカばかりだと考えているのでしょうか。
 いや、実際、その通りなのかもしれません。その後の新聞やネットニュースであのキャスターが特に批判を受けていた様子もありませんし、首相就任後の内閣支持率も一気に20%ほど上昇したようです。考えてみれば、前任のスガ首相が「首相はパンケーキが好き」「親しみが持てる」と大騒ぎされて有権者から熱烈に支持されていたのもたった1年前のことです。

21世紀日本版「朝三暮四」の寓話。
昔、日本という猿の国にパンケーキの好きなスガ総理大臣がいて、国民である猿たちに言いました。「国民(猿たち)に配るドングリは、朝に三個、夕方に四個とします。」
テレビとネットの前の猿たち(有権者)は口々に不平を述べ立てました。
スガ首相が退任し、お好み焼きの好きなキシダ新総理大臣が就任して猿たちに言いました。「国民(猿たち)に配るドングリは、朝に三個、夕方に四個とします。」
テレビとネットの前の猿たち(有権者)はひれ伏して喜びました。
問:各国の国民は、何を基準に為政者への支持・不支持を判断しますか?
答:アメリカ人は、その人物の政策が自分のビジネスに有利かどうかで判断します。
ドイツ人は、その人物の政治理念に共感できるかどうかで判断します。
イギリス人は、その人物に品性と教養があるかどうかで判断します。
日本人は、その人物の好きな食べ物とネクタイの色で判断します。

 当然、新型コロナ対策についても進展は見込めないでしょう。この記事を書いている2021年10月中旬現在、一時的に感染者数は減少しているものの、緊急事態宣言が解除されて人の流れが再び活発化し、さらに季節が冬に向かう中で再び感染が拡大する可能性があります。本来であれば、感染者数が減少している間に専門家の意見が実際の対策にもっと反映されるような意思決定機関を作り、さらに無料・制限なしで受けられるPCR検査の拡充や医療関係者への負担を減らすような治療体制の再編を行って次の感染拡大に備えなければならないはずなのですが、それについての具体的な話はなく、出てくる話といえば「GoTo事業を再開する」「今度は札幌へのオリンピック招致活動を始める」「国民が医療従事者に感謝するようにする」のようなものばかりです。

問:「過去二年間、政府は新型コロナ対策に熱心に取り組んできた」というマスコミの報道は事実でしょうか。
答:言葉の順序が少し違います。政府は過去二年間「新型コロナ対策に取り組んでいる」とマスコミに報道させることに熱心だったのです。

 というより、そもそも施策に専門家の意見を謙虚に取り入れるつもりなどないのでしょう。スガ前首相時代に政府と対立する意見を述べた専門家が日本学術会議への任命を拒否された問題で、今後も任命拒否を撤回するつもりはないと明言しているあたり、キシダ新首相も前任者たち同様、専門家を政治家に隷属する下僕ぐらいにしか考えていないことが透けて見えます。そして残念ながら、そういう人物を「穏やかで謙虚な人柄」ともてはやしてしまうのが日本のマスコミや有権者なのです。

問:コロナ対策に専門家の意見を反映させる方法について、日本と他の先進国の違いを教えて下さい。
答:他の先進国では専門家の述べた意見に合わせて政治家がコロナ対策を立てます。日本では政治家の立てたコロナ対策に合わせて専門家が意見を述べます。
問:日本政府のコロナ対策の最大の問題点はどこでしょうか。
答:予算や任命権で専門家を脅して服従させればコロナウイルスも服従させることができると思い込んでいる点です。

 政府が有効な対策を取ることが期待できない以上、結局、個人が自力で自分の身を守るしかありません。リスクをきちんと認識した上でワクチンを打ち、マスクを着け、一方でワクチンやマスクの効果を過信せず、ネット上の怪しげな「コロナには○○が有効」の情報や陰謀論に踊らされず、緊急事態宣言の有無にかかわらず感染リスクを上げるような行動は控えることです。
 というわけで、前置きが思いきり長くなりましたが、話は前回の続きとなります。1回目のワクチン接種から3週間以上が経ち、2回目のワクチン接種を受けましたのでその体験レポートです。

※前日以前
 前編で、送られてきた接種券を紛失しないか心配だと書きましたが、本当にやらかしてしまいました。接種直前に所用で道内の某所を訪れた際、接種券と同時に提出する問診票を書いておこうと机の上に出して、そのまま問診票と一緒に置き忘れてきてしまったものです。接種を受ける前日、書類をチェックしているときにその事に気付いて血の気が引きました。取りに戻ろうにも数百キロむこうです。とても予約時間までに取ってくることはできません。
 迷惑系ユーチューバーのように話題作りのためわざとやったのではと疑われそうですが、そんなことはなく単純に忘れただけです。自慢には全くなりませんが。

※接種(2回目)当日
 予約は午後となっているものの、まずは受付開始時間が始まると同時に病院に電話し、氏名と接種券の番号(こちらは手元に控えがあったので助かりました)を伝えてどうするかを相談します(再発行されるのか、先に接種だけして券は後から回収して提出か、接種自体を延期するか)。1回目の接種記録は残っていたため、その情報をもとに再発行が可能なので予定通り接種するようにとのことでした。
 前回同様、少し早めに会場に行き、受付で接種券の再発行をお願いしていることを伝えました。再発行された接種券を受け取り、併せて問診票も記入し直します。質問事項の中に「過去に予防接種で副反応が起きた事がありましたか」という項目がありました。1回目の接種で弱いながら発熱と筋肉痛の副反応が出たので、その旨を記述します。副反応が出たことを理由に2回目の接種が見合わせとなったりはしませんでしたので、ここは正直に書くようにしましょう。なくした整理券は後から出てきた場合廃棄して下さいとのことでした(不正に3回目の接種を受けようとするのを防止するためのようです)。一連の手続きで時間を食い、順番が行列の最後になって少し待つことになります。やはり接種券はなくさないに越したことはありません。
 接種券をなくしたお仕置きでもないでしょうが、2回目の接種は1回目より多少痛く感じました。もっとも、それも大したものではなかったので、あまり怯える必要もないと思います。接種後、前回と同じ

・当日の入浴は可。ただし長湯はしないこと。接種した場所をこすらないこと。
・水分を多めに取ること。飲酒は控える。
・激しい運動はしないこと。

という注意を受けます。
 そのあと、こちらも前回同様、会場で最低15分待機してショック症状が出ないか確認するよう指示されました。1回目の接種で副反応が出たため、少し長めに30分ほど待機してから家に戻ります。
 副反応は今回も出ました。まず、1回目は接種後1時間弱で始まった腕の痛みが、2回目は3時間ほどして始まります。痛さの感じも少し違い、1回目は上腕部全体の鈍痛だったのに対し、2回目は左肩の接種場所を中心としたやや鋭い痛みです。それがだんだん広がり、最終的に肘の上から首の左側の筋のあたりまでが引きつったように痛み始めます。
 今回も、会場での指示の通り酒は飲まず風呂も早めに切り上げ、早寝して体力の回復に努めます。

※2日目
 前回と同じく週末に接種をしたのでこの日は休みです。
 朝6時過ぎに目を覚まし、体温を測ったところ平熱でした。腕の痛みは前日よりさらに強くなっていましたが、それ以外に特に具合も悪くなく、少し拍子抜けします。1回目に副反応が出た分2回目は軽く済むものなのか、なら午ごろに本屋にでも行くかなどと考えながら、様子見がてら家の用事を片付けていきます。
 しかし、そう簡単には行きませんでした。起きて2~3時間が経過した頃から全身の倦怠感と、前回同様筋肉痛が始まります。最初は平熱だった体温も測るたびに上がっていきます。正午ごろにとうとう限界を感じ、干していた布団を取り込んで寝込むことにしました。
 熱は最終的に37.4度まで上がりました。熱以上に辛かったのが筋肉痛で、全身が痛んで布団から起き上がるのさえ苦労する状態です。前回出なかった関節の痛み(発症率24%)も出ました。
 全体として、1回目より発症は遅く、その後じわじわ悪化して最終的に1回目より重い症状が長く続く傾向が見られました。事前に聞いていた「副反応は2回目の方が重い」というのは、少なくとも私に関してはその通りだったようです。

※3日目
 体温は朝起きた段階で平熱に戻っていました。筋肉痛はまだ残っていたものの、前日よりはだいぶ軽くなっています。ただ、左腕の痛みは収まらず、腕を持ち上げるのにも苦労する状態です。結局、腕の痛みは四、五日続いて、職場での力仕事にも多少影響が出ます。さらにそのあとも押すと痛い状態が数日続きました。

 こうして2回目の接種も完了しました。私の周囲の人たちも接種を受ける人たちが増えてきましたが、やはり副反応は出ているようですので、基本的に起きることを前提に受けるべきなのでしょう。
 副反応も起き、効き目も絶対ではないとはいえ、やはりワクチンがコロナ対策として有効であることには変わりありません。(ワクチン陰謀論のようなものは論外として)ある程度のリスクは避けられませんが、それでもやはり、自分や他人を感染から守る意味でも接種を受けておくことが望ましいでしょう。特に経営者や管理職の皆さんは、雇用者や部下が接種を受けることを妨害したり副反応での体調不良を責めたりせず(精神論では感染症や副反応は防げませんし、ウイルスはあなたの職場の都合に合わせて活動するわけでもありません)、きちんと接種が受けられるような環境作りに取り組んで下さい。
 なお、ワクチンは陰謀だと主張する皆さんが言うような、腕に磁石がくっついたり5G携帯の電波による指示が聞こえてきたりという現象は今回も起きませんでした。周囲の人たちで、接種後に性格や言動がおかしくなった人も特に見当たりません。こうした陰謀論については、進化論や地球温暖化の否定、歴史改竄主義などとの関係も含めて、いずれどこかで詳しく書きたいと思います。
 以上、エレバン放送第37日本支局からお送りしました。

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